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和製ファンタジーにおける”魔法”の設定について  作者: 囘囘靑
第六講:魔術的呪具のあれこれ

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6.3.仮面

 仮面を題材にしたファンタジーは、古今東西に溢れています。正義のヒーローが自らの正体を隠すために仮面を装着する場合もあれば、仮面そのものが有する魔力を駆使して戦う話などもあります。


 今回は、こうした「仮面」について文様的な特徴を列挙してゆきたいと思います。とはいえ、「仮面」だけにこだわって考察する必要もありません。本来的な意味として、「仮面などをふくめた“装着物”」としておきましょう。ですから腕輪でも、指輪でも、足かせでも、本来の用途としては目的を達成したことと致します。


 さて、こうした「仮面」の最大の特徴としては、「人間の身体に装着して魔法を発動する」ということがあげられます。この特徴だけに注目してみると、「仮面」は「刺青術」と大差が無いように思われます。しかしながら「刺青」はいったん施すと解除するのは困難であるのに対し、「仮面」はあくまで装着物ですから、着脱はそれほど難しくありません。「仮面」はその分だけ使い勝手がよいアイテムになるはずですが、万が一破壊されてしまった場合対処の施しようがありません(刺青の場合は破壊=瀕死ですから、却って問題になりづらいと思います)。こうした観点から見れば、「刺青術」と「仮面」は相互補完的な関係にあるともとることができるでしょう。


 それでは、「仮面」における“質”と“媒”はどのような特徴を帯びてくるのでしょうか。――じつはここでも、「刺青術」と「仮面」との対比をすることが有効になってきます。


 まずは“質”について。「壺」そして「杖(狭義)」に共通することですが、「仮面」における“質”は「文様を描いたときに利用した素材」とすることができます。また「杖」の場合と同じく“彫刻する”という技法を使いこなせば、“質”を削除することもできるのです。“質”としてインクを使わなくてはならなかった「刺青」に比べ、質なしでも文様が施せる「仮面」の存在は大きな魅力となりえます。


 次に“媒”についてです。しかしこの問題に関しては、やや込み入った体裁をとる必要性が出現します。


 「仮面」は、装着する人間に魔法の効能が出現しないと意味がありません(「火を吹くお面」などがあってもよいでしょうが、そうなると「仮面」が仮面の体裁をとるだけのメリットはあまり無いような気がします)。したがって、文様は仮面の内側に描かれると考えてほぼ間違いないでしょう。


 そうなると、「文様」と「文様の描かれた仮面」と「その仮面を装着する人の皮膚」の三種類が考察対象として出現します。このうち「文様」は“質”と見なしても問題はありません。となると、「文様の描かれた仮面」と「その仮面を装着する人の皮膚」、この両者が“媒”として君臨するはずです。


 では「文様の描かれた仮面」を第一の“媒”、「その仮面を装着する人の皮膚」を第二の“媒”として定義する必要は本当にあるでしょうか。


 これまでの議論の流れに従って言えば、第二の“媒”にあたる「その仮面を装着する人の皮膚」は考慮の対象から除外することができます。


 それはなぜか。第五講の「刺青術」に関わることです。刺青による魔法の効果をモデル化する際、人間の皮膚を変数としては除外しました。これは皮膚の質には極端な個人差が生じえないため、存在しないもの(ごく微小なもの)として取り扱うことができるからです。


 これとおなじ理屈が、「仮面」においても当てはまるはずです。したがって「仮面」における“質”は「文様を描いたときに利用した素材」(もしくは無し)、“媒”は「文様の描かれた仮面(仮面の素材)」とすることが可能です。


 くわえて、「仮面」は「杖」と同じように、あらゆる素材で加工することが可能です。鋳型を用いた量産なども当然現実味を帯びてきます。そうなると、これまで扱ってきた核種々具の中では、最も使い勝手のよい呪具の一つと見なすことができるでしょう。


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