第3話 精霊はどういうものなんだろう? 食べ物?
洞窟内に戻ってきて、今は魔物肉の調理中である。
適当に薪を集めて火をつけたのだ。俺もフィエットも非力だから、火をつけるのにもかなり時間がかかったけど……。
そういえば、なんだかキラキラとしたものが洞窟内を漂っているが……?
《これは小さな、下位の精霊だね》
せ、精霊……? そんなのもいるのか、この世界は?
《うん。もちろんいるよ。悪魔とか、天使とか、竜以外の魔物とかさ》
ほう! いつか見てみたいな、天使。
《目線はそこに行くんだね……。まあ、いいけどさ》
──と、その時。
「きゅいっ!?」
勢いで、小さな精霊が俺の口の中に入ってしまった。
「きゅっ、きゅいきゅいっ!?」
急いで吐き出そうと口をモゴモゴさせるが、上手く外に出せない……!
果てには、なんと、飲み込んでしまった。
「きゅ──い?」
あれ? 美味しい……ぞ?
どうなってんだ、これ?
《も、もしかしてキミ、精霊を食べちゃったのかい?》
ルディアが珍しく狼狽えている。いやいや、そんな事言ってる場合じゃなくってだな……。
ええっと、精霊、なんだっけ? 思ったより、甘いな……。
甘くて……美味しい、ぞ!?
フフフ……もの凄い事を知ってしまったぞ。
この精霊、今食ったのは赤色だったが、他にも、土色、緑色、青色……計四色がいる。つまり、それだけ味の種類もあるという事だろうか?
いや、野暮だな。検証すればわかる事!
《ちょ、ちょっと……キミは一体何をしようとしてるの……?》
ルディアの声が聞こえた気がしたが、そんなもんフル無視だ。
そうと決まれば、善は急げ! である。宙に浮いている様々な種類の精霊達を、次から次にパクパクと食べ進めていく。
「わあ、ドラゴンちゃんっ!? そんなわけわかんないもの食べちゃだめだよーーーっ!!」
「きゅい、きゅいきゅい!」
美味しいし、別にいいじゃん!
「そ、そう、かなあ……」
ふむ。色んな味があるみたいだな。
赤は甘味、青は酸味、緑は苦味、土色は辛味……。
俺の好みは赤だけか。
実は俺、甘党なのである。
《へえ、そうなんだ。ボクは人間の料理には興味なかったけど、甘味ってそんないいものなの?》
そうだよ? めちゃくちゃいいよ?
まさか、食べた事ないのか?
《え? うん》
うわー、人生損してるな、お前。
《何言ってるのかワカラナイけど、そうなんだ? じゃあ、食べてみたいな》
コイツ、結構世間知らずなのか……?
《そう、なのかな?》
いや、俺に聞くなよ。
《ま、確かにそうだよね。一度は経験してみたいな、甘味》
うんうん、それがいいと思うぞ。
………
……
…
と、いうわけで。
選り好みしつつも、結構まんべんなく全種類を食ったと思う。でも、比率的に赤の方が多かっただけだからね?
「きゅい〜……」
なんだろうか、もの凄い満腹感を感じる。フィエットに紹介してもらった果物とかは美味しかったが、満腹感は得られなかった。
しかし、この精霊はどうか!
食えば食うだけ腹が満たされていく感覚を味わえる。
《………………》
ルディアが意味深に沈黙している。
ま、どうでもいいな。
「……お、美味しかった?」
「きゅい〜!」
「そ、そうなんだ……」
フィエットもなんだか引いている……?
い、いやいや……。き、きっと見間違いだな……。そんな事耐えられない……。
俺は、美羽の面影をフィエットに重ねていたので、そんなフィエットに引かれて、嫌われるなんて、絶対にイヤだ……。
《き、キミ……頑固だね》
ウルサイよ!
美羽が本当に可愛かったんだ。なので、仕方ない事なのだ。
《なので、じゃないんだよね。どこが仕方ないの?》
お、おい! しつこい男は嫌われるぞ!
《何言ってるかわかんない……ま、まあ、いいか……》
やっぱり引いてるよね!?
酷いやつだ……。
《ご、ごめんってば》
まあ、いいけど。
《ああ、そうだ。それに、キミはまだ幼き竜だけど、食べた精霊によっては……》
ドラゴネット?
《うん。キミは、可能性の塊だからね》
何を言ってるのかわからないが……別に、悪い事ではないんだな? 精霊を食うってのは?
《う、うん……ま、まあ、まあね》
あ、それはダメなんだ。マイナスに働かないってだけでいい事ではないのね。
………
……
…
時間が飛んで、夜になった。
「うーん……」
フィエットが目を擦りながら唸っていた。
「きゅい?」
眠い?
ちょっと心配になったので、咄嗟に聞いてしまう。断っておくが、俺はロリコンではない。断じて。
「うーん……うん……」
「きゅーい」
寝よっか。
「うん……」
フィエットに、魔物の毛皮で作った毛布をかけてあげる。
《キミも、結構お節介だよね》
まあ、フィエットにはここまでしてもらってるしな。
《キミがしてあげてる事の方が多いんじゃないかい?》
いやいや。フィエットがいてくれるだけで、全っ然心細くないんだ。
《…………それって、重要?》
はあ!? 重要に決まってんだろうが!! そうじゃないにしても、右も左もわからない未知の世界で一人ぼっちだったんだぞ? お前はいるけどさ。
そんな俺にとって、人間ってのは重要な奴らなのさ。
《……フーン、そうなんだね》
何やら不安げなルディアの声が、ただ聞こえるだけだった。
星空を見上げ、その景色に見入る。
なんて美しいんだと、こんな美しいものがあったのかと、俺は感動した。
前世ではそんな事思わなかったのだが、この世界では接する何もかもが美しく感じる。
俺はそんな事を思いながら、眠りについた。




