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夜暮れに語る怪異奇譚  作者: たんぽぽ3号


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14/19

擬態



ーーズガアンッ!



長く落ちた先の一つのフロア、そこに向かって爆弾を投擲。ちょうど落下の延長線上にあったので爆発とともに俺もフロアへと着地できた。


ただもちろん爆発なので着弾と同時に生まれた衝撃で俺は吹き抜けの反対側へと吹き飛ばされる。

地面を何回転かゴロゴロ転がり、壁にぶつかってようやく動きを止めた。



「ーーし、死ぬっ!!」


【・・・何やっとるんじゃ主。】



爆発で霧は全て吹き飛び、何とか火傷とかはしなかったけど吹き飛ばされた時に全身を強く打ち付け悶絶。

何とか床に手をついて立ち上がろうと力を込めていると、頭上から聞き馴染んだ声が聞こえた。


俺はバッと顔を上げると、腰に手を当てたヨルが呆れたような顔で見下している。



「ヨルーー!!」


【どわぁ!?】



思わずヨルに飛びついて抱きしめる。

まだ会ってからたった数日しか経っていないのに安心感がすごい。



【きゅ、急に抱きつくな!!腰打ったじゃろ!?】


「うわーん!ヨルー!怖かったよー!!」


【主は子供か!!】



高校生はギリ子供だと思うから間違ってないと思います。うわんうわん泣いている俺にヨルはため息をついてから頭を撫でてくれる。・・・天使かな?



【・・・あんなのと同じにするでないわ。】



あ、知り合いか何か?

天使とかいるんだー、怖いからどうでもいいけど。



「・・・ん? てかヨル、お前なんでこんなとこにいんの? まだ音立てたばかりだぞ。」


【む? あー、音を立てて目印にしとったのか。確かに宛がなければ合流はできぬが、儂は主の存在を感じ取れる。であればそこに向かうだけで迷うことはないぞ。】



・・・え? じゃあ俺何のために爆発したの?



てかじゃあ下手したらヨルも巻き込まれてたじゃん。あいつ適当なこと言いやがったな?


心のなかでハナに対して文句を思っていると、ヨルは首を傾げる。



【・・・ハナ? 何故あの小娘の名が出てくるのじゃ、近くにおらんだろう。】


「へ?いやだって一番最初に合流して、、、」


【そもそも巻き込まれたのは儂らだけじゃ、ハナとやらは近くにおらんかったぞ?】



・・・へ? そ、そう言えばあいつ、いつの間にか近くにいたけどどうしてあそこに現れたんだ?



当然の違和感に今更気づいて寒気が走る。



なんかそういう特殊な術でも持ってるのかと勝手に納得したが、本来分断され、宛がなければ合流できない怪異の異界のなか彼女は平然と合流してきた。


俺の居場所を知る術は、、、ない、、、よね?


てか一回しか会ったことないからわからんわ!



