第49話 邂逅Ⅲ:Elemental
変幻自在のユニークスキル、『自然使役』。そしてそこから派生した、『灼熱熔化』、『氷縛凝固化』、『大震天動地』、『疾風刃波及』。ちなみに、〝風〟以外の命名はルディア。
その中でも、今使っている『疾風刃波及』は、精霊魔法:大気圧縮断切を超強化したような感じだった。
「おいトレークハイト! テメェも攻撃加われや」
「えぇ〜? 俺は防御役が花道だろ? 能力も防御向きだしよ」
「攻撃出来ねぇわけじゃねーだろ」
なんか話し合っているが、どうしよう。
二人一気に来ても勝てると思うか?
《ああ。けれど、トレークハイトは厄介だね。負ける事はあり得ないだろうけど、多分勝てない》
ほう? ああ、シュトルツが言ってた『不動の怠惰』だっけ?『自身を不動の大地と化す』っていう。
《そうだね。その能力を発動中のトレークハイトは、ボクでさえもダメージを与える事が難しい》
え?
それじゃ、俺に勝つのなんて不可能なんじゃ……。
《いや、そうでもない。彼自身も言っていたけど、彼は防御役が花道なんだ。彼とハープズフトのコンビは本当に厄介だけど、ツォーンは協調性皆無だからね。まだ、対処のし様がある。しかも彼は、仲間意識が強い》
シュトルツも言ってたな、それ。
《だから、隙が生まれるとしたらツォーンの死だろうね。ツォーンを重点的に攻めるんだ》
……容赦ないですね、ルディアさん……。
《アハハ! 何の事かな?》
………
……
…
というわけで、現在はツォーンを集中攻撃中。
そして、『疾風刃波及』の真骨頂が──
「なっ──」
ツォーンの硬めが斬れ、割れる。
「……テメェ、いつ発動した?」
「何の事だよ?」
「これ、魔法だろ。しかも、俺達が最も憎む〝精霊〟の……」
「……へぇ」
案外洞察力が……。
これ、あんまり煽れないな。
「そうだな。今の俺の能力は、ちょっとの動きから『風の刃』を生み出すってやつなんだよね」
「……チィ、厄介じゃねーか。だが、対策も講じられるな」
コイツ、頭悪いなんて思ってたけど適応力が高いのか。
「俺は頭悪いからな。俺自身は俺が考えついた対策は実行出来ねぇ。ただ──」
なんか怖いぞ……。
一応、『風刃』を溜めておこう。
ただ時間が必要だから、時間稼ぎは必要……。案外制約が多いな。
「ただ?」
「ずっと外を歩いてたトレークハイトなら出来る。トレークハイト、やっぱりサポートに徹しろや」
「人使い荒すぎだろ……呆れるぜ」
なんて言いながら、トレークハイトから攻撃の気配が消えた。本当にサポートに徹する気らしい。
ちなみに、アイツらは何をしようとしているんだ?
《大体想像はつくけど、キミには教えられない。戦闘経験は大事だから、経験しておくといい》
う、うーん……それもそうか。とりあえず、ライブ感で乗り切ろう。
ツォーンの拳に魔力が集中している。なんか、途轍もない破壊力を生みそうな……。
「そんじゃ、死ねェ!!」
ここだ!! ──と内心で叫びながら、幾重にも重ねた『風刃』を前方に放つ。
「大気圧刃砲!!」
理論上は防御不可。ここまで近づいたなら、もうほぼ必中だろう。
「効果削除」
聞こえた、トレークハイトの声。
次の瞬間、放った『風刃』の塊が綺麗さっぱり消えてしまった。
「何を──」
「おるァ!!」
「うぐっ」
クッソ……逆に攻撃もらうとは……。
「やっぱりなァ! 魔法が原理なら、トレークハイトが『魔法』で書き換えちまえば消せると思ったんだ」
「勘だけはいいもんな、お前」
「褒め言葉として受け取っとくぜェ」
やっぱり……風使いづらくない?
《ま、まぁ、それに関しては、ね……》
だって〝土〟に関しては『衝撃吐息』の応用で、俺という存在にピッタリの能力だろう。
ただ、一番得意……というか合っているのは〝炎〟だ。しかし、〝氷〟も便利……。魔法が基本原理の〝風〟って、ここまで使いづらいものなのか。
《やっぱり意識が大事だね。キミは魔法を元に解釈を広げていっているから魔法が根本原理になっているんだ。もっとこう、自然現象を意識してみたら?》
斬り裂くような、冷たい風……とか?
