10・婚活相手とデート?いち。
結局その日は遠くから見かけただけで帰る事にしたキアラ。アーセス様が気を利かせて呼ぼうとしていたのを断って。少々深刻な顔をしたキアラに気づいたターナ様がまた今度紹介するの、とアーセス様に告げて別れ。その後ターナ様のお仕事部屋に戻った時に、不安なことを教えて欲しいと真剣に問われて、キアラは気になったことを告げた。
「その、だいぶモテるようでしたから浮気するような方ならばお断りをしようか、と」
「ああなるほどね。……浮気、は無いと思うわ。それに女性側から彼を断ることが多いのよ。だから会ってみて合わないと思ったら遠慮なく断っていいのよ」
キアラの心配ごとに頷き多分浮気しないだろう、と断言は避けつつも、浮気そのものについては否定的。
けれど。女性が断る側と聞いたキアラは、外見やそれなりに高給取りのはずの城の騎士であることを踏まえても、断られるような男性であることに、別の不安を抱える。それって性格か何かに問題があるんじゃないか、と。
それを尋ねたらターナ様は先入観を与えたくないから、と言葉を濁した。……やっぱり問題がある人なんじゃないですか、とキアラは肩を落とした。
とはいえ、合わなければ他の人を紹介するとも言われたし、きちんと会ってないのにただの勘だけで断るというのは、人の顔を見て断ってきた、あのイケスカナイ無能の文官と同じ気がしてそれもしたくない。
そんなわけで、きちんと紹介する日、に会うことをキアラは決めた。
「改めて紹介しますね。こちらキアラさん。城で侍女をされているわ」
オレンジの髪と近づくともっと濃い色の肌をしているアルヴァトロを見て、日焼けでは無いのかもしれない、とキアラは思う。そして近くで見てまるで彫刻のように顔のパーツ一つ一つがくっきりと凹凸を示している。この顔立ちもこの国では見ない。でも印象に残っているのは、鮮やかなエメラルド色の目で。
この顔立ちにこの目では女性が放って置かないだろう、とキアラは納得する。
ただ、なんていうか視線は居心地が悪い。彫刻めいた顔立ちでエメラルド色をした目の前の男は、観察対象のように静かにキアラを見ている。それがひどく居心地の悪さを与えた。
「アルヴァトロさん。キアラさんをそんなにジッと見るのは失礼よ。キアラさん、こちらのアルヴァトロさんは騎士をしているわ」
互いの紹介を終えたターナ様が王城内の一般開放向けの庭園の隣にある四阿を押さえてあるから、そこでお茶をしながら互いのことを話してみたら……と告げて来る。その四阿は庭園を通らなくては行けないからちょっとしたデートになるわね、とターナ様は朗らかに後押しをしてくれたが。
キアラとしては、少し前に元婚約者に別れを告げられた場所なのだが、と少し胸がチクリと痛んだ。別にマルトルのことは好きでは無かったけれど、それまでは幼馴染としてそれなりに付き合ってきたのだから、多少、情はあるのかもしれない。
でもターナ様にはその辺のことは話してないのだから、とキアラはアルヴァトロを見上げてどうしますか? と問う。アルヴァトロは行きましょう、と静かに答えたが、その聞こえてきた声までも低く耳触りの良いもので、この声も女性たちから憧れられるのだろうなと、なんだか感心した。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
キアラを含めた皆はヨーロッパ系の顔立ち。アルヴァトロはアフリカ系の顔立ち。……のような感覚で書いてます。(ゆるふわ設定です)