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和製ファンタジーにおける”魔法”の設定について  作者: 囘囘靑
第二講:呪文(口唱)

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2.1.1.魔法専用の口唱呪文を設定すべき、三つの理由

 これまでの項目は、皆やっかいな問題ではありましたが、しかしほぼすべて和製ファンタジーの「背景」設定に近いものばかりでした。

 第三講からは、具体的な「魔法体系」について決めてゆきたいと考えています。

 その前に、これからの議論へ向けて大前提を立てましょう。


 一つ目:魔力は、個人が所有している。

 二つ目:和製ファンタジー世界では、魔法が使える人間は一部の人たちだけである。

 三つ目:魔力の量には個人差がある。けた外れな魔力の持ち主がいる一方、スプーンをかろうじて曲げられる程度の魔力しか持たない人間もいる。


 以上三つを大前提とします。これらは、おそらく和製ファンタジーで最もありふれた暗黙の了解であるはずです。加えて、詳細な設定を練る上でも最も使い勝手がよいでしょう。


 魔法は、何もしなくても利用できるものではありません。大概の魔法使いは、魔法を発動するために、アウトプットを行います。たとえば呪文を唱えたり、たとえばタクトを振るったり、たとえば魔法陣を描きます。

 こうしたアウトプットについて、まずは考えてみましょう。


 まず、魔法使いの代表的なアウトプットとして、「呪文」が考えられます。

 ですが、呪文そのものの定義は案外あいまいです。魔法使いたちは、呪文を「唱える」のでしょうか、「書く」のでしょうか?

 どちらでも設定としては可能です。しかし、実は書いて使う呪文には、様々な問題があります(「第三講:文様」でくわしく設定します)。


 したがって、まずは簡単な「唱えて使う呪文(口唱呪文)」のみを考えてみましょう。

 呪文は別に、どんな形式でも構いません。書き手が考えた言葉を「呪文」として、キャラクターに声に出してもらえばよいのです。

 問題は「呪文」の様式です。

 たとえば、魔法使いが時間停止の魔法を唱えるとします。この際、


「マ・ハリク、マ・ハリタ!(てきとう)」


 と唱えてもよいですし、


「時の神クロノスよ、

 悠久の叡知、

 無窮の汀、

 須臾の砂を上弦にかかげ、その掌に収めたまえ!(てきとう)」


 と唱えてもよいでしょう。

 しかしこのとき、「魔法に特有の言葉を使うのか」、あるいは「実際の言葉を利用するのか」ということが、一つの問題として立ちはだかります。

 これもまた書き手の好みによってしまうのですが、個人的には「魔法に特有の言葉を使う」ほうが、負担は少ないと考えます。


 第一の理由として、「魔法に特有の言葉を使う」ほうが、魔法学校の存在意義が生み出しやすいからです。普通の言葉ではないからこそ、魔法学校のカリキュラムを通して「学ぶ」必要が出てくるはずです。普通の言葉を利用すると、どうしても魔法学校の存在意義が薄れてしまいます。

 第二の理由として、「魔法に特有の言葉を使う」ほうが、書き手は気楽であることがあげられます。

 「普通の言葉を利用する」とはいえ、


「てふてふ

 ひらひら

 おそらへ

 とんだ(てきとう)」


 みたいな牧歌的呪文でホワイトハウスが吹っ飛んでしまっては困ります。


「気高き軍神常贏じょういんのイスラ!

 れいたる檄阿げきあ

 さやかなる晨泉しんせん

 よむなるくにへ死のあぎとを振るいたまえ!(てきとう)」


 というような、いかにもそれらしい言葉を絶えず作り出さなくてはなりません。

 日本語に自信のある書き手ならば、格好の書きどころです。しかしそうでない場合は無駄に疲れる要因になるでしょう。それならば文字の羅列でごまかせる「魔法に特有の言葉」のほうが重宝するわけです。特に主人公が魔法使いでなく、仲間に魔法使いがいる場合、


「――魔法使いが聞き慣れない言葉を口走る。そのとたん、竜巻が沸き上がった」


 などというごまかしも可能なのです。

 そして第三の理由として、魔法言語を別言語として設定した方が、神や悪魔など、超自然的な存在を作中に介入させやすいということがあげられます。

 「神様の数だけ魔法言語が存在する」などということは馬鹿げていますが、極論でいえばそれも可能です。

 「黒魔術は邪神の言葉で書かれた」などという設定も簡単に作り出せます。


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