自分
中学生男子の痛い小説です。
小さい時から可愛いものが好きだった。人形とかハートとか。そういうものが好きだった。遊びも、鬼ごっことかよりおままごとで遊ぶことが多かった。小学生に上がる時親に「お母さん、僕これがいい。」そう言って水色のランドセルを持って行ったことがあった。しかし「これ、女の子用のランドセルでしょう?大輝は男の子なんだからこっちの黒の方がかっこよくて似合うとお母さん思うなぁ。」そう言って僕に黒いランドセルを背負わせ「うん!こっちの方が似合う!大輝かっこいいよ」そう言って喜んだ。結局ランドセルは黒のものを買った。小学校に上がったあとも僕は女の子と可愛いものの話で盛り上がったりしていた。しかし周りの男子からは「お前、男のくせに可愛いものが好きとか気持ち悪。」と罵倒された。話していた女子は庇ってくれたが、それでもいい気はしなかった。親からも「大輝は男の子なんだからもっと外で遊んだりしなさい。」と時々言われるようになった。小学校三年生の時に転校してから僕は自分の好きなものを周りに隠すようになった。その時を境に僕の周囲の環境は一変した。皆が僕を受け入れてくれた。前のような罵倒も聞かなくなった。親も「あんた前より良くなったんじゃない?」と安心したような声で言われたその時僕は思った。(こっちの方が望まれているんだな)と。中学に上がっても僕は自分のことを隠していた。ただ、やっぱり可愛いものは好きなままだった。学校の帰りにふとレディース服の売っている店に置いてあるワンピースが目に止まった。「いいなぁ。」無意識に口から言葉が零れていた。「へぇそういうの好きなんだ。」後ろから声がした。背筋の凍るような、そんな感覚が僕を襲った。恐る恐る後ろを振り返るとそこには近くの女子校の制服を身にまとった綺麗な人が僕を見ていた。
「いや、別に好きとか、そういう訳では無いんです。」そうぎこちなく僕は後ろにたっている女性に返した。「いや、別に隠すことは無いよ。」そう優しく言った女性の顔から嘘だと感じなかった。「でも、変じゃないですか。僕は男なのに、女性物の服とか、可愛いものが好きだとか」そう僕は言った。「そぉかな?私はそういうのいいと思うよ。誰が何を好きでもそれはその人の自由でしょ?」その言葉はとても真っ直ぐだった。その真っ直ぐな言葉に僕は少し驚いた。今まで変だと、そう言われてきた僕の好みをこの人は変ではないと、それもいいんだと肯定してくれた。いいんだろうか。隠さなくても。ずっと否定されてきたのに。心の中で葛藤していた。周囲に好まれる自分とありのままの自分が。「僕、ずっと隠してたんです。可愛いものが好きだとか、本当はこういう服を着てみたいとか、言ったら引かれるから、嫌われるから、」言ってしまった。今まで隠してたのに。こっちに来てやっとみんなの望む自分になったのに。「なにそれ、そんな理由で隠してたの?君の人生は君のものでしょ?それを周りのせいで好きなものを隠すとかおかしいと思う」こんなことを言われたのは初めてで思わず涙がこぼれそうになった。「私があなたを、可愛くしてあげる」彼女は突然そんなことを言った。「え?」思わず素っ頓狂な声が溢れてしまった。「今週末暇?」彼女がそう聞いてきたので「えぇ…まぁ暇ですけど...」と答えると「じゃあ昼過ぎにここの服屋の前集合ね」そう元気よく彼女がいい「んじゃよろしく〜」と言い走り去っていった。ぽかんと口を開いた僕だけがそこに取り残されていた。