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夜暮れに語る怪異奇譚  作者: たんぽぽ3号


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17/19

作戦会議



朝の眠気を噛み締めながらバスに揺られる。

相変わらずの充実した朝を過ごしてどうやって今日を乗り越えようか考えていると、気づいたらヨルが横に座っていた。



【・・・なぁ主。主は琴音の事をどう思う?】


「え?ど、どどどどど、どうって?」


【動揺しすぎじゃ、うつけ。割と真面目な話じゃ。】



恋バナかと思って適当にはぐらかそうとしたがヨルから真剣な目で返されたので俺も真面目に返すことにする。



「・・・正直、危ういだろうな。今は療養しといたほうがいいとは思うが、このままこの生活を続けていいのかは甚だ疑問だ。」


【理解しておるのなら良い。主の優しさに甘え続ければ琴音は好きとか色事の感情ではなく依存してしまう危険性が高い。もし主が責任を取るなら話は別じゃが、下手に優しくし続けると自立できなくなるぞ?】



俺はバスの窓枠に肘をつきながらため息をつく。

ヨルの言っていることはもっともで俺が一番心配していることだ。


今彼女は居場所がない、その借宿として俺達がいるが、それに甘んじてしまえば抜け出せなくなってしまう可能性が高いのだ。

勿論だからといって捨てる気はないが、彼女にはこれから長い人生がある。それなのに地下の一室からただのアパートの一室程度の変化で納めていいものか。


見識が広がれば、いづれいい人もやりたいこと見つかるだろうしね。



「・・・でもまだ早いよなぁー。ここで急に冷たくしたら多分立ち直れないぞ?」


【儂だってそれくらいはわかっとる。ただ主が責任を取る、と言っても別に止めたりはせぬぞ? その場合胡桃とやらをどうするのか知らんが、、、。】



・・・え、なんでそこで胡桃先輩の名前が出てきたの?


俺は意味が分からず目をシパシパさせていると、バスは学校近くの停留所で止まった。

とりあえず話を中断して学校に向かう。


バスから降りて感じた陽の光は目につらく、閉じたくなってしまうが、いい加減現実を見ないとな。



そう、俺は覚悟を決めたのだ、、、。



ポケットを弄り一枚の紙を取り出す。

怪異の名が記され、狂餓鬼に丸をつけられた紙を握り、俺は一歩学校に向かって踏み出したのだった。




ーーー




「と、いうわけで皆さんに集合してもらいました。」


「うっす!任せてください!」


「・・・助言はするが手伝いはしねぇぞ?」



昼休みー


屋上に灰円と赤兎を呼び出して狂餓鬼をどうにかしようと提案すると、赤兎は喜んで手伝ってくれると言うが灰円はどこかどうでもよさそうな顔を浮かべている。


なんでだよ、お前が提案したんだろ?



「・・・狂餓鬼か。やり方を知らなければ呼び出せない鬼とかぶっちゃけどうでもいいんだよなぁ。」


「お前、ぶん殴るよ? お前が提示してきた怪異だろうが。」


「正直【代弁者】か【送り狼】あたりから行って欲しかったなぁ。」



知るか、だったら渡した紙に順番でも書いておけよ。

勿論文句言うけどね。



「でもお前さん、なかなかうまいことやってんな。既に【白蛾鬼】【鎖搦め】さらには【迷い子】を無力化なんてなかなかできることじゃねぇ。」


「・・・そういや放置しちまったけど迷い子ってもう安全なの?」


「異界がなけりゃただの迷子の子供だ。もう人を迷わせることはできねぇよ。」



へぇー、そうなんだ。

あれ、もしかしてあのまま放置したの結構可哀想だった?


でも怪異に同情ってしなくてもいい?



【しなくてよいよい、怪異というのそもそもが人とは違う。感情が希薄なのじゃ、あまり奴も気にしとらんよ。】


「へぇー、そういうもんなのか、、、ん? お前はめちゃくちゃ感情豊かじゃん。」


【当たり前じゃ、何年生きてると思うとる。】



知らねぇよロリババーー


ズドンッ!!



