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第43話 往訪Ⅰ:各地に散るピース

「まず、それぞれの深罪(しんざい)の場所を確認しよう」


〝強欲〟のハープズフトが封じられている〝貪婪(どんらん)の禁足地〟は、アーテシュアーブ大陸より遥か西方にある孤島そのものが封印地となっている。


〝嫉妬〟のナイトが封じられている〝怨羨(えんせん)の石室〟は、現在地であるプリティヴィエ・ゼルハーク地帝国より北西の辺境にある。


〝憤怒〟のツォーンが封じられている〝憤懣(ふんまん)の石室〟は、ゲルドバード大陸にある〝ヴァーユラン連邦共和国〟から北西の辺境にある。


〝色欲〟のヴォルストが封じられている〝渇愛(かつあい)の石室〟は、俺の生誕地である〝精霊洞窟(エレメントケイブ)〟及び……アグニル王国より西方の辺境にある。


〝暴食〟のフェレライが封じられている〝悪食(あくじき)氷室(ひむろ)〟は、現在地点から最も遠く、最北の大陸であり魔族を統べる魔王の所在でもある〝魔界大陸〟の、最西端にある。


 ──というのが、各〝石室〟の所在である。


「一番遠いフェレライは、基本どの人類国家とも離れている。それは(ひとえ)に、〝フェレライの権能がヤバすぎるから〟だ」

「どういう権能なんだ?」

「まず、概念竜……それも感情系となれば、その権能は大半が〝概念の拡張(イメージ)〟による権能となる。フェレライの場合は、名の通り暴食や悪食というもの」

「……つまり?」

「直接触れた対象に関する事を食べられる。記憶、生命、オレ達で言えば概念……というように。記憶の場合は更に多様化する。周囲から対象に関する記憶を食べたり、逆に対象が持つ記憶を食べたり。そして、基本的に食べたものはヤツの養分、糧となる。権能名は、暴食の沼地(グラトニーマイア)


 何それえげつない……。

 触れられたら完全終了(アウト)の権能……。ソイツが人類と敵対しているのなら、〝人類文明から出来るだけ遠ざける〟というシュトルツの判断は流石としか言えない。

 てか、あれ?


「七つの大罪モチーフって事は、あと一人……〝怠惰〟がいるんじゃないか? トレークハイト、だとか。そいつはどうした?」


 おっ、アブーリアが俺が聞きたい事を代弁してくれた。

 そうなのだ。提示された〝石室〟は五つ。シュトルツが抜けて六人になっているとすると、一人足りない。〝怠惰〟のトレークハイトはどうなっているのやら……。


「ああ、アイツはちと特殊でな。アイツ自身の権能は攻撃的ではなく、どちらかというと保身的な効果なのだ。本体(アイツ)もアイツで、称号の通り怠惰でな。他の奴らとは違い、本質的にやはり怠惰なのだ」


 つまり、面倒臭がって人類と敵対なんてしないやつだ、と。


「ただし、油断は禁物だ。仲間意識も相応にある奴で、オレの事は敵対者としてみているし、人類文明への攻撃はないにしても裏切り者(オレたち)は別だからな」


 シュトルツからの証言なので、疑いなんて一つもないのだが……説明通りなら、なんというか気が合いそうな奴である。友達になれそう。

 まぁ、そんな話は置いておいて……。

 トレークハイトの事に加え、他の深罪達の権能も教えてもらった。

 おっと、その前に、権能について。

 深罪達の〝権能〟とは、人間や俺で言う〝ユニークスキル〟の事を指すようだ。全く同じ権能は存在せず、概念竜ともなればその存在自身を象徴する要素でもあるよう。

 で、他の深罪の権能についてだが──


〝強欲〟の権能は、さきほども説明してもらった。欲望を魔力等の力に変換するという、強欲の炎(グリードフレア)


〝嫉妬〟の権能は、対象を妬めば妬むだけ対象の魔力等の力を奪うという、嫉妬の海(タイダルエンヴィ)


〝憤怒〟の権能は、怒れば怒るほど魔力量等の力を増すというシンプルな性能をしている、憤怒(ラス)


〝色欲〟の権能は、強力な洗脳効果を発揮するという、色欲の花(ラストブルーム)


〝暴食〟の権能は、先程説明してもらった通り。


〝怠惰〟の権能は、自身を不動の大地と化すという不動の怠惰(アース・スロウス)


 以上が、深罪達が持つ力、その全容。


「改めてもの凄い実力者揃いだな……」

「全員をオレ一人で抑え込み、そして討伐するとなると、やはり戦力が足りない。当時の俺は筆頭としてある程度信用されていたし、その上での不意打ちによる封印だから通用したまで。今となっては、オレは裏切り者の敵対者。真っ向勝負になるし、どうしても相性が悪い者もいる。だからオレはこの千年、協力者探しに尽力していたのだ。その末に、お前を見つけた」


 シュトルツによれば、初対面の時から、俺に対して底知れぬ可能性を感じていたそうだ。それは見事的中し、初見殺しとはいえ自分を打ち破る程の実力者を見つけたのだ……と。

 それと、突出して強い者がいるというわけでもないみたいだ。〝強欲〟のハープズフトは筆頭にして最強ではあるが、特定条件下によっては他のメンバーに負ける事もあり得るそう。