【・・・ふむ、1回のみであまり面識がなく、しかし敵ではないと信頼は得ている。確かに擬態するには最適な人選じゃ。】



ヨルはそう言って吹き抜けの方に向かって右手から霧を放出。

鋭く圧縮された霧は壁や床に鋭い爪痕のような軌跡を残す。



【・・・相変わらず抜け目ないな、【根回し】。】



ヨルが虚空に向かって名を呼ぶと、床の跡からミシッと木の根のような物体が伸びてきた。

それが集まり徐々に形を形成していくと、先ほどあったはずのハナの姿となる。



【それはそう、あなたが学校に来た時から警戒してる。怪異喰らいが何しに来たの、ってね。】


【心配性じゃのー、見ての通り力を失っておる。何もできはせんよ。】


【・・・日道連の男と手を組んでるのは知ってる。厄介な奴を引っ張ってきて、、、ムカつく。】



不敵に煽るヨルに根回しと呼ばれた怪異は不快そうにしていた。


さっきまで話していたはずのハナとは声も話し方も変わっている。なのに姿だけは見分けがつかないほどそっくりだ。



【手を組むとは心外だな、儂が人の味方をすると思うのか?】



ジロリと強い殺気を込めて根回しをヨルは睨んだ。

しかし根回しは動じず、肩をすくめるだけ。



【思わない、けどならそこの人は何?】


【む? 主じゃよ?】


【・・・・・矛盾してる。】



うん、そうだよね。俺も思ったけどスルーしてたんだ。

ツッコまれたヨルは何故か逆に誇らしげに胸を張った。



【儂は儂の思うように過ごしておる。貴様に決められる筋合いはないわ!】


【・・・話にならない。】



あれ? おかしいな、根回しさんの方が感性合うんだけど? 俺も会話になってないと思ってるよ。



【浮気か主!?】


「いや、引いてるだけ。」



俺が正直に言うとヨルは手を地面ついて肩を落とす。

悲しそうなその姿を一瞥したあと俺は根回しに視線を送った。



「・・・なんで怪異が俺を助けたんだ?」



怪異は人に対していい感情を持ってないことはヨルから聞いている。特に俺達と灰円の関係を知ってるなら尚更だろう。


もし、放置されていれば俺は迷い子の力でこの迷宮を永久に彷徨うことになったはずだ。

なのにこいつはわざわざ怪異の説明をして対処法まで教えてくれた、、、そこが理解できない。


そう思っての質問だったのだが、根回しは目を軽く開いて驚いた反応をした。



【・・・え? あれを助けられたと思ってるの?】


「・・・・・・・・ん?」



言われて俺は顎に手を当てて何か勘違いしてるか遡る。


怪異の説明されて吹き抜けに案内されて爆弾持って突き落とされた、、、あれ、助けられてねぇなこれ。



【主よ、少し時間をかければ儂は合流できたからの?】


「この野郎! よくも殺しにかかってきやがったな!」


【・・・頭痛くなってきた。】



俺は指をさして根回しに怒りを向けたが奴はハナの姿で頭に手を当ててため息をついた。


の野郎、舐めてくれんじゃねえか!



【夜暮姫の契約者、貴方は夜暮姫の弱点だということを理解したほうがいい。】


「だってさ。」


【弱点むき出しで自由にさせておる儂って相当豪胆じゃないか?】



そうだね、危うくその弱点は吹き抜けに飛び降りて爆発したからね。もはや毛が生えてるなんてレベルじゃないよ。


他人事のようにヨルに話しかけるとヨルも腕を組んで適当に返す。

すると、根回しはまた大きく溜息をついた。



【もういい、こっちに手を出さないならほっとく。ただもし牙を向けるなら、、、牙が抜けるまで徹底的に絞り上げるから。】



ーーゾワッ!!



今日一番の粘着質じみた凶悪な圧がまとわりつく。



・・・格が、違う。



今まで会った白蛾鬼、濡れ衣、鎖搦めに迷い子、そのどれともと違う圧倒的な悪意、その本流に体の芯から凍えそうになる。



【ふん、地に縛られ身動きの取れない木偶が、口だけは達者になったのぉ。】


【・・・今の貴女に私の相手はできない、無様に這いつくばりたくなければ口は慎んだほうがいいよ。】



根回しはそれだけ言い残して吹き抜けから飛び降りて姿を消した。

圧倒的な圧から解放された俺は腰を抜かして座り込んでしまう。



「ーーぷっは、死ぬかと思った。」


【安心せい、奴が直接手を下すことなどまずない、こちらを潰すときは徹底的に孤立させてゴリゴリ縛り上げるように苦しませてくるはずじゃからな。。】


「安心できないねぇ!」



安心できる要素が一つもないフォローにツッコみながら手を貸してくれたヨルの手を取り立ち上がる。



「・・・灰円はあんなのどうにかしろとか言ってるのか?」


【正直に言うが、儂はアヤツにだけは手を出さないほうが良いと思うのじゃ。】



珍しく弱気な発言をするヨルに俺は驚くと、ヨルは根回しが飛び降りた吹き抜けを鋭く睨んでいた。



「道理であんな道化を演じてたわけか、そこまで敵視されたくないとか余程だぞ。」


【主の付き合いの良さには驚いたがな。】



ニシシッと可愛い笑みを浮かべるヨルに俺はヤレヤレと頭の後ろをかく。

そりゃあんな怖いのと敵対なんてしたくないからな。



【ひとまず琴音を探しに行くぞ。儂と主は普通じゃないが、あの娘はただの人じゃ、この異常空間に耐えられるかわからん。】


「そういや俺も頭痛がヤバかったな。」



確かに頭を打ち付けるまで謎の笑い声がずっと頭の中に響き、立っていられなかった。それをまだ聞かされてるかと思うと心配になる。



【あの娘は白蛾鬼に憑かれながらも自我を失わなかった。耐えてくれるとは思うが急いだほうが良いじゃろ。】


「・・・へえ、案外認めてんだな。」


【耐える姿を何年見させられたと思うとる。】



言われてみればヨルはあの異界の中にずっと刀として保管されていた。つまりあの屋敷で起こった出来事も、その後のすべてを見ていたというわけか。



「なら急ごう、こんな気味悪いとこさっさとおさらばしてぇ。」


【うむ、ところでどうすればよいか検討はついているか?】



・・・・・・・・・・・。



あ、宛もなく歩いたら辿り着かないんだったわ。



根回しとの出会いですっかり忘れていたことを思い出す。そしてどうすればいいのか頭を回した。



「・・・吹き抜けで大きな音を立てたし向かってくれてたりしないかな?」


【ないとは言わんが、主は頭痛と笑い声が聞こえるなか、音を判別して吹き抜けに向かえるか?】


「無理かもしれん。」



言われて気づくが、確かに音が聞こえてもあんな妨害があればまともに歩くことは難しい。

その状態で吹き抜けを見つけられるとは思えなかった。



【まぁ吹き抜けと言うのは良い判断じゃな。仮に今のいる場所で大き音を立ててもフロアが別であればそこが何階かの判断がつかん。吹き抜けは1本の柱をゴールに見立てて目指すようなもの、迷い子の異界攻略としては効果的じゃろう、、、いつもの調子で動ければ、じゃがな。】


「なら打つ手なくない?」


【何言うとる、主のポケットに入っているものを使えばよかろう。】



言われて自分のポケットを弄ると、いつも使ってる財布とスマホしか出てこない。


これで何すんの?と思ってヨルを見ると、彼女は無言で俺のスマホを指さしていた。



「え、使えんの?」


【迷子探しに通話というのは常套手段じゃろう。迷い子は道に迷った怪異じゃ、見つけてくれる手段を潰したりせん。はぐれた時のために設定しておいたのが功を奏したな。】



電源を押すとスマホは普通に起動した。

俺は設定しておいた位置情報が共有できるアプリを設定しておいて琴音さんの居場所を探る。



・・・あれだよ? とりあえず今だけ設定しておいただけだからね?