「兄貴ー!!」


「・・・お前何考えたんだよ。」



ヨルに後頭部を思いっきり踏んづけられて頭をめり込ませる。


おかしいな、なんか液体が伝う感じがするよ、やりすぎじゃない?


とりあえず座り直して空気を変えようと咳払いを一つ、、、。



「よし、まずは夜の学校への潜入方法だな。鍵をどうやって入手、、、」


「ほらよ。」



初めに夜の学校に入るために鍵をどうすればいいか相談しようとしたところ、ぞんざいに鍵が投げつけられた。



「これどこの鍵?」


「実習棟非常口の鍵だ。調理実習室は空けといてやる好きにはいれるはずだ。」



・・・これ今日もらったら今日やるしかないじゃん。


やっべ、宣言するだけしといてなぁなぁでゆっくりやろうと思ってたのに、退路を断たれたわ。


軽く絶望する俺を無視して、灰円は缶コーヒーを飲み干してそれを灰皿代わりに使う。



「ていうかお前ら、狂餓鬼のこと知ってるのか?」


「知らね。」


「知ってるっす!」【知っとるわ。】



元気に答える赤兎と舐めんなと苛立ちながら答えるヨル。うん、君あまり灰円のこと好きじゃなさそうだよね。



「一応おさらいで説明しとくぞ。狂餓鬼っていうのは極限状態の飢えが根底にある怪異だ。人数は必ず2人以上、そして決まった手順を踏まないと現れることはない。」


「ん?2人以上じゃないとダメなの?」


「あぁ、2人以上じゃないと出てこない。」



そうなの?と思い、ほかの二人を見てみるとコクリと頷きを返された。ほんとにいろいろ条件が合わないと現れないんだな。



「極限状態の飢餓、食料はなし、水も無し、残ったのは自分ともう一人だけ、言いたいことはわかるか?」


「・・・なるほど、共食いね。」



理解が及んだ俺は腕を組みながら納得する。


なるほど、だからヨルは事件に狂餓鬼との関連性を感じたのか。被害者は仲がよいはずの生徒二人、それが突如としてお互いを傷つけ合った、精神に干渉でもしてくるのかな?



【大正解じゃ。狂餓鬼が現れると極限の飢餓状態に陥る。まともな思考はできなくなり、近くにいる食料のかわりを喰らおうとするのじゃ。】


「それってどうすんの?」



にしても今回は突然怪異に襲われるわけじゃないから対策を考えられていいね。

やっぱこうやって事前準備してから戦うもんだよ、普通。



「飯でも横にたくさん置いとけば平気っすかね?」


「そんな簡単なわけねぇだろ。食料置いといても狂餓鬼が現れた時点で腐っちまうからな。」



名案とばかりに提案した赤兎の意見は灰円によって却下される。んー、じゃあどうしろと、、、。



「本来だったらどうやって祓うんだ?」


「建物自体を潰す。」



専門家としてはどうやって祓うのか気になって聞いたら予想外の返答が返ってきた。まさかの物理押しとは思わなかったんだけど、、、。



「要はその建物が狂餓鬼を喚び出す出入口として機能しちまってんだよ。それを潰しちまえば狂餓鬼は現れねぇ。」


【別の場所に移動はするが、喚び出し方はまた変わる。また発覚するのには時間がかかるはずじゃ。】



・・・祓えてねぇじゃん。


俺が呆れたような目を灰円に向けていると、彼は煙草を吹かしながら頭を掻いた。



「・・・そもそもな、『鬼』ってのは普通の怪異と特異性が違うんだよ。完全に祓い切るのが難しいんだ、現にそこにいる夜暮姫も祓いきれずに封印するしかなかったわけだしな。」



え、そうなんだ。


鬼さん理由としましては?



