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22・再びのデート。よん。

「……キアラ嬢」


「なにか」


「一日かけてこの植物園を見て歩くのも良いかもしれないと思っていましたが、ランチタイムを終えたらあなたの要望を聞かせてください」


 なんだか意を決したような固い表情でキアラを呼びかけたアルヴァトロに、キアラも同じく固い表情で応えたら、こんなことを言われた。


「私は一日植物園で良いですが」


 要望と言われても特に無い。


「そうですか……。併し何かあるかもしれませんから、取り敢えず先ずはランチタイムにしましょう」


 ーーいや、本当に何の要望も無いのだけれど。

 キアラはそう思いながらアルヴァトロのエスコートで植物園を出ることになった。

 植物園内には高いけれどレストランが併設されているのでそこを利用すれば植物園を出ることが無い。一度出てしまえば午後からまた観たいと言っても、入場料を払うことになる。

 なんでも前世持ちの人の考えで、ランチタイムのためにレストランが併設されるのと同時に、一回だけ入場料を支払ったら出たり入ったりが繰り返される可能性もあるから、と再び入場するなら入場料を改めて支払う事にしてもらったのだとか。

 これで貴重な植物が盗まれる可能性を低くしたのだそうで。

 だからキアラとアルヴァトロが戻って来る時は再び入場料を支払う事になる。今のところ、キアラの要望は無いので戻って来ることになりそう、とキアラは思った。


「どちらに行きますか」


 アルヴァトロのエスコートに合わせて歩くのは構わないが辻馬車乗り場に向かってないことからキアラは尋ねた。


「ああ話してなくてすみません。少し歩きますが美味いパン屋があるんです。それも植物園の職員さんに聞いて行ってみたら美味くて。そのお店の中で食べられるんです。どうですか」


「そうなのですね! 楽しみです」


「店内で食べる時だけは、ミルク・コーヒー・紅茶の三つから飲み物を選べます。これは追加料金を支払いますが通常の喫茶店で支払う一杯より安い金額なんです」


「へぇ。一杯より安く飲み物が飲めるなんて凄いですね」


 アルヴァトロはそこのパン屋で売られているガーリックバゲットとマスタードたっぷりのチキンサンドが気に入りなのだと言う。ただ店の一番人気はクロワッサンだからキアラにはクロワッサンを勧めてきた。キアラも勧められてその気になる。

 そうして案内された店は植物園の入り口から結構離れているので職員或いは昔からこの辺りに住んでいる人くらいしか買いに来ないのではないか、とキアラは思った。もちろん実際にはそんなことは無いだろう。ただ入り口から離れていることで植物園に初めて来た人では気づき難いだろう位置に店があったので、そんな予想をしただけだった。


「落ち着いた内装の店内ですね。外観も、ですけれど」


「私もそう思う。だから騎士の職務が休みで自主訓練を終えたらここでバゲットやサンドを食べてから植物園に入ることもある。他の予定がない時だけれども」


 アルヴァトロの休日が垣間見えた気がしてキアラはまた一つ、アルヴァトロのことが知れて楽しくなった。

 アルヴァトロはいつも食べているガーリックバゲットとマスタードたっぷりチキンサンドとコーヒーを頼む。キアラは勧められたクロワッサンと食べやすそうな大きさのアップルパイと紅茶を頼んだ。

 先払いの店が多く、ここも同じく先払い。

 支払いはアルヴァトロが別々で頼んだけれど、そのことにキアラ自身はやっぱり婚活相手で有っても婚約者や恋人というような関係ではないので奢ってもらう気にはなれなかったので、何とも思わなかった。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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