第21話 スキルについて
さて、俺達はアグニル王国の西門から外に出てきたわけだが、このままだとマズイ。
今、俺達がいるのは〝アーテシュアーブ〟という最南端の大陸だ。大陸には西の大国と東の大国があり、西の大国がアグニルで、東の大国が〝ヴァルネリ〟という共和大国だ。
で、このアーテシュアーブ大陸だが、アグニル王国の西側は行き止まりだ。
なので、別の国に行きたいなら、このまま北西に大陸を超えて〝ゲルドバード〟という大陸に行くか、東に進んでヴァルネリに行くか、だ。
短い方を選ぶならゲルドバード大陸に行くのが一番いいが……。
「この世界、まだインフラ設備とかがちゃんとしてなくってね。まだ、船は一方通行なんだよ」
飛行機などがないのは当たり前で、船で行き来出来る頻度も一日に数回程度で、なおかつかなりのお金がかかるそうだ。
しかも、アーテシュアーブ大陸とゲルドバード大陸の間にある海には凶暴な大海獣が潜んでおり、インフラの整備も今の人類文明ではほぼ不可能である。
「ヴァルネリ共和国に行くしかない、ってわけね」
「そういう事♪」
前世ではほぼ完璧にインフラ整備が完了していたので、こういう問題はなかったんだけどなぁ。
ま、それも異世界っぽくて楽しいが……。
「てか、道はわかるのか?」
「うーん、そうだね。アグニルは大陸に沿うように建国されているから、難しい……と思うじゃん?」
うん?
「もっと簡単な移動方法があるんだよね」
「どういう事だ?」
「前に、〝炎の谷〟に行った事があるだろう?」
「まあ、そうだが……」
って、おいおい、まさか……。
「まさかとは思うが、そこに転移しようってか?」
「その通り!」
嘘だろ、コイツ……。
シュトルツとリーベにも聞いてみたが、この世界で『空間転移』というレアスキルは、名の通りかなり希少……なのだが、シュトルツ達〝概念竜〟からしたら必須技術らしい。
俺の方が劣っているというのか……?
ぐぬぬ、納得いかん……。
それをダメ元で訴えてみようと思ったのだが、俺はもっといい事を思いついてしまった!
「それじゃあさ、暇なんだし、どうせすぐ移動出来るんだし、この機会に〝能力〟について色々と教えてくれよ」
この機会に勉強しておこう、ってね!
この世界で生き残るにはそういう事は必須だと思う。前に、魔法についても教えてもらったしね。
さて、ルディアの反応は……?
「うん、いいよ! 二人はどうする?」
よし!
また有意義な時間を過ごせそうだ。
でも、確かに二人はどうするんだろうな? もうそういう事に関して知り尽くしてそうな二人だ。話を聞いていたら暇なんじゃ?
「ふむ……そうだな。オレ達は先にヴァルネリに向かっておくとしよう」
「そうですわね。先に行って、待っていますわ。わたくし達も一応冒険許可証は持っていますから、適当に冒険者活動でもしていますわ」
そう言いながら、リーベはにこやかに微笑う。
いやはや、美しい人だよね。少しの間だけ見惚れてしまった。ほんと、少しだけ。
「うぐっ!?」
「ちょっと、アヴ」
ルディアに脇腹を肘で突かれた……。
なんでだよ!? ちょっと見惚れただけだろ!?
「ごめんて」
それはそれとしても、一応は謝っておこう。
「別に謝らなくたっていいのに。じゃ、二人とも、ちょっと長くなってしまうかもしれないけど、待っていてね」
「ああ」
「ええ、わかりましたわ」
それだけ交わして、二人は『転移』で消えてしまった。
本当、息をするようにスキルを使うものだ。
そして、ここからが大事。
まず聞いたのは、スキルの基本的な事について。
スキルは、大きく分けて三つある。
一、才能型。つまり、生まれ持ったスキルだ。俺の『衝撃吐息』がいい例かな。先天性のスキル。
二、努力型。名の通り、努力で手に入れたスキル。まぁ、努力せずとも手に入れる事があるが……要は、後天性のスキルって事だな。
そして三、譲渡型。他人から譲渡される事で手に入れるスキル。これは結構複雑で、契約によって譲渡する場合もある。契約によっては期限が決められていたり、譲渡されるのがスキルの一部の場合もある。分割されたもの、とか。なので、これが一番複雑だ。
次に、スキルの種類。これは全部で四つ程の種類に分けられる。
一、普遍能力。一番普遍的なスキルで、才能型が多い。
二、希少能力。特定の条件を満たす事で獲得出来る、より高位のスキル。努力型が多く、コモンスキルが成長・進化する事で獲得する事もある。
三、特異能力。コチラはレアスキルより更に上位のスキルで、ほぼ先天性の才能型が多い。その人によって能力も全く違って、名称が同じモノはあっても、全く同じ内容の能力は存在しないらしいな。
そして四、究極能力。コレはもう、人類にはあり得ないスキルだそうだ。ルディアやシュトルツ達も持っていないというので、当たり前である。説明してくれたルディア自身も〝知識として知っている〟程度の事らしい。
アルティマスキルは下位の能力とは本質的に〝格〟が違い、この世界の法則にすら容易に干渉可能な規模のモノだそうで、これを手に入れる事と世界の頂点の一角になる事はイコールで結べる、という程らしい。
「しかも、アルティマスキルに対抗出来るのはアルティマスキルだけ。ユニーク止まりのボク達じゃ、そんなのが現れたら為す術ないね」
と、ルディアは話を締めくくった。
ふむ……と、俺は考えてみる。が……。
「考えたって無駄だよ。まず、能力とか、通用しないし。あ、それとだね」
そして、ここで衝撃の事実が発覚する。
「キミはね、あのフィエットって娘からスキルを譲渡されているんだよ」
……という。
彼女が持っていたスキルというのが、『美貌』というユニークスキルだ。先天性のスキルで、なおかつ自身の容姿に影響を及ぼすタイプの珍しいスキル。
効果は、名の通りに美貌を持つ身体に産まれる、というものだ。ルディアによると、このスキルが及ぼす〝人ならざる魅力を秘めた美貌〟によって、村で迫害を受けていた……そうだ。
なんとも胸糞悪くなる話である。
ルディア曰く、ユニークスキル『美貌』とは、結構普遍的なユニークスキルだそうだ。人間の中にも一万人に一人ぐらいの割合で生まれるらしく、人間界で女優のようなものになっている人は大抵がそのスキルを所持している者らしい。
本来、いい意味を持つスキル。生まれた場所が、悪かっただけ。
それだけで、あんな事になってしまったのだ。
「他には、『解析』や『遠視』もあるね。これは後天性かな。まあ、スキルを獲得したって言っても、それがわかるわけもないし、わかりづらいよね」
この世界では、ゲームのようにスキルを獲得した瞬間からそれがわかる……なんて、便利な事はないらしい。ルディアが使う高度な『解析』ならわかるよう、だが……自認は難しいようだった。
色々と託されてばかりだ。
ちょっとスキルについて教えてもらおうと思っただけだったが、こんな重大な事実が判ってしまうとは……。
いや、これで良かった。多分、どうせ遅かれ早かれなのだ。早く背負い込めた分、これでいい。
「落ち着いた?」
「うん、落ち着いた。ちょっとしんみりしちまったし、早くヴァルネリに向かおう」
「思ったより時間かからなかったね」
俺はすっと立ち上がって、ルディアの転移発動を待つ。
やっぱスキルって難しいですね……。




