44・婚活は成功したと言えます。よん。
すみません。
「二人の婚活相手様・さん。」にてアルヴァトロが伯爵家の五男という設定になってました。
正しくは侯爵家の長男です。訂正してあります。
お詫び申し上げます。
その日は仕事終わりだったのでその足で直ぐにアルヴァトロの元に向かうキアラ。騎士団の詰め所で面会を申し込むと少し待てば会えると受付の騎士に言われたのでそのまま待つことにした。
一時間程待っただろうか。その間にターナ様から指摘された問題点が書かれた紙を見直して気持ちを落ち着けていたのであっという間だった。面会する用の部屋にて急いたノック音と共にアルヴァトロが入室してくる。
「キアラ嬢」
「アルヴァトロさん、お待たせしました。お返事に参りました。お時間はありますか」
焦ったようなアルヴァトロの表情は、きっと話を聞いて急いで来たに違いない。それがなんだか嬉しく思える。自然と綻ぶような笑みでアルヴァトロを見たキアラ。アルヴァトロは眩しいものを見たように目を細めてキアラの言葉にハッとする。
「あ、すみません。訓練後なので汗臭いかと思います。着替えて来ますからもう少しだけお待ちください。そうしたら外出許可をもらって来ますから」
アルヴァトロの言葉にやんわりと首を振って否定する。
「いえ。今から外出許可を得るのはさすがに私も難しいので、初めてお会いした一般向けに開放されている庭園でお話しませんか」
一応城内であることから休憩時間に休むようなもので外出許可までは必要無いことからの提案。
「分かりました。では、直ぐに着替えて来ます」
少し表情を引き締めたアルヴァトロは、キアラにここで待つよう頼んで直ぐに着替えに行った。シャワーを浴びてさっぱりして速やかに着替えたアルヴァトロが戻って来たのは待っていた時間の三分の一にも満たないような時間だった。
アルヴァトロにエスコートされてキアラは騎士団を後にする。
不意にこの人にこのようにエスコートされるのは何度目だろうか、と考え。最初は戸惑っていたのに今ではエスコートされることに戸惑いも無いことに驚く。
知り合い仲を深めてきた時間は決して長くないのにそれだけ濃い付き合いをしてきた証なのかもしれない。ややして庭園へと辿り着いた二人。
キアラはここから始まったことを思い返して懐かしい気分になった。
「アルヴァトロさん」
「はい」
「少し話を聞いてもらえますか」
キアラが声を掛けると緊張した面持ちのアルヴァトロがキアラを見る。その緊張の意味が理解出来ていても、この庭園で起きたことを先ず話しておしたかった。アルヴァトロがどうぞ、と促すので一つ息をついてキアラは口を開く。
「ちょうど……この場でした。婚約を無かったことにしてくれ、破棄してくれ、と言われたのは。この庭園に恋人らしき女性と仲睦まじく寄り添って歩く姿を見かけたことがありましたし、あまりにも頻繁に目撃されていたらしく侍女仲間で噂にもなっていたほどだったので、婚約破棄の申し入れをされた時は、とうとう来たか、という気持ちと……今まで私の存在を忘れていたわよね、という呆れた気持ちで聞いてました。それでもその話をされるまでは、幼馴染としての情くらいあったんですよ。でも、話し合いにもならない一方的な申し入れに、幼馴染という関係すら無いものとして考えているのかな、と思うくらい自分勝手で。それで幼馴染としての情もほとんど消えました。……薄情ですかね」
「いや、そんなことはないよ。一方的で相手の気持ちを思いやれないような奴に情が無くなっても仕方ないと思う。……この場所、辛い?」
キアラの話にアルヴァトロは心配そうに見てくるから首を振る。
「いいえ。辛いことは無いです。でも。婚約を解消して親や親戚を安心させたくて婚活を始めた私に、ターナ様がアルヴァトロさんを紹介してくれて。そしてこの場に来た。これでアルヴァトロさんと上手くいかなかったら、良い場所にはならなかったかもしれないですけど。上手くいっている今は、良い場所だと思ってます」
キアラはにこりとアルヴァトロに笑いかける。アルヴァトロはその言葉の意味を把握して目を見開いた。
「それって……」
「お待たせしてすみませんでした。まだ間に合うのならアルヴァトロさんの求婚をお受けしたいと思います」
アルヴァトロと向き合ってハッキリと告げる。
「本当に?」
「はい。よろしくお願いします」
確認にキアラは頭を下げて受け入れの意思を表示する。
次の瞬間、アルヴァトロがキアラの両手をガシッと掴んだ。
「良かった! ありがとう。ありがとうキアラ嬢」
「キアラと呼んでください」
「ありがとう、キアラ。これからよろしく」
「はい。……ですが」
アルヴァトロの顔面偏差値で満面の笑みを見せられたキアラは、恥ずかしくなるが、それに流されるわけにはいかない、と気を引き締める。途端にアルヴァトロがえっ……と不安そうに目を揺らした。
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