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45・婚活は成功したと言えます。ご。

 キアラは不安そうな表情を浮かべるアルヴァトロにもう一度にこりと笑んで、ターナ様からもらった話し合うべきことの紙をポケットから取り出す。侍女仕事を終えて着替えていないので侍女服のままなのだがポケットが大きめに作られているので、紙をもらっても余裕で仕舞えるのでキアラはこの侍女服は好きだ。さておき。


「ええと、この紙は……?」


 取り出されて広げられて渡されたアルヴァトロ。受け取ったものの分からずに首を傾げる。


「これ、ターナ様にアルヴァトロさんから求婚されたことをご相談し、お受けすると話したら。このように色々と話し合うことがあるわ、と教えてくれたのです。ということで。アルヴァトロさん、先ずは恋人でも婚約者でも、兎に角結婚を前提とした関係を築いて、たくさん結婚に向けて話し合いをしませんか? 私、侍女仕事を辞める気はないですし」


 仕事を辞めません宣言を受けたアルヴァトロは、そのスッキリした笑顔に一瞬見惚れてからハッと我に返る。


「た、確かに。キアラが仕事を続ける、続けないとか。子どもを産む、産まないとか。なにも話し合っていなかったですね」


 アルヴァトロは何も話し合わずに求婚したことに気づいて、己の失態に肩を竦める。

 そして改めて渡された紙を見てみることに。


「キアラが望むのだから仕事は続けてもらうにしても、子どもを産むとしたらその間はどうするのか。なるほど。抑々住む場所はどうする……そうでしたね、私もキアラも独身寮でした。話し合う必要がありますよね……生活費をどうするのか。今の私は自分とキアラと二人で暮らしていくだけの給金は貰えてますが子どもが欲しくなったら無理ですね……。それから……」


 紙を見ながらブツブツと自分の状況を省みるアルヴァトロ。その姿を見て、キアラはこの人となら長く暮らしていけるかもしれない、と思う。


「まぁ気長にいきましょう、アルヴァトロさん。十年くらい話し合っても構わないわけですし」


「それはさすがに長過ぎませんか。私はその半分くらいで話し合いを終えたいです」


「そうなれるようにたくさん話し合いましょうね」


 キアラに笑顔で言われてアルヴァトロも頷く。まだまだ二人の関係は始まったばかり。


「ところで、アルヴァトロさん、気になってたことがあったんです」


 キアラはこの庭園に来て、初めて出会った時のことを思い出して気になったことを尋ねることに。


「なにか」


「私と初めて会った時、私は王妃殿下の部屋付き侍女という話と、後は自分の給金でお菓子を買うとかそれくらいしか話してなかったですよね。それでどうして私との婚活を続けることにしたのでしょう」


 そう、最初はそれしか話をしなかった。それだけなのに何が気に入られたのかさっぱり分からず、続行になった。

 アルヴァトロはどんな気持ちで続行にしたのだろうか。

 もちろん、続行してくれたから今は結婚を前提とした付き合いをすることになったけれど、それでもどうしても不思議で仕方ない。


「ああ、それは。自分の給金だから何を買っても良いとは思うのですが。散財するような買い方をする女性なのかどうか、という見方をしてまして。すみません」


「それは、アルヴァトロさんの事情を聞けば、そう考えても仕方ないですよね」


「そう言ってくれてありがとう。だから、給金でお菓子を買うというところがなんだか良いな、と思ったのです。それに。妹も欲しい物を聞くと菓子が良いといつも強請るので……なんだか妹みたいだな、とも思ったもので。それで」


 つまり、最初はアルヴァトロの妹と同列の感情を抱かれていたようだ、とキアラは判断する。まぁ今は一人の女性として見てもらえているのなら、それで構わないのだろう。


「そうなのですね。でもアルヴァトロさんが続行してくれたから今があるから、それで良かったのかもしれません。今は一人の女性として見てもらえているのでしょうし」


「もちろん! キアラが妹のように思えたけれど、今はそんな風に見てないから! そりゃキアラは可愛いけど一人の女性だと認識してる!」


 焦るアルヴァトロにクスクスとキアラは笑って、ふともう一つ気になったことを尋ねる。


「そういえば、アルヴァトロさんって何歳?」


「キアラより歳上だと思うよ。二十五歳」


「……私より三歳歳下よ」


「えっ! キアラはまだ二十歳くらいかと思ってたよ! 落ち着いてるなって勝手に……」


「見た目年齢と実年齢は違うからね……」


 アルヴァトロは、キアラの年齢を聞いて実は歳上だったことを知り……でもまぁそれで気持ちが変わるわけではないから、いっか、と切り替えた。


「歳上でも歳下でもキアラがいいからまぁいっか」


「じゃあこれからもよろしくね」


 二人、顔を見合わせて。

 改めて渡された紙を元に話し合いを重ねて。

 ーー結婚が出来るのは、果たして何年後か。それは神のみぞ知る。



(了)

お読みいただきまして、ありがとうございました。


本作は【転生をお願いされてお見合いババァを命じられました〜え、めんどくさい〜】というタイトルの作品のスピンオフです。

ターナのお仕事はこんな感じ、というのを書いてみたくて書き出した作品。

ですので、婚活した二人が成立したところで完結しました。

楽しんでいただけたら幸いです。

また、何かの作品で。

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