【鬼は死なんからな。他の怪異は存在自体が不確かな者が多いが鬼だけは確固たる存在を与えられておる。それに力を蓄える手段として『喰らう』と言うのは単純で手っ取り早いしのぉ。】


「他はめんどくさいの?」


【うむ、迷い子であれば迷宮に彷徨わせてる間に人からの生命力を奪う。鎖搦めであれば縛り付け苦悶を生命力へと変えるのじゃ。】



へぇー、、、。



【恐ろしく興味なさそうじゃな。】


「食べ方講座されてもね。てかもう話長くなってきたし手っ取り早く何とかできる方法提示してよ。ほら、灰円様は位の高いお方なんでしょ〜?」


「お前さん煽るの上手いな。」



いやいや、そんな褒められたら照れるでしょ。

てか事実でしょ?変なこと言ってないじゃん。


俺に煽られても特に気にしていなさそうな灰円は顎に手を当てて「んじゃこうするか。」と一言漏らした。



「対処するのはお前さん夜暮姫コンビと赤兎。あともう一人、ストッパーが欲しいところだな。」



灰円はそう言って手を打ち鳴らす。

するとつい最近聞いた気がする軽い声が後ろから聞こえた。



「はいはーい、お呼びですかー?」


「うわぁーーー!!出やがったな根回し!!別に何もしてないよ!?」



跳びながら前へと転がり腰を抜かしながら構えを取る。その様子にハナはキョトンとした顔を浮かべて戸惑っていた。



「何もしないけど、、、?」



素で驚いてそうなハナと何故か灰円もタバコを咥えながら目を見開いている。



「お前、そう急に背後に現れるのやめてくれよ。」


「クセでしてねー。」



暗殺者かお前は。


腰を抜かした俺はそのまま胡座をかいて呆れていると、灰円が1枚の付箋を見せてきた。



『根回しについての話は無しだ。』



・・・?


あ、そう言えば根回しって叫んだね。

でもなんで無しなんだろ、聞いてたりすんの?怖いんだけど。



「誰っすか?」


「ハナちゃんでいいですよ〜。」


「分かったっす、ハナちゃんさん。」


「さんはいらないから。」



首を傾げている俺の横で赤兎はハナを知らないのか名前を聞いていた。てか同じ日道連なのに知らないんだ、、、うん、赤兎、お前何も知らないんだね(泣)



「万が一の予防線だ。制限時間は30分、それまでに狂餓鬼の異界が閉じられなければ外からこいつに突入してもらう。」


「こいつじゃないです。」



灰円は言いながらハナを指差す。

ハナはニコニコしてたのにコイツって言われた時だけ目が据わって怖かった。



【・・・閉じられた異界に侵入できるのか?】


「できますよ〜、少しコツがいりますけどね。」



ハナは余裕とばかりにピースをしている。

こいつはこいつで訳のわからない謎人物だよな。


まぁそもそも俺は異界の入る入れない、出口に構造とか何も知らないから何を不思議がっているのかすらわからないんだけどね。



「この中で狂餓鬼の精神汚染に抗えるのは夜暮姫だけだ。気付け役は夜暮姫、そしたらあとは狂餓鬼との喰い合いになる。」


「・・・喰い合い、要は殺し合いか。痛いのやだなぁ。」


「その割にはお前さん、覚悟決まりすぎだけどな。」



灰円は何処か呆れたような目を向けてくる。



・・・覚悟?んなもんないわ、死にたくないから死にそうな痛みを我慢してるだけだよ。



【・・・本来なら死にそうな痛みを何回も味わえば狂うのじゃがな。】



何かボソリとヨルが呟いたがあまりに声が小さくて聞こえなかった。俺の心の声はヨルに通じるのにヨルの心の声は聞こえないのっておかしくない?



【なんじゃ、乙女の心が知りたいのか? スケベじゃのぉ。】


「乙女というより年功者の意見を知りた、、、謝るから足踏み抜かないで!!」



ハンマーで殴られたような痛みに涙を浮かべて何処か閉まらない空気のなか、最後に灰円からちょっとした鬼対策の道具を預かって解散となる。


決行は今日の夜中、琴音さんにはすでに遅くなると連絡してるし死角はないはずだ。



・・・よーし、がんばるぞー!!




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