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和製ファンタジーにおける”魔法”の設定について  作者: 囘囘靑
第九講:印

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9.1.印の定義と特徴

 完全に忘れ去っていた「印」の問題について、今講では取り扱って見たいと思います(“しるし”ではなくて“イン”です)。

 筆者は本場西洋の呪術的伝統について無知に等しいのですが、おそらく印のように「手や指で象形をつくり、呪術的効用をあげる」という発想は、西洋由来というよりも東洋由来の発想であるような気がします。


 実際、著名な和製ファンタジーでも、こうした印を駆使する魔術師の存在は極少(あるいは皆無)だと考えられます。逆に東洋的産物の範疇に含まれるであろう超常技能集団「忍者」は、手指を駆使して印を結ぶことにより、水遁の術や影分身などを利用しているように思われます。


 ファンタジー世界の世界観は書き手に委ねられる事項ですが、まずは「印」という概念が実に東洋的な産物であるということは、理解しておいた方がよいでしょう。


 次に、具体的な「印」の定義から、考えられる特徴について踏み込んでみましょう。

 まずは「印」の定義について。多くの読者にとって「印」という言葉から連想される魔術的行為は、おそらく「手や指などで特殊な形状を作ることにより、何らかの魔術的効力を発現させる行為」であると考えられます。この定義がもっとも妥当な定義といってしまっても問題は無いとさえ筆者は考えます。


 さて、具体的な「印」の特徴を考えてみましょう。まずもっとも面白い特徴としては、「行為が原始的である」ということがあげられると思います。

 これまでに扱った「呪文」や「文様」といったアウトプットは、「言語」や「文字」といった比較的高度な主体が存在しています。ですがこの「印」に関していえば、「言語」や「文字」といった主体なしで魔術の行使が可能になるのです。


 第二の特徴としては、「魔術の行使に即時性がある上、魔術の発現に時間的制約がかかる」といったことが上げられます。「呪文」にも同じ特徴がありますが、「印」は結んですぐ効力が発揮されます。加えて「印」を結ぶのには一定の時間が必要になります。「あらかじめ印を結んでおき、しかるべきときにそれを利用する」ということは不可能です。これは「印」と「文様」とを分ける決定的な違いです。


 更に第三の特徴として、「印は複雑な形態を取れない」といった特徴があります。これは問題点といってしまった方がよいかもしれません。「呪文」の場合は主体が高度であるために、高度な魔術を発動させる媒介として機能させられますが、「印」は人間の手指の構造に制約されるため、使える魔術の幅は狭まるでしょう。忍者が水遁や影分身などは使えても、殿様をカエルに変化させるような「西洋的」呪術を使わなかったのはそうした事情もあるのではないでしょうか。


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