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25・元婚約者の現在・に。

「キアラ嬢は乗りたいですか」


「人力車に? 乗ってみたいですけど今日じゃなくてもいいです」


 というか、さすがに今日は遠慮する。


「では、少し遠くから見てみますか」


「そうですね。どんな乗り物か知りたいですし」


 そんなわけで再び二人は広場へ歩き出す。人気らしく、乗りたいと言えば直ぐに乗れるわけでもないらしい。乗りたい人が多くて一時間くらい待つことが普通だとか。それを聞いたキアラは、もう少し人気が落ち着いてからにしよう、と決める。

 そんなわけで本日は乗り物待ちをしている大人や子どもから少し離れて人力車を見ることに。


「……なんていうか、ソファーに車輪がついたような形、ですか?」


 遠目から見た人力車をキアラはそんな風に思う。それになんだか分からないがソファーの前に棒が付いている。なんだろう? と思う間もなくマルトルが見えて……あの格好はなんだろう? 分からないが前掛けみたいなのをつけて脚が見えている姿のマルトルがソファーに座った子どもを確認して枠のように付いている棒の中に身体を入れたと思ったら、その棒を持って歩き出した。歩き出すマルトルに合わせて車輪が回り出して……なるほど、人の力で動く車だから人力車というのか、とキアラは納得出来た。あの棒は車輪の付いたソファーを引っ張るために付けられているのだろう。


「ソファーに車輪が付いている、と言われるとそうですよね。多分皆さんがそう思っているでしょう」


 アルヴァトロがキアラの表現に頷く。……いや、そういう風にしか見えないのだから誰もが納得する表現。ちなみにマルトルのあの姿は俥夫の正しい姿なのだとアルヴァトロが説明する。アーセスもあの格好をしたし、アルヴァトロもあの格好に着替えて俥夫をするのだとか。

 ああだから、アーセス様の足が見えた、と騒がれていたのね……とキアラは納得した。

 それにしても。馬車とは違い景色が良く見える人力車は気持ち良さそうだな、とキアラは思う。それに馬ほど早く走ることが無いからあまり遠くには行けないだろうけれど、のんびりと王都観光をするのなら楽しいかもしれない、とも。

 前世持ちのターナ様の発案らしいけれど、他にも前世持ちの人達はたくさん居るはずなのに誰もこの人力車を造ろうと思わなかったのかしら、とキアラはぼんやり考えながら見ていると、俥夫であるマルトルと視線がぶつかった。

 ……あ、気付かれたわね。

 キアラは肩を竦めた。

 遠くから見ているつもりだったがマルトルが人力車を牽いて近づいて来たので視界に入ったことにキアラも気づいた。会釈だけして立ち去ろうとアルヴァトロを見たのだけれど。


「キアラか。なんだ人力車を見に来たのか?」


 子どもを乗せているのに、子どもの方に意識を向けないでキアラの方に意識を向けてきたマルトルから声をかけられた。

 キアラとしてはまさか声を掛けてくるとは思ってもいなかったので、咄嗟に子どものことが心配になる。初めて見た、乗った人力車が安全かどうか、子どもが不安になるのではないか、と。


「マルトル、子どもをきちんと下ろして安全を確保してからにしろ」


 キアラの不安はアルヴァトロの不安でもあったのだろう、キアラが口にするよりも早く、アルヴァトロが注意を促した。


「お、なんだ、アルヴァトロ。来てたのか!」


 キアラの隣に居ることは偶然とでも思っているのか、マルトルはそんなことを呑気に言う。とはいえアルヴァトロに注意をされたことでマルトルは無事に子どもを無事に人力車から下ろしたので、キアラもアルヴァトロも安心した。

 同時にこの場を離れようと二人が思うより早く、アーセスほどではなくても整った顔立ちと背が高くて騎士としてそこそこに有名なアルヴァトロの存在に気づいた若い女性たちに、アルヴァトロが囲まれてしまったので離れることが出来なくなった。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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