 つまり、全員がそのレベルの実力者……。


「本当に勝てるかなぁ……?」

「……不安ならば、オレに〝とある伝手(つて)〟があるんだが……頼ってみるか?」

「伝手? 伝手って、どんな?」

「──人類最強である、〝勇者〟一行だ」


   ◇◇◇


 シュトルツが言う〝勇者〟とは、今も世界各地で活躍が確認されている人類文明史上最強の最高戦力だそうだ。

 名を──エルピス・アンドレイア。


「勇者エルピスは、現代に残存する唯一の〝神人類(しんじんるい)〟だ。不老であり、その生まれは一万年前のアグニルだと言われている」


 アグニル王国生まれ……。

 シュトルツによると、〝神人類(しんじんるい)〟とは太古に存在した種族であり、今となってはその勇者一人しか残っていないのだそう。神人類の因子が劣化していき、やっと変化が止まったものが現在の人類であるそうだ。


「神人類は強力だ。故に、対魔族には常に駆り出される存在。戦死する者も多く、そのせいで今は勇者唯一人のみが神人類。……だが、生き残った勇者は人類史上最強の実力者なのだ」


 聞いているだけで凄そうである。


「実は、ハープズフトを封印する時に手を借りたのだ。その時の伝手はルディアだがな」


 大昔も活躍しているな、ルディアは。

 ……一刻も早く再会しなければ。


 シュトルツの話によれば、この世界における〝勇者〟も四人体制の編成(パーティ)体系を取っていて、曰く──


 神人の勇者、エルピス・アンドレイア。

 人間とドワーフの交雑種(ハイブリッド)にして雑種強勢(ヘテローシス)の戦士、シュタルク・ベシュテンディヒ。

 世にも珍しい風精人(アールヴ)の魔法使い、ラインハイト。

 同じく珍しい水精人(セイレーン)聖職者(シスター)、アインザッツ。


 以上の四名が、勇者一行(パーティ)のメンバーだそうだ。

 勇者エルピスからして不老なのに、他も凄いメンバーだ。特に、シュタルクという戦士。

 雑種強勢(ヘテローシス)という、稀に生まれる特殊個体がある。これは俺が元いた世界でも活用されている現象で、異なる系統や品種を掛け合わせた際、誕生した子が、両親のどちらもの優れた形質を、更に優れた形で受け継ぐ……という感じのもの。

 このシュタルクは、ドワーフと人間の雑種強勢(ヘテローシス)。ドワーフよりも長命にして頑強、そして手先が器用。加えて、人間よりも高度な知能を備え、驚異的な環境適応能力を持つ。明確な種族名こそ無いが、凄まじい肉体能力である。

 ただ、他の二人も甘く見てはいけない。風精人(アールヴ)水精人(セイレーン)は精霊に準ずる種族の一つで、どちらも長命にして優れた魔力量を有するのだ。しかもなんと、耳長族(エルフ)風精人(アールヴ)から、人魚族(マーマン)、マーメイドは水精人(セイレーン)から生まれたというのだ。


「二人の長所は、やはり卓越した魔法技術だな。攻撃面はラインハイトが担い、水精人(セイレーン)であるアインザッツは、得意の歌に乗せて補助魔法や、時には攻撃系の神聖魔法を放つ。バランスの取れたパーティなんだ」


 聞いた限りでも凄そうである。

 というか、やはり勇者ってのはいるんだな、異世界。流石は異世界だ。


「そういえば、勇者の定義って何なんだ?」

「そんなものはない。ただ、歴史の中で幾度か……選ばれた(・・・・)ように強い力を持って生まれる人間がいる。もしかすると、そういう奴らを人は〝勇者〟と呼ぶのかもしれんな」


 なんかチート能力を授かった異世界人……とかいうわけではないんだな。それか、召喚された異世界人とか、そういう事はないらしい。

 ただ、その〝授かるもの〟を勇者の資質としているようだけれどね。


「ふーん。で、その勇者一行はどこにいるんだよ?」

「さぁな」

「は?」

「わからん。アイツらはいつも世界中を巡り歩いているからな。お前のように、定住しない性格なのだ」


 俺の性格って結構厄介だったんだな。

 まさか位置がわからないなんて……それじゃ頼り様がなくないか?


「だから、聞き込みをするしかあるまい。例外もあるが、勇者達は基本〝冒険者〟という名目で活動している。ギルドの情報を辿れば、大凡(おおよそ)の現在位置が辿れるというものよ」


 かなり地道な作業になりそうだな……。


「とりあえず、勇者一行の居場所からだな」

「……かなり地道な捜索になりそうだ」


 ──とまぁ、なんやかんやあって、勇者一行を訪ねる事が決定したのだった。

ついに〝勇者〟という要素を扱う事になりました。お察しの通り、勇者ヤバイです。今回の会話の流れでしれっと〝魔族〟や〝魔王〟という単語が出てきていると思いますが、ご存知の通りアヴラージュはまだ魔族と邂逅していない……それはなぜか?

ネタバレになってしまいそうですが、勇者が人類国家付近の魔族を片っ端から狩っているからです。それはもう、ひとり残らず。目撃情報が入った瞬間に現場に向かい捜索→すぐに見つけて殲滅……。というわけで、まだエンカウントしていないのです。


……という、裏設定があったりなかったり。余裕があれば、次話でそんな事も書こうと思います。

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