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世界の暁  作者: ゆきかぜ
第3章
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海軍兵学校

ドイツ海軍の栄光を背負った軽巡ライプツィヒは長い航海を終えようとしていた。

1931年 9月2日 大日本帝国 横須賀軍港


早朝から軍港は慌ただしかった。まだ見ぬドイツからの訪問者に皆、胸が高まっているようだった。午前7時頃、軽巡ライプツィヒは浦賀水道でエスコートの駆逐艦 吹雪と合流し横須賀軍港へと舵を切った。甲板では互いの乗組員が手を振っていた。


「長い道のりだった。」


レーダーは所々塗装が禿げた船体を見ながらこれまでの航海を思い返していた。


「流石に低気圧は堪えましたな。ハハッ。」


艦長は苦笑いをしながら答えた。インド洋で遭った低気圧は遠洋航海をしたことが無いライプツィヒにとって最大の試練だった。慣れない自然現象に艦内では混乱も見受けられ、当に前途多難な航海であった。


「そういえば、イギリス軍の奴らもしつこかったですね。」


「あぁ、そうだったな。」


ライプツィヒが大西洋を航行した時からイギリス軍は何らかな形で監視をしていた。駆逐艦に遭遇したり潜望鏡から覗かれていたり、はたまた補給している所で水兵と小競り合いになったり数えればきりがない。それどころか高知県の沖合でイギリス海軍の重巡と出くわした事もあった。


「横須賀が見えた!」


航海長が叫んだ。


「あれが戦艦 長門…」


レーダーはまず、長門に視線を向けた。世界のビッグ7の一隻である長門は8門の40㎝砲が積んである。3万tを超す船体は当に海の王者に相応しい物だった。


「いずれ我がドイツもあの様な艦を…」


レーダーは胸にそう誓った。長門の乗組員が整列し敬礼しているのが見えたので敬礼を返した。ライプツィヒは重巡 妙高と那智の隣に投錨した。その日はドイツ海軍と日本海軍の交流会が行われた。




1931年 9月3日 東京駅


ドイツ海軍将校達は江田島で指導を受ける為、呉まで鉄道省が用意した臨時列車に乗ることになった。EF52型電気機関車を先頭に荷物車が2両、食堂車と二等車が1両づつ、三等車が5両で編成されていた。この臨時列車には広島まで向かう大日本帝国陸軍の歩兵隊も乗ることになっていた。ドイツ海軍将校達は二等車に案内された。見送りに来ていたレーダーは一人一人にねぎらいの言葉をかけた。彼は列車が見えなくなるまで手を振り続けた。



同年同日 江田島海軍兵学校


「訓練生!整列ー!」


校庭に教官の声が響く。海軍兵学校長の松下元は窓越しに整列状況を確認していた。


「かなり上達したな。結構結構。」


「校長、まもなくドイツ海軍研修将校団が到着します。」


「うむ、出迎えに行くか。」


校門には研修将校団を乗せたバスから下車した将校達が直立不動で整列していた。


「ドイツ海軍研修将校団団長オットー・チリアクス大佐以下24名、ただいま到着致しました‼︎」


「遠路はるばるご苦労。校長の松下だ。ここでの研修が貴国海軍の発展に繋がるよう各々尽力してほしい。」


「はっ‼︎」


彼らの江田島海軍兵学校での2年が始まった。













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