これからの始まり
私は今、元の会社に復帰して頑張っている。
復帰する旨を伝えると社長は「もういいのかい?」と尋ねてきた。
「えぇ、家に居ても退屈なだけですから。 むしろ何かしていたいぐらいですし。」
そう言うと「そう…。」とまだ心配そうにしていた。
まぁ当たり前だと思う。
けれど実際何かしていたいのだ。
気持ちを紛らわしていたい。
会社に戻った私はまず迷惑をかけてしまったことをみんなに謝った。
すると同期の一人が「今度飯の一つでも奢れよ! つか今から行こう、そうしよう!」などとのたまってきた。
気を使ってくれていることが判るから。
それが嬉しかった。
「おう、奢ってやるよ!」
そう言うと仕事が優先だ、と社長に突っ込まれみんなで笑う。
本当、大きな貸しを作ってしまったと思う。
私が奢る店でもきっと彼らはすごく騒いでくれるだろう。 私のために。
「よし、じゃあ今度の日曜日にしよう! みんなで集まってさ!」
周りからお前は休日にやることがないのか~! など囃し立てる声。
「た、たまたま空いてるんスよ! 関口さんは空いてないんスか?」
「いや、空いている!」
なんだお前も暇人か!じゃあお前はどうなんだ!もちろん空いてるぞ!同じじゃねぇか!悪いか!アハハハハハ!!
私は自分が恵まれているということを再確認できた。
しかしーー
「すみません、日曜日は私が開けられません。 社長には事前に言っていますが…。」
「ん? どっか行くんか?」
「あぁ、美与に会いに行く日だ。」
それを聞いた同期は一瞬驚いた表情をした後目を細めてこう言った。
「そうか、なら仕方ないな。 今度ちゃんと枠空けとけよ?」
「あぁ」
あの日、医者は私にこう告げた。
「奥さんは実際には眠っているだけです。 死んではいません。 初めに申しました通り点滴など適切な処置を行っていればそれによっては死ぬことはないでしょう。 しかし、過去の症例では目覚めた方は誰一人いません。 延命処置も無料ではございませんし、いつ目覚めるか…どころか目覚めるかどうかも判らない患者にそれを行うには一個人としては負担が大きすぎるでしょう。」
「それじゃ、やっぱり……」
「そこで、です」
「…え?」
「こういうのはいかがでしょうか?」
曰く、不覚醒睡眠障害はそれこそものすごく珍しい症例で判っていない事が多すぎる。
曰く、その病気を解明しようとする機関も存在しそこならば無償で収容してくれるらしい。もちろん、病気の研究及び解明という名目だが。
私はそこに行き、話しをして、そこに美与を預けることにした。
研究と言っても今は脳波を見ていることぐらいしかしていないらしく、面会は面会時間内であるならいつでも可能、とのことだった。
よって今度の日曜日、今もまだ眠っている彼女に会いに行く。
話して聞かせようと思う。
まずは、この会社の人たちのことを。
どれだけ私が周囲の人に恵まれているのかを。
彼女に…美与に感謝の意を込めて。
元々これは短編で出すつもりでした。
……書き始め当初の私はどうしてこれが短編で終わると思ったのでしょうか?
これは長くなる、そう思っても三章…ながくて四章。
そう思ってたのにいざ終えてみればまぁ六章。
……………………アホです。
さて、この作品についてですが、なるべく私ができうる限りを使って読者の皆さんに作中に出てきた人に感情移入できるように、と書いてみました。
もしうまく思い通りに運べてたら嬉しいです。
ただやはり私の表現したかったコトをそっくりそのまま表現し伝えられたか、は……どうでしょうか?
これからも精進していきたいものです。
それと、作中の最後に出てきた機関は別に非公開で非人道的は実験をしている闇組織にしたてるつもりはございませんので。
ここの職員さんたちも良い人ばかりです。
それでは、この作品を読んでくださってありがとうございました。
読み終えた時涙を流す、とまではいかなくてもモヤモヤした感覚(?)やるせない感じ(?)が心に残っていたら良いな、と思っています。
読者さんに感情移入して読んでもらう、ということが命題ですので何かしらの感想をいただけると嬉しいです。それでは。