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19・再びのデート。いち。

 キアラがターナ様に報告を終えてから二十三日後に、ターナ様からの手紙を預かった、とターナ様の侍女さんがキアラの休憩時間に訪って来た。大体使用人の休憩場所は決められているので見当が付きやすいのだろう。手紙にはアルヴァトロとの見合いを続けるか別の相手を紹介するか、と尋ねられてあり、アルヴァトロともう少し関係を深めるのであれば次に会う日を決めたい、とアルヴァトロから要望を受けた、と綴られていた。

 キアラはアルヴァトロのことをもう少し知りたいので他の方の紹介は無しで、とターナ様に伝言を頼む。すると次はターナ様が間に入るのではなく互いに手紙で連絡を取り合って日程を決めていい、とターナ様から言い遣っている、と侍女さんが言った。という事は、キアラから騎士団の詰所に連絡を取る必要があるということか、とキアラは納得して侍女さんから報告は必ずするように、と忠告を受けた。仕事終わりに騎士団の詰所に寄ってアルヴァトロ宛の手紙を新人らしい騎士に託した。


「こんにちは、アルヴァトロさん」


「ああ」


 とんとん拍子に次の約束が決まってキアラはアルヴァトロと再び騎士団に近い門の前で待ち合わせていた。


「今日は、植物園へ行こうかと思うが、どうだろうか」


 挨拶もそこそこにキアラはアルヴァトロから行きたい場所を指定されたので頷く。


「ぜひ。私も随分と行ってませんから嬉しいです」


 キアラが嬉しくて笑顔で了承すれば、アルヴァトロはまた驚いた表情を見せた。何が驚くことなのか分からないけれど、言いたくないことを無理に聞き出す気にはなれないので見なかった事にしておく。

 植物園は王都郊外にあって全てを見たことのないキアラは噂でしか知らないが、植物園全体は一日歩いても全部を回り切れないらしい。キアラが見たことがあるのは植物園の一部分だけだった。珍しい異国の花を観に行くという王妃殿下のお伴で、なのでそのエリアしか知らないのである。


「行ったことがあるならあまり楽しめないのではないのか」


 キアラはアルヴァトロに言われて首を振る。王妃殿下のお伴をしたのは数年前であるし公務でもあったから話せないことじゃない。


「王妃殿下のお伴で一度見に行っただけですから」


「なるほど。では構わないか」


 再度の確認にキアラは頷いて、王城から少し離れたところにある辻馬車の乗り合い所から二人で辻馬車に乗って植物園を目指した。

 辻馬車の運賃は平民も乗るのであまり高くない。植物園の入園料も平民から見てもお手頃価格、というやつだ。

 キアラが聞いたのはこういったデートの場合、男性が支払いを持つというもの。

 例えば辻馬車の運賃然り植物園の入場料然り。カフェに行けばカフェの支払い、買い物ならばその店への支払い。

 キアラ自身としては侍女の職務についてから頂く給金がそれなりに良いので何から何まで男性に支払ってもらう、というのは気が進まないが侍女仲間や友人の話では婚約者や恋人に支払ってもらうのは常識だ、とのこと。

 果たして本当に常識なのか、元の婚約者がアレで婚約解消する前の何年かは殆ど交流していなかったキアラとしては甚だ疑問ではあるが、誰、とは言わないもののターナ様の婚活に登録したことは親しい人には話してあって、その話からデートの際には男性に如何に支払ってもらうのか、というのも女性の腕の見せ所だと訳の分からないアドバイスまでもらって、本日を迎えていた。


 ーーでもねぇ、婚約者でも恋人でも無いお相手に支払ってもらうってやっぱり気乗りしないのよね。男性に支払ってもらってこそ女性の価値が分かるとか言うけど、本当にそうなのかしら。


 キアラは半信半疑のまま、アルヴァトロはどうするのか様子を見ることにしたのだが、辻馬車の運賃も植物園の入場料も当然支払われることは無かったし、支払いましょうかという申し出も無く、彼は自分の分しか出さなかった。

 期待していたわけでは無かったので、キアラとしてはまぁそうよね、としか思ってなかったのだけれど、どちらもキアラが支払ってから視線を感じてそちらを見ればアルヴァトロがジッとキアラを見ていて。首を傾げて何か言いたいことがあるのだろうかと見返してみれば、アルヴァトロはちょっと困惑したような顔を見せてから、キアラをエスコートするべく手を差し出した。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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