【む? 通話じゃないのか?】


「いや、通話よりも居場所を探るならこっちのほうが、、、え、この異界って位置情報も反応すんだ。」


【そうじゃな、こういった話を聞いたことはないか? 行方が分からなくなった者から突然連絡が入ると言ったな、、、ただ、迷い子の場合異界から助けを求める時は強力な力に襲われる。よって無言電話がかかってくるのじゃがな。】



いや怖いって、なんか鎖搦めは物理的だったけど迷い子は完全に精神的に壊しに来てんじゃん。



「あぁ、だから俺たちはまだ平気なのか。」


【脱出しようとはしとらんからのぉ。】



そういう事かと納得して位置情報を頼りに歩き出す。

思ったよりも反応は近くて二階程上がれば見つかるはずだ。



・・・これが合ってればね?



一抹の不安が過ぎるなか進むと、目の前に子供が立っていた。


俺は頬を引くつかせながら一歩後退る。



「よ、ヨルさん?」


【・・・驚いたな、迷い子から接触されるとは思わんかったぞ。】



ビビる俺に比べてヨルは興味深そうな反応をした。

そして振り返った子供は一度見た目のない顔を向け、恐ろしいほど上がっている口角で笑みを浮かべている。



「ーーひゅっ」


【バカバカ、気絶するんじゃない。運ぶのは面倒じゃ。】



意識を失いかけた俺の腹部にエルボを入れられて俺はうずくまる。手加減って知ってる?



【ひ、、、め、、、?】


【む、儂を知っておるのか?】



迷い子は小さな声でヨルを姫と呼んだ。

ヨルは少し警戒した。



【たす、、、、、け、、、、、て、、、。】


【・・・お前は人の善意につけ込む怪異じゃ、その言葉が真実かどうか推し量るすべは儂にない。それに儂の救いは喰らうことだけじゃ。】



ヨルが冷たく返すと、迷い子は姿を消した。

その瞬間、周囲の建物がきしみグニャリと形を変えていく。



「ヨルさーん!? 何してんの!?」


【出来ることを述べただけなのじゃがなぁ。】



不満気に呟いた後、ヨルは霧になって俺の右手に集まり刀を形成する。


さてさて、何と戦えと? 建物?バカなん?



【迷い子はこの景色に潜んでおる。それを見つけて斬るのじゃ。】


「はっはあー、無茶な。」


【無茶ではない、小さなすれ違いで永遠に見つけられないことだってあるのじゃ。必ずここにおる、頑張るのじゃ。】


「・・・ヒントは?」


【んなものない。】



グニャリと歪んだ内部で頭上から柱が降ってきたのを横に跳んでかわす。そのまま壁?に走って刃を叩きつけた。



【丁寧には扱うのじゃよ!?】


「んなこと言ってられるか。」



探すとは言っても手がかりも無し、平衡感覚だって狂うこの状況で虱潰しも無理だ。


なら炙り出しますか!!


先程やったように体から霧を放出、その霧に意識を向けて刀にまとわせるように意識する。



【・・・主、何故ここまで黒霧を?】



どこか驚いたような声が響く。

俺は何に驚いているのか分からず、首を傾げながら意識を集中させた。



「知るか。」



振り抜いた刀の先から網のように細く編んだ霧が放たれる。さっき見たヨルが霧で壁を切り刻んだのを参考に鋭さを持たせることを意識して辺り一帯に振り回す。



ーーミシミシッ!



広がる霧の網にスッポ抜けそうになる刀を全力で握りしめ、血をにじませながら歯を食いしばる。



「うぉおおおお!」



叫びながら見える景色を切り刻んで細かい破片だけが飛び散る景色へと変貌させた。



「俺は優しくねぇぞガキンチョ。迷ってんなら無理矢理引っ張り上げてやらあ!!」



土埃が舞うなか、ほんの僅かに揺れた影を目ざとく見つけて霧を伸ばす。

縛り上げるように相手を拘束し、そのまま釣り上げるように放り投げた。



「・・・ん?」



急に軽くなった感覚に違和感を感じて手を見るとさっきまで握っていたはずの刀がない。

後ろを振り向くと釣り上げた迷い子ごと、ヨルをぶん投げていた。



「・・・・・まあいっか。」


【良い理由あるかー!!】



遠くから聞こえる叫びに肩をすくめながらヨルをむかえに行った。



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