2.魔術の職能性と、「魔術ギルド」の可能性、そして魔術師
まずは魔術について考えてみましょう。
注目してほしいのはもちろん、「魔術」の“術”という文字です。これは技術の“術”と同じ、すなわちArtの問題になります。「魔法」、「魔道」と比較して、「魔術」の言葉に特有なのは、
「超自然的なパワーは、あくまで技術の問題である」
とする姿勢が顕著なことです。
こういう言葉の成り立ちからして、私たちは「魔術(および魔術師)」について、ある一定の推測を立てることができます。
その推測とはすなわち、まず魔術師にとって最も大切なのは、超自然的なパワーを扱いこなすだけの技能“のみ”である、ということ。したがって魔術師は当人のスキルのみが評価の対象になり、魔術師の性格のよしあしなどは問題にならないのではないか、ということです。
そうである以上、和製ファンタジーの書き手である大多数の人間(おそらく日本人)にとって、「魔術学校」というものはなじみの薄いものなのではないでしょうか。「魔術」が「超自然的なパワーを扱う技能」である以上、それは学問のように「教えてもらう」、「習う」ものではなく、むしろ職人の技術のように「感覚的に(あるいは直感的に)覚える」ものになってしまうのではないでしょうか。
では、「魔術」を習うのに相応しい環境とは、いったいどのようなものでしょうか。「魔術」が技能の一環であるとするならば、それを学ぶのに最も相応しい場所はやはり「工房」、もしくは「ギルド(職能集団)」なのではないかと考えます。魔術師見習いはそこで自分の親方魔術師に徒弟奉公をすることにより、一人前になってゆく――このような制度が考えられます。