《そうそう! その調子だよ!》
よぉし……。
指先を少しでも動かせば、風の刃を作り出せるから発動自体は簡単だ。それをバレないように、かつ流れるように繋ぐのがいいんだ。
「──チッ、おい、トレークハイト。わかったか?」
「いや、わからなかった。消す暇もなかった」
よし。
気流操作で『動作補助』と『加速』というのは成功。イメージ通り。
《どんどん扱いが上手くなっていくね》
ああ。この調子で、圧倒する。
「よしよし、効果テキメン」
「チィ、見えねェ」
「だろ? けど、このままジワジワ……だと、時間が足りなくなる。俺も急いでてね」
流石に時間がかかりすぎる。多分両方とも『再生』系のスキルを持っているだろうし、回復されたら終わりだ。まったく、俺ですら『再生』系スキルは持っていないっていうのに……。ズルい。
というわけで、『変化』するは震い割る竜。
「またその姿かよ」
「トラウマか? 散々痛めつけられたもんな」
「ハァン? バカ言えよ、何度でも戦ってやるさ。適応して、飲み込んでやる。お前の力も、誰も彼も、この世界すらも、な」
とんでもない野望をお持ちのようで……。
「人間と魔族はわかり合えねェ。だったら争い、殺し合い、生存圏を確保するしかねーよな?」
なんというか、野性……荒々しい気性な気がする。
《言ってる事は間違いじゃないけどね。彼らの親玉や黒幕は魔族側、ボクやシュトルツは人間側……実際に、争っているんだからね》
うーん、そう、なのかも?
ただ、俺は人間側だ。そんな主張をしていて、俺がそれを受け入れる場合は、コイツと殺し合う事になる……わけだけど、予定調和だから問題なし。それに──
「時間稼ぎありがとう。ようやく十分に作れたぜ」
「はァ? 何言って──」
何言ってやがる? ──とでも、言おうとしたのだろうか。残念ながら、その言葉を発するのは出来なかったが。
「ガッハ……」
ツォーンの腹を貫くのは、尖った石柱。
実はこれ、魔法で作っているのだ。何個も仕掛けているが……魔法はなんかこう、難しい電気回路と同じ。信号──つまり魔力が届き、発動するまでには多少なりとも時間がかかる。
しかも『魔法で土を槍状に整形・引き伸ばして尖塔のようにする』という複雑な動きを仕込んでいるのだ。そりゃあ、時間がかかるのも当たり前である。
ただ、ツォーンがベラベラと喋ってくれたお陰で、その時間も稼ぐ事が出来たけどね。
そして、トレークハイトによる『上書き』対策もしている。この穿突岩だが、整形・引き伸ばしが完了した時点で魔法効果を失っている。なので、上書きしても消えない。
地中に仕掛けているので、場所を特定される事もない。置きトラップとしても有能な技だ。
「ツォーン! クッソが……テメェ!」
おっと、トレークハイトが殴りかかってきた。
……面倒だから全自動反撃を──
《いらないって言ったじゃん。ボクは回復に専念してるよ》
使えねー!!
仕方ないので自力で受け流し、後頭部を蹴って反撃。
「……下がってろ、トレークハイト」
っと、ツォーンが待ったをかけたぞ……?
何か企んでいるようには見えない、けど……なんか、嫌な気配だけはするな……。
「はぁ? でも──」
「下がってろ、トレークハイト。こんな傷、すぐに治せる。ただ、力は貸せや」
「…………仕方ねーな。とりあえず、魔力はやるよ」
させたら終わる気がするのでさせない。
「悪いけど、妨害はする」
「してみろよ。言っとくが、俺達の絆は切れねーからな」
魔族も〝絆〟なんて言うんだな。
《そうだね。実際、〝深罪〟達はみんな協調性があるしね。ただ、ツォーンが彼らの中で一番協調性がない》
お、おう……。
そういう感じなんだ。
なんて思っていると、ツォーンの肉体が変化を開始した。角と翼、尻尾が生え──って、見覚えあるな……。これ、『竜化』だ……。やっぱ、出来るんだ。
《キミもしてみるかい?》
大怪獣決戦かよ! いいね、そういうの大好きだ!!
そんな事を言い合っている内に、ツォーンの『変化』が終了した。
真紅の鱗に覆われた東洋龍のような見た目の竜。多分俺の見た目は西洋竜なので、ちょっと珍しいもの見た感じがする。
さてさて、では俺も『竜化』を。
「お前だけそんな馬鹿でかい図体とか、めちゃくちゃズルいよ」
『ハッ! 俺達〝竜〟の特権──』
「特権、だって? ゴメンけどその特権、俺にもあるんだわ!!」
『変化』が始まる前に、〝自然を統べる竜〟に戻っといて……。
レアスキル『俯瞰』でしっかりと自分の姿を見ながら、早速『変化』開始。
俺にも角と翼と尻尾が生えた。鱗の色は……くすんだ白色。灰色……とは、微妙に違う。側頭部から生える角は、湾曲した如何にも〝竜〟っぽい感じだ。尻尾は……まぁ、説明不要だろう。カッコイイ。
かくして、竜形態への『変身』が完了した。
『…………なんだァ、テメェも使えたのかよ? ってか、人間態になれてンだから使えるのも当たり前か……。その前に、テメェも〝竜〟だったなんてな』
『まぁね』
ツォーンの黒い瞳から放たれる眼光が、俺の体を貫く。
経過時間は三十分ほど……。もう少し持ってくれよ、シュトルツ──
──ピリピリとした空気感の中、戦いは第二ラウンドに移ろうとしていた。
次回、大怪獣決戦!!




