表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜暮れに語る怪異奇譚  作者: たんぽぽ3号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/19

迷い子



来る日曜、いつも通りの美味しい朝食をもらって出発となった。


ちなみに琴音さんはいつもの着物ではなく白いワンピースにカーディガンを羽織る格好をしていてとても清楚な印象を受ける。

俺はそれを見て流石にジャージは不味いとシャツにデニム、上着を羽織ってギリギリ横に立っていても違和感がないくらいに整え、、、



・・・うん、無理だね。明らかに釣り合ってない。



仕方ないのでため息をつきながらいつものバスに揺られて電車に乗る。


いやー、目立つ目立つ。


電車は混むし色々危ないだろうから庇うように立っていたが、逆にあまりに綺麗すぎて近寄られてない。


まぁ下手なリスクは負いたくないしね。

てか姿勢いいなー、マジでモデルみたい。


混んでいく電車内の中、たまたま出入り口の端が空いたので琴音さんを押し込む。彼女は「え?え?え?」と困惑していたけど、ここが一番迷惑がかからないかな?



「「・・・。」」



すると自然と琴音さんと近くなってしまう。

軽く視線を下げると照れたように少し頬を染めた琴音さんがはにかんだ。



「・・・これだけ近いと少し照れますね。」


「・・・。」



付き合いたてか?付き合いたてなのか?勘違いしていいのか!?


あまりに破壊力が高い事を言ってくる琴音さんに無我の境地で相対しているとすぐに目的の駅に着く。

人混みに慣れてない琴音さんの手を引いて電車から降り、駅の改札に向かう。俺は交通ICで通れるが琴音さんは切符を使うしかない。後ろからうまく出れるかハラハラしながら見ていたが琴音さんは問題なく改札から出れた。



・・・元々要領はいいと思うし心配しすぎだったか。



上手く降りれた俺達は駅前の混雑する交差点に出る。あまりの人の多さに俺は眉をしかめていたが、反対に琴音さんは目を輝かせた。



「わぁ、人とはこれ程までに多かったのですね。」



俺にとっては見慣れた憂鬱な光景でも彼女にとっては新鮮らしい。


感動してる彼女には悪いが立ち止まってると通行の迷惑なので交差点を渡って一番近くの家電量販店が入ったビルに向かった。


その2階にある携帯ショップに向かう。



「・・・これは?」


「スマホって言って遠くにいる人にメッセージや通話をかけられたり行きたい場所への経路とかも調べることができる電子機器だね。他にも色々音楽聴けたりとかあるけどそれは慣れてからかな。」



俺がそう説明すると琴音さんは興味深そうに並べられている携帯を眺める。

ただ性能とかは分からないようで本当に見た目だけを見ていた。


そして値段を見て目を見開く。



「た、高くないですか? まさかこれを買ってくださるので?」


「そうだけど? 実際メッセージや通話ができないと不便でさ、俺もバイトに急に呼び出されることもあるし用ができたりもする。その時に琴音さんに連絡できないとずっと待たせちゃうからさ。」


「・・・私、待つのは苦じゃないですよ?」



心配そうに見上げてくる彼女に俺は苦笑する。

やっぱり琴音さんは遠慮しがちだな、それはまだ短い付き合いだけどわかってたし戸惑いはない。



「色々便利だから持っててよ。ほら、俺も家にいる琴音さんに家の備品で足りないものがないかとか聞けるからさ。」


「それは確かに便利ですけど、、、。」



まだ困ってそうだけどさっきよりは揺らいだな、あともう一押し。



「ま、暇だったりしたらいつでも連絡してよ。気楽に話せるのがこういう道具の醍醐味だからさ。それにつながりも増やせる、胡桃先輩と予定を合わせて2人で出かけたっていいんだ。」



俺がそう話すと琴音さんは「え?」と嬉しそうに驚く。ホント1日でここまで仲良くなれたあの人すごいな。



「とりあえずお金は今たくさんあるし困ってない。使えるものは使っとくべき、腐らせておくほうがもったいないからさ。こういうのは受け取っとくべきだよ。」


「・・・わかりました、ありがとうございます。」



ここまで説得して琴音さんはようやく頷いた。

俺はバレないように「ほっ」と息を漏らす。


そして買うことが決まったらあとは何を買うか、だな。


好きなものを選ぶように琴音さんに伝えると、彼女は顎に指を当てながら「うーん、」と可愛く悩む。

それからしばらく無言で色々見比べたあと、一つのスマホを指差した。



「あの、これでもいいですか?」


「おう、なんでも、、、うん?これって俺と同じやつじゃん。」



それは俺が使ってるやつと同じ、一つ前のスペックで安くなっていたやつだった。

俺はまだ遠慮してると思ってため息をつくと、彼女は慌てて手を振る。



「あ、違いますよ、遠慮とかじゃなくて初めて使うものですし同じなら暮崎さんも教えやすいかなと思いまして、、、。」


「んー、でも他のやつでもあまり操作は変わらないけどな。」


「・・・でも、一緒のがいいなって少し思ってしまいました。」



そう言って照れたようにはにかむ琴音さんに周囲はどよめき俺は致命傷を負う。


おかしい、霧で治らない、、、。



【頭は無理じゃ。】



壊れてると? まともな反応だと思うんだけど俺がおかしいか?


とりあえず本人が希望してるのに否定する理由もないのでカウンターに持っていく、ちなみに個人を証明するものを琴音さんはきちんと持っていた。

ちゃんと抜け目なく灰円から渡されていたらしい。


話