18・1度目の報告。に。
「ええと、そういった意味でのトラブルは特に無いですね。ただ」
キアラは何と言ったものか、と頭を悩ませながら言葉を探す。
「ただ」
ターナ様がキアラの言葉の続きを待っていることでキアラは思ったことを正直に口にする事にした。
「ただ。アルヴァトロさんは、女性とお付き合いするのが苦手なのか、或いは別の要因があるのか、そう感じました」
キアラの勘、みたいなもので漠然とした表現なのにターナ様はふむ、と頷いた。
「それはどうしてそのように?」
「私の行きたい所に行きましょう、と仰ってもらいましたからウィンドウショッピングをしたのです。新作や流行の品などを侍女としても個人的にも知りたくて。アルヴァトロさんは表情を曇らせながら了承してくれました。その時から気にはなっていたのですけれど、その後、彼方此方の装飾品店やドレス店に流行りの菓子店など行ったのですが。彼は無意識なのか、どのお店に入るのも躊躇い表情を曇らせたので」
「なるほどね。それはずっと続いていた?」
「表情が曇ることですか? いいえ。入る前は曇らせても店を出る時は別に」
ターナ様は紙にキアラの報告を書き留めていく。参考になるのか分からないけれど、率直にキアラは報告していた。
「他には何かありました?」
「そう、ですね。……ああ、最後に私がよく行くカフェに行ったのですが。なんだか私の言葉に驚く要素があったのか驚いていましたね」
「どんな言葉に?」
改めて尋ねられてキアラは先日のデートの様子を思い出す。
「私がお付き合いくださってありがとう、と礼を述べて。そのお礼として支払いは私が持つから好きな物をどうぞ、というようなことを言ったことです」
ターナ様は紙に書き留めていた手を一度止めてキアラの顔をマジマジと見てから、不意に柔らかく笑った。その笑顔が可愛くて優しくて、キアラはドキッとしてしまう。
「そう。そのようなことが」
「ええ、それと注文した後で、食べたい物はありますか、と尋ねて。サンドウィッチをお勧めしてみた時も驚いていましたね」
「……そう、ですか。もしかしたら女性にお勧めをされたことが初めてだったのかもしれませんね」
キアラの報告にターナ様がそんなことを仰る。キアラはなるほど、と納得した。この店のコレがお勧めですよ、なんて店員でも無いのに言われたら驚くかもしれない、と。
「その他に何かありました?」
改めて問われると特に思い浮かぶこともない。デート内容は可もなく不可もない、というものだし。最初のデートとしては問題なく終わった、といったところだし。
キアラは「いいえ」と首を振った。
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