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12・婚活相手とデート?さん。

 その後は特に何かを尋ねられることも無かったキアラがアルヴァトロに何かを尋ねようとするより早く。


「取り敢えず本日はここまででよろしいですか。用事がありますので」


 などとアルヴァトロに言われてしまえば、一瞬戸惑ったものの「わかりました。ありがとうございました」 と頷く。

 四阿(あずまや)を出れば少し先でターナ様がこちらを見ている様子に心配してもらっているのだろう、とキアラは気づいた。

 スタスタと歩いて行くアルヴァトロの背を見ながら一定の距離を置いてキアラはターナ様の元まで戻る。きっとこの人とも縁が無かったのだろう、と思っていたキアラだったが。


「システィアーナ様」


「なんですか、アルヴァトロさん」


「キアラ嬢とのお見合い、続けたいと思います」


「わかりました。では、次にお会いする日をお互いに決めてください。次からは私は立ち会いません。ですが報告はしてくださいね」


「わかりました。私はこれで」


 縁が無いと思っていたのに、キアラの耳にはアルヴァトロの見合い続行という言葉が届いて唖然としてしまった。キアラが口を挟む間もなく、アルヴァトロから十二日後なら午後が空いてます。と言われて、何も考える間もなくキアラは引き込まれるように頷いてしまった。キアラが頷いたのを確認したアルヴァトロが去って行くのを呆然と見送って、ターナ様に声をかけられてようやく我に返る。


「キアラさん? どうかしました? アルヴァトロさんとは合わないと思いましたか?」


 柔らかく問われてキアラはターナ様を見る。

 ターナ様の笑顔が母親のように見えて、慈愛の笑みとはこういうことをいうのかもしれない、と思いながら。キアラは心細い気持ちでターナ様に縋ることにした。


「あ、あの」


「はい」


「アルヴァトロさんと殆ど話してないのに、私、縁が無いと思っていたのに、なんで見合い続行という話になってしまっているのでしょうか」


 キアラの困ったような顔を見たターナ様は、ふむと一つ頷いてからキアラを誘った。


「私の執務室でお茶とお菓子をいかがですか」


 その誘いを断るという選択肢は、キアラには存在しておらず、一も二もなく頷く。

 そうしてターナ様の執務室にてキアラはターナ様付きの侍女さんが淹れてくれたお茶を飲んで気持ちを落ち着けた。……お茶はとても美味しくて後で茶葉や淹れ方を聞いてみようと心に留めつつ、クッキーを口の中に放り込んでから、先程のアルヴァトロとの話の内容を聞かせた。


「……ということだけです」


「ん? ええと、それだけ?」


「はい。それだけの会話です。それでどうして見合い続行になったのか、全く分からなくて。どうしてだと思いますか」


 キアラの話を聞いたターナ様も少し困惑気味である。それはそうだ。それしか……つまり流行モノについての会話以外していないのに、見合い続行になったのだから。ターナ様も困惑するというもの。


「多分だけど……あなたが侍女の仕事の一環として流行の物に興味はあることと、お菓子を自分でご褒美に購入することが、気に入った点なのだと思う」


 というか、それ以外の会話が無いのだから、ターナ様はそう言うしかないよね、とキアラも思う。自分でもそんなアドバイスしか出来ない。そう考えればターナ様に縋ったのは無謀だったな。ターナ様も困るだけ、とはキアラ自身が思った。

 兎にも角にも、アルヴァトロは見合い続行を決断して、キアラも勢いに押されたとはいえ、次の約束をしてしまったからには、十二日後に会うしかないだろう。落ち合う場所を決めていなかったことに気づいたキアラの元に翌日、ターナ様付きの侍女さん経由で落ち合う場所が書かれた、本当に見合い続行する気があるのか問いたいくらい、素っ気ないと思えるようなシンプルなメッセージカードが届くことになって、余計に行かない選択肢は無くなってしまった。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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