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第39話 離別Ⅰ:早い再会

「まず、身元は?」

「あの、職業は冒険者で……定住していないので、住所はなしです」

「了解」


 軍警の人が、調書のようなものに俺の情報を書き込んでいっている。

 ま、まさかこの世界で警察のお世話になってしまうだなんて……。

 軍警の人によると、ここはゼルハーク大陸に位置するプリティヴィエ・ゼルハーク地帝国の首都……いや、帝都〝ミーティ〟だそうだ。

 図らずも目的地に到着してしまったのだが……不測の事態である。なんと、ルディアと離れ離れになってしまった。

 ルディアは俺の位置情報を掴むなんて事も出来るだろうが、俺にはムリ。絶対ムリ。


「……で、どうして街中で急に出現したわけ?」


 そりゃ聞いてきますよねーーーっ! 俺だって聞くもん!


「え、ええと……それが俺にもわかんなくって──」

「そんなはずないだろう?」


 ですよね、通じるわけないよね! でも事実なんですーーっ!!

 困ったもんである。

 かと言って事実を話しても、信じてもらえるはずもない。辺境国家の失踪事件の捜査中、急にこの帝都内に飛ばされた……なんて、夢でも見ていたんじゃないかと疑いそうにもなる。

 が、事実である。何をされたのかもわからないので、説明のしようがないのも確かなのだがね。


「アヴラージュ……確かに、冒険者登録されているが……アグニルで登録しているな。そして、最後はトランキールで依頼を受諾……。まだゼルハークに向かう船は出ていないはずだが、どうやってここへ?」


 うーん、わかんないんですけど……。

 そもそも、なんで俺はこんな場所に転移したんだ? まぁ、それがわからないからもの凄く困っているわけなのだが……。

 自力で考えてみよう。とりあえず有力そうなのは、空間属性の魔法か、その系統のスキルだな。スキルの場合は『空間操作』という名前のレアスキルらしく、聞いた限りでは他人を別の場所に飛ばす……とか、そういう事も可能だった。

 空間属性の魔法も、極めればそういう事が出来そうだ。ただ、極めると『空間操作』を獲得するので、魔法を行使する必要性は皆無。つまり、スキルの可能性が高いだろう。

 ただ、その場合で引っかかるのが『歪曲消去(イレイス)』というあのコトバだ。イレイス……直訳すると『消去』とかそういう意味だが、これが『転移』とどう関わってくるのかが不明。


「とりあえず、冒険者ギルドと軍の上層に情報を送るし、危険性がないと判断されるまで拘束させてもらうからね」

「はい……」


 ふ、不服だ……。危険性など皆無のはずだろう!?

 冒険者は正義……かは不明だが、基本的に人のために自己を犠牲にして働く仕事のはずだ! そんな俺が危険なんて……。

 ………………そういえば、村を一つ焼き滅ぼしてたな。失敬失敬……なんて、言ってる場合じゃない。

 どうすればいいんだろう? 仮にこの後釈放されたとして、俺はどう暮らせばいいんだ……。

 って、あ! そうだ!〝絆の廻廊(かいろう)〟を通じてルディアに連絡を──って、あれ? 通じないし……上手く、出来ない?

 クソ、何もかも上手くいかない……。


  ◇◇◇


 拘束されて一時間が経過した。

 感情としては〝無〟である。

 これから無事に生きていけるビジョンが見えない──っ!!

 ──と、かなりこれからの人……(ドラゴン)生を悲観していた。

 ……のだが、ここで俺の幸運が炸裂する。


「……調書を見てまさかと思ったが、本当にお前だったとはな」


 懐かしい声だ。いや、別れてからそれほど経っていないので、様々な事が起こりすぎて混乱しているから懐かしく思ってしまった……のだろうか。

 低い、格好のいい声。

 見ると、そこには黒い短髪にギラギラと光る真っ赤な瞳を併せ持つ整った顔立ちの、軍服を着た美丈夫──服装こそ違えど、そこにいたのはシュトルツだった。


「あっ、シュトルツ! そりゃ、そりゃいるよな、忘れてた……」

「……はぁーー。ルディアはどうした? アイツなら話が通じ──」

「あ、いないんだよね、ルディア」

「…………一人で来たのか?」

「ま、まぁ、結果的にはそうなるけど……違うんだ、説明させてくれ!!」


 それから、俺は急いでそれまでの経緯を説明した。

 シュトルツ達と別れたあと、そのまま大陸の東に向かって進み、冒険者ギルドのトランキール支部で大量行方不明事件を受諾。事件を追っている間に黒幕に辿り着いたが、気付けばプリティヴィエ・ゼルハーク地帝国の帝都〝ミーティ〟に。それから軍警に捕まり、

 ……自分で整理していても、は? って感じだな。

 納得はしてもらえないだろうが──


「…………はぁーーーやれやれ。お前、ずっと何らかの面倒事に巻き込まれているな」

「うぐっ……俺もなんでこうなるかわからないんだよぅ……」


 どうして毎回毎回こうなるのか。


「しかし……〝絆の廻廊(かいろう)〟でルディアと連絡が取り合えない、という話は引っかかるな。元来、他者と繋がる〝絆の廻廊(かいろう)〟とは、妨害や距離すらも無視して『思念通話』を可能とする稀有なものだが……それが機能しないとなると、異常事態じゃないか?」


