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和製ファンタジーにおける”魔法”の設定について  作者: 囘囘靑
第三講:呪文(文様)原論、および封印

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3.3.3.封印を無力化する手法:「二重封印」について

 「封印」と「結界」が同質のものである、ということは前回にも確認したとおりです。ここでは、封印を無力化するための手法として、「二重封印」というものについてお話したいと思います。


 注意してほしいのは、これから話題に上がる「二重封印」は、封印を“無力化する”ことに焦点が当たっているということです。したがって封印を“解除する”「質媒検索」とは、若干毛色の違う手法となります。


 では「二重封印」とは何か? ――今回も例を用いて話をすることにしましょう。


 魔法少女のスー氏はある日、長らく探し続けていた書物――『斜方六面体結晶質の本草学的論考』(図版入り大型二つ折り本)――をようやく発見することができました。


 しかしながらその本の表紙には、なにやら赤いチョークで魔法陣が描かれています。スー氏が調べてみたところ、どうやらその魔法陣は「魔法陣を書いた人にのみ文字が読めるようにする」という封印が施されているようなのでした。


「あら……ずいぶん気が利いていることね?」


 ですが、そこは魔法学校第二学年で最優秀の成績をとっているスー氏。この程度の魔法陣ではひるみません。おもむろに青いチョークを取り出すと、スー氏は赤い魔法陣の上に別の魔法陣を書き重ね、その場を離れるのでした。


 さて、そんなやり取りがあったとは知らずに、のこのことアリス氏が現れました。奇書を独占するために、赤いチョークで魔法陣を書きつけた張本人です。


「さぁ、読むわよー!」


 と、アリス氏は表紙をめくりました。






 その瞬間……何が起きたか?!






 眩い光線が図書館内を埋め尽くし、アリス氏の鼓膜を震わせ、鋭い衝撃波が津波のごとくアリス氏に押し寄せます。爆音のあぎとに打ち砕かれた小柄なアリス氏は、図書館の外壁をぶち破って吹き飛ぶと、離れた場所にあった温室に頭から衝突、校長先生が手におえないほど成長させてしまったウツボカズラの口の中へすっぽりとキャッチされてしまいます。


「ちょっと、なんなのよっ?!」


 そこは打たれづよいアリス氏ですが、憤懣やるかたなく食虫植物のお世話になるのでした。


 悪ふざけはこのぐらいにしましょう。この一連の例の中でスー氏が行ったことこそ、今回の中心テーマである「二重封印」そのものなのです。もう一度時系列に沿って話を整理しますと、


 ①アリス氏が本を発見して、赤い魔法陣を描く

 ②スー氏が本を発見して、青い魔法陣を描く


 ということになります。初めにアリス氏が施した封印に、更にスー氏が封印を施すのです。無論、スー氏は赤い魔法陣の封印を解除したわけではないので、本を読むことはできません。しかしながら、赤い魔法陣を描いた張本人であるアリス氏も、スー氏の描いた新しい魔法陣のせいで本を読むことができないのです。さながら宝の地図に記された目印を、スー氏が移動させたようなものです。


 このように、ある人物が施した封印に別の人物が新たな封印をかけることで、初めに封印を施した人物の目的をくじくことが可能になるのです。


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