狂気と目
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目が覚めると、私たちは山の奥に縄で繋がれて縛られていた。
私は梨沙を起こして状況を一緒に考えることにした。
「これ、どういうこと? 愛美が......もしかして愛美の両親が悪さをしているのかな......」梨沙が言った。
「わかんない。でも、愛美の両親が私たちを気絶させたし......関係しているのは確かだよね。でもどうして......」
いくら考えてもわからないので私たちは次第にそのことについて考えるのをやめ、どうやって脱出するかを考えるようにした。
縄は大木に結ばれており、人を縛るのに十分な硬さのもので、どれだけ動こうとも解けそうにはない。
自分たちの持ち物を確認したが、都合よくナイフなど持っているわけもなく、まさしく万事休すな状況だった。
それでも力の限り縄を解こうとしていると、こちらに近づいてくる複数の足音が聞こえた。
その足音はゆっくりとこちらに近づいて来て、やがて愛美とその両親が見えた。
愛美はまるで目が見えていないように両親に支えられてゆっくりとこちらに近づいている。
(愛美は目が見えるはずだ......一体どうして......?)私は強烈な違和感を感じた。
三人が私たちの目の前に着くと、愛美の父親は背負っていたカゴから手斧を取り出しそれを愛美の手に握らせた。
「愛美、この手斧で"三人"殺せ。そうすれば"ミツメ様"も許してくれる」と愛美の父親は愛美に向けて言った。
「三人......?」愛美が両親に聞いた。
「そうだ。だから俺か母さんか、どっちか殺してからこいつらの両方を殺せ」と愛美の父親は言った。
(私たちは、殺される......しかもあの父親、死ぬ事をためらっていないの......?)私はこの会話を聞いて恐怖を抱いた。
「わかった。それなら......」
愛美はそう言うと手斧を振りあげ、父親に向かって振り下ろした。
しかし、目が見えていないからなのか、それは一撃で絶命する傷にはいたらず、愛美は何度も何度もその手斧を振り下ろした。
血飛沫が飛び散り、鈍い音が鳴り響き続け、ついには愛美の父親はピクリとも動かず絶命した。
その光景は目を背けたくなるほど凄惨なものだった。
「あ......ああ......! ああああああああ!!」私の隣にいた梨沙はその光景に耐えられず、狂ったように叫んだ。
私も恐怖を堪えるので精一杯でそれをなだめたりは出来なかった。
すると、愛美は「うるさい!」と言って梨沙に向かって手斧を振り下ろした。しかし、それは奇跡的に横に逸れて木に突き刺さった。
梨沙は声も出せずただ震えていた。
愛美は手斧を強引に引っこ抜き、震える手でそれを強く握った。心なしか動悸も激しい。
「愛美、どうしてこんなことするの? 親に操られているの? それなら私たちが......」私は震える声で必死に呼びかけた。
愛美は私の声を遮り叫んだ。
「違う、違う、違う! 私は生贄を......お前らが......あれ、自分が......助かる、ために......」
愛美は突然動きを止めてボーッとし始めた。
「違うわよ愛美。これは仕方のないことなの。それに、元はと言えばこの子たちのせいで......」
再び愛美は声を遮るように叫んだ。
「うるさい、うるさい、うるさい! もう嫌だ!」
鈍い音と血飛沫が飛び散る。それは愛美の母からであった。
愛美が振るった手斧が愛美の母の頭に突き刺さっていたのだ。
傷口からは血が溢れ出て愛美の母は痙攣して膝から崩れ落ちた。
「なん、で......?」愛美の母は愛美がなぜ自分に手斧を振るったのかがわからず困惑していた。
「ああ、あはは、あはははははははははははははははははははははは! もう二人目だ! あと一人! そうだ、もう自分でいい!」
愛美は持っている手斧を頭に思い切りぶつけて私のすぐ横に力なく倒れた。
愛美の顔が二つに割れ血が流れ出る。あまりの凄惨さに私は吐いてしまった──
あれから数十分は経っただろう。それでも目の前で起きた衝撃に私たちは放心状態となっていた。
辺りにはいくつも血溜まりが出来ていて、鉄の匂いが蔓延している。
私は愛美の持っていた手斧を手に取り縄を切った。
そして私は梨沙を連れて血まみれの服で下山を始めた。
梨沙はずっと泣いていて私もずっと無言だった。そんな時梨沙が突然口を開いて言った。
「愛美は......元はと言えば私たちのせいって言ってた。私たちってそんなに殺されるほど憎まれることした......?」
「......それは私もわからない。愛美も正気を失っている感じだったし、生贄とかミツメ様がどうとか変なことも言ってたし」私は言った。
「もうさ、これって恵子の呪いなんだよ。恵子はみんなを殺す気なんだよ!」
「待って、恵子はそんなやつじゃ無かったでしょ......?」
「いや違う。全部恵子のせいだよ。恵子が現れてから急にこんな......」梨沙は嘆くように言った。
「......なら、手分けをしない?」と私は梨沙に提案をすることにした。
「恵子の家に行くか、愛美の言ってたミツメ様について調べるか......どっちかに分かれよう。梨沙はどっちがいい?」私は梨沙に言った。
「......なら、私はミツメ様について調べに行く」梨沙は言った。
そして、私は服を着替えてから恵子の家に向かった──
私が恵子の家に着くと、恵子の父が農作業をしていたので声をかけた。
それから日陰に移動して話をすることになった。
「久しぶりだね。都会で何かあったのかい?」
「......実は、恵子の霊を見たんです」
「......」恵子の父は驚いた様子で瞳孔が開いたように見えた。
「そうか、恵子が......」恵子の父は少し動揺したように見え、変な汗が出ていた。
「......恵子が現れたのは未練があるからだと思うんですが。だから、教えてください。六年前、恵子に何があったんですか?」
私がそう言うと恵子の父は黙り込んだ。
「今でも信じられないんです。あの恵子が自殺だなんて......」
私がそう言うと恵子の父は思わず口が開いたように言った。
「私も信じられないよ。恵子が自殺だなんて......」
「......本当に、自殺なんですか?」
「そうだ。この目で見たから間違えない」恵子の父ははっきりと言った。
それから恵子の父は六年前のことを話してくれた。
六年前、恵子は突然学校を休みようになり自分の部屋から出てこなくなった。
そんな日が一週間ほど続き、恵子の父は痺れを切らして恵子の部屋を強引に開き、その瞬間戦慄した。
恵子はハサミで首を掻き切っており、床には生暖かい血が流れ出ていた。
恵子の父は恵子に駆け寄ったが既に息はなかった。そして気づいた。
恵子は自分の目を抉り取っていた──
「あの光景は今でも忘れられない。遺書も無く本当に唐突な出来事で理解が追いつかなかったよ」恵子の父は語った。
「......」
「知っての通り、妻はあれ以来うつ病になってしまうし、私もあれがトラウマになってしまったよ......本当に、どうして恵子は......」恵子の父は嘆きと後悔のこもった声で言った。
「すいません。そんなこと聞いてしまって」
「......恵子の死は自殺。これは間違いない。出来れば、もう聞かないでくれ」恵子の父は少し怒気を含んだ声で言った。
「はい......」
──そして、日も暮れてきて梨沙と合流する時間になった。
私たちは再びミツメ様の石像に集まることにしていたので私はそこで待っていた。
しばらく待っていると古びた本を手に持った梨沙が晴れやかな顔でやって来た──
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