 確かに、それもそうである。シルティオスもそう言っていたしね。

 つまり、どうなっているのか……。


「……まぁいい。とりあえず、リーベを読んでくる」

「え? あ、リーベもいるんだ」

「軍医だからな。少し待ってろ」


 ぐ、軍医……。

 凄いな。まぁ、回復魔法は一丁前多って言ってたし、軍医なのも納得だ。……軍で勤めていたというのがそもそも衝撃ってのは、言ってはいけない。


「っと……その前に、個室は用意しておいてやる」

「あ、ありがたい」


 その前に、なんと個室まで……身内の特権ってやつかな? ま、関係ないだろうけど。

 案内された個室は簡素な作りだ。一人で暮らすって言うなら落ち着きそうなものだが。これは、俺の小市民感覚のせいでもあるがね。


 数十分ほどして、リーベが入ってきた。

 白衣を羽織っていて、かなりの美人。


「……本当に来ていましたのね」

「まぁ、成り行きでな。シュトルツから聞いているとは思うけど」

「そうですわね。しかし、不可解ですわ。〝絆の廻廊(かいろう)〟が機能しないというのは、シュトルツも言うように相当な異常事態ですのよ」


 あ、思ったより深刻そうだな……。

〝絆の廻廊(かいろう)〟は、違う魂と魂を繋ぐ目に見えない廻廊らしい。それを通せば、魔力の移譲や妨害を無視した自由な『思念通話』が可能だったり……色々と便利なのだが、生まれる事はほぼない。存在の壁を超えた〝魂〟同士の接点レベルなので、本当に希少な機能なのだ。


「……脳の問題なのですわね」

「へぁ?」

「脳にある魔力回路が壊れていますわね」


 えっ、嘘ぉん……。

 何があったの!?

 もしかしなくとも、あの〝シュジェ〟って少女の仕業……。

 負けそうになったからってこんな最悪の置土産くれやがってチクショウ!! ──って、文句を言っても仕方ないんだけど……。問題は、治せるかどうかだ。


「……ダメ元で聞くけど、治せる?」

「はい」

「あっ治せるんだ」

「ええ、お手の物ですわ」


 えげつない……。

 なんかさ、俺もそこそこ強いな〜とか、異世界転生といえばこういう無双だよね〜とか思ったりしてますけれども……リーベとかシュトルツは言うまでもないし、ルディアもシルティアスも強くないですか?

 すっごいぶっ壊れ性能してません?

 理不尽だと思うんですけど。


「じゃあ、お願いします」

欠損部再生(リジェネレーション)


 俺の頭を、神秘的な光が包み込む。数秒して、その光が消えた。

 これが回復魔法の感覚か……。彼女が使う深き愛の祝福(アムールブレッシング)の方が温かい……回復効果を受ける感覚というのは、優しさというか、温かさを感じるものなのかもしれない。

 まぁ、ひとまずは『解析』しておこう。今後、どうせ必要になる。前に使ってくれたその深き愛の祝福(アムールブレッシング)も『解析』してはいるが、一向に進まないのが難点だな。


「……よし、しっかり治ってますわよ」

「………………早いっすね……」

「回復魔法は一丁前ですからね。ウフフ♪」


 概念竜って、こういう奴らばっかなのかな?

 シュトルツとか、初戦こそ勝てたけど、もう絶対勝てないし。

 さてさて、ルディア? ──って、あら? あららら?


「……なぁ」

「はい?」

「本当に治ってるんだよな?」

「ええ。解析してみてもそうですけれど……」

「……ルディアと連絡が繋がらん」

「マジですか」

「大マジだよ」


 というか、そうだな。少し考えればわかる事だった。

 俺だけが魔力回路に障害を負ってる……わけない。同じく、別の場所に飛ばされたと思われるルディアも魔力回路に障害を負っていると簡単にわかるのだ。

 ……。マズい事になった。

 一応リーベに、魔力回路障害を自力で治せるのかどうか聞いてみた。


「……無理、ですわね。そもそも、魔力回路が損傷を受けている場合、まともな思考が出来ない場合が多いですわ。逆に、アヴラージュさんが特例ですのよ。ここまでしっかりと思考出来ているのですから。……きっと、損傷が少しだけだったのでしょうね。アヴラージュさんの話に聞いた〝シュジェ〟という少女がこの症状の原因ならば、アヴラージュさんの症状が軽微なものだったのは離れていたから。逆に──」


 信じたくない。

 認めたくない、そんな事。

 つまり、距離が短い……どころかゼロ距離だったルディアは──


「……概念竜とはいえ、それは概念因子を宿したただの竜。構造は通常の龍族(ドラゴン)と変わりませんからね……。もしかすると、記憶の一つや二つ、飛んでいるやも……。アヴラージュさんの事も、最悪の場合は…………」


 ダメだ、やめてくれ。

 それ以上言わないでくれ。


「最悪の場合なんて考えても、どうにもならないだろ? とりあえずは、ルディアを捜すところから始めようぜ」


 なんとも言えない、不快な寒気を覚えながらも、俺は二人にそう告げるのだった。

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