表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

別れ、そして

掲載日:2026/04/30

15分短編です

 目を閉じると、彼の顔が浮かぶ。そうして、少しうんうんと唸った後、結局眠れなくて目を開ける。

 もう一週間経つというのに、まだ、心の整理はつかないまま、なんとなく眠れない日々を過ごしている。

 6年付き合った彼氏と別れたんだから、仕方ないよと友人は言ってくれるし、私もそう思うけど、もう別れたのだから、いい加減、前に進みたい。

 なんでこうなってしまったんだろう。

 未練がましく彼とのやり取りを残しているの、なんか、弱っちくて、女々しくて嫌だ。まぁ私、女なんだから、女々しくたって良いんだけど。

 そんな自分への突っ込みには乾いた笑いしか出てこない。ため息が重く部屋に落ちる。

 電気をつけて、やり取りを見返した。もう何度も何度も見返して、「どうしようもなかった」という結論に至るのだけど、また見返してしまう。なにか、私が見落としているものは無いか。ここからやり直すことはできないか、そんな淡い期待を持ったまま、スクロールして、夜が明ける。

 この一週間、ずっとそんな感じ。仕事には何とか行っているけど、上司にも心配をかけてしまっている。

 写真アプリを開いて、彼との思い出を消そうとしたけど、やっぱりまだ消せそうにない。

 最初は絵にかいたようなバカップルで、友達からは「胃もたれ起こしそう」なんて揶揄われていたけど、気持ちはその時とあまり変わっていない。でも、付き合っている期間が長くなればなるほど、私は彼に、期待してしまっていたんだと思う。

 彼ならわかってくれるはず、きっと理解してくれている。そんな期待が、いつしか「そうしてくれるはず」という要望にも似たものに変わっていた。ソレが彼の重荷になっていたのかもしれない。

 誕生日のプレゼントが、去年よりも安かったりしたのを咎めたこともあった。私は去年よりも良いモノをって考えてたのに、彼は去年と同じか、それよりも安いモノを買ってくることがあって、ソレがなんだか、軽く扱われているみたいで、嫌だった。

 でも彼は、私が好きだと言ったブランドを覚えていて、その中で、私の生活に必要になりそうなものを選んでくれていただけだった。

 そう言う小さな気遣いが好きで、付き合っていたはずなのに、どうして私はそれをすっかり忘れていたんだろう。

 私はずっと自分の事ばかりで、彼の気持ちを蔑ろにしていたんだな、なんて、別れた今さらそんなことを思う。

 別れてからずっと、私の悪い所ばかりが浮かんでくる。

 彼の写真が、愛おしく見える。彼とのやり取りが懐かしい。あの頃に戻れたらなんて、現実逃避的な希望と、自分のせいだという自責の念が入り混じる。彼と過ごしたこの部屋すらも、なんだか私を責めてくるように見える。

 彼とのやり取りを遡っていると、仕事の関係で気落ちしていた私に、彼が優しい言葉をかけてくれた時の物が出てきた。

 こんなに優しい言葉をかけてくれたのに、どうして私は彼にありがとうを伝えなかったんだろう。

 どうしてだろう、別れた今の方が、彼との思い出がたくさん蘇る。喧嘩をしているときはこんなに優しい人だって、思い出しもしなかったのに。

 私はいつも気づくのが遅い。そして大切なものを失くしてから、そのことに気が付くんだ。なんて、失恋ソングによくある一説が頭の中をめぐる。

「はぁ、ほんと、勘弁してよね」

 もう戻れないあの頃に、私の涙が沁みていく。

 自分の弱さもバカさも、いつか受け入れられる日が来るのかな。



——今はまだ、この傷を癒す暇をください——

眠れない私をベッドが優しく包んでくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