第25話 激化と掃討
諸事情あって、投稿が一日空いてしまいました!! 本当にすみません。
「よぉし、反撃開始!!」
そう叫ぶと同時に、俺は走り出す。勢いをつけて、翼を広げて飛翔。
体内から生み出される冷気を圧縮して球状にし、魔獣の一匹に向けて投げる。
「キシッ──っ!?」
命中したのは硬鱗恐竜。
命中した瞬間、硬鱗恐竜の全身が分厚い氷塊に包まれた。
「おお、凄いな。こんな感じなのか」
そう呟きながら氷塊と化した硬鱗恐竜を軽く小突いてみると、ぐちゃぐちゃ粉々に粉砕してしまった。
硬鱗恐竜の肉体ごと裂けているようなので、めちゃくちゃグロい。
確かにアニメや漫画でも、凍結させた相手を氷ごと砕いて倒すってのは結構見かけるけどさ、リアルで見るのはやっぱちょっと違うよね。やっぱめちゃくちゃグロい。
「…………なに、その姿?」
偶然近くにいたシルティアスが問いかけてきた。問い詰めるというよりも、ポロッと漏れてしまった疑問、って感じかな?
別に隠す理由もないので教えてあげた。
「これか? 凍み氷る竜っていう俺の『形態』なんだよね。かっこいいだろ?」
「そんな事出来る同族、今まで見た事ない……。貴方、何者なの……?」
何を言ってるんだろうな? 俺には理解出来ない。
何者もクソもないだろ。俺は──
「俺はただの〝竜〟だよ」
自然を統べる竜、アヴラージュ。ただそれだけなのだ。というか、それ以外にない。
それを聞いたシルティアスは少し驚愕していた様子だった。何を驚いているのやら。
っと、何やら長考しているシルティアスの背後に飛行型の魔獣が……ルディアに教えてもらった、突進甲虫と殺戮の孔雀だな。
「穿天氷」
地面に手をついて、身体から発せられる冷気を伝わせる。そして生み出した氷の棘で、突進甲虫と殺戮の孔雀を串刺しにした。
ヒーローモノでもよくあるよね、氷の能力。そういうのって、大体強いんだ。
「なっ……」
「ふふ、凄いだろ? あと、油断は禁物だぞ」
ちょっと得意になったので、お説教みたいな事もしてしまった。
「私にお説教とか、百年早いんだけど」
対するシルティアス、ちょっと素っ気なくない? 俺、傷ついちゃうよ?
まあ、いいんだけど。
さて、面倒だし、一気に終わらせたいな。
『ルディア』
『うん? どうしたんだい?』
『みんなを、俺を中心に半径百メートルぐらいの範囲から避けさせてくれ』
『大技を使う気だね。楽しみにしておくよ、任せて』
よし、避難誘導はルディアに一任したし、あとは俺の好きなようにやろう。
邪魔される事もなさそうだし、綿密に練ってやろうじゃないか。
体から放出される冷気を抑え、体内に縛り付ける。
体内の温度が氷点下二百度を下回ると、手の甲や腕に空色の模様が浮き出てくる。
おっと、ルディアは俺の意図をしっかり理解しているようだ。俺を中心に半径百メートルぐらいを、『冷気のみを封じ込める結界』で覆ってくれている。シュトルツ達が頑張ってくれて、魔獣も確認出来る全てが結界内に収められていた。
白い息が漏れる。
「氷雪流穿」
瞬間的に、氷点下千度ほどの冷気が放出される。それは莫大な冷気の嵐となって、『封冷結界』内で迸る。
◆◆◆
ルディアは考える。
(アヴは何をしようとしているんだろう? 体内温度をあんなに下げて、大丈夫なのかな……?)
アヴラージュが行っている事は、いわば自殺行為にも等しい事であるのだ。
ルディアが観測出来るだけでも、アヴラージュの体内温度は氷点下百度を下回っているのだから、そう思うのも当然というものである。
(何にせよ、気を引き締めなきゃね。もし、少しでも冷気を逃がしたら、この国というか、ボク達も大変な事になる気がするよ)
その考察は合っていたと、次の瞬間には思い知る事になる。
アヴラージュの口から白い息が漏れた。
「氷雪流穿」
アヴラージュの体内に抑え付けられていた極超低温の冷気が一気に放出され、ルディアが形成した『封冷結界』の内部を埋め尽くす。
その万物を凍てつかせる冷気によって、ルディアが作り出した結界が悲鳴を上げている。
(アヴめ、なんて事するんだよ! ボクが常時バックアップしてなきゃ、簡単に結界ごと凍え壊れるじゃないか!!)
なので、ルディアが内心でキレるのも当然の事だったのである。
流石のルディアも、これには苦戦する。
(ちょっと待ってくれよ。アヴが放つ冷気は、とっくに物理界の法則を超えてるじゃないか……)
そうなのだ。
アヴラージュが放つ冷気は、氷点下百度なんてものではない。とっくに氷点下千度を下回り、物理法則すら超えた冷気となっているのだ。
物理界に流れる物理法則の温度の下限は、氷点下二百七十度ほど。それ以下の温度は存在せず、物理法則を超越しない限り再現も不可能。
(アヴ……やっぱりキミは、この世界の特異点になり得る存在なんだね)
ルディアも驚愕している辺り、アヴラージュがどれだけ規格外な事をしているかが窺えるだろう。
というわけで、物理界を生きるルディアが作った物理的な『結界』では、幾ら対冷気特化だとしても耐えるのが困難になるのだ。
困難。それだけである。
(別に、耐えられないってわけじゃないよね。全力は使っちゃうけどさ)
ルディアからすれば、それに対する怒りよりも、アヴラージュの成長に対する喜びの方が大きいのだ。ある種の親馬鹿とも言え、アヴラージュ本人が聞けば心底呆れる事間違いなしである。
「凄まじい冷気だな……」
ルディアの隣でシルティオスが呟く。
「そうだろう? ボクのアヴは凄いだろう?」
「…………何でお前が誇らしげに言うんだ?」
ルディアの親馬鹿に呆れるシルティオスであった。
少ししてアヴラージュの冷気放出が終わったのか、『封冷結界』の中で吹き荒れる冷気が消えた。それを確認したルディアも、ずっと全力で強化・維持していた結界を解除する。
「おお、思った以上の……」
目の前に広がっていたのは、そこだけ極寒の地を切り取ったかのような光景だった。
地面も、魔獣も、空までも。全てが凍りついた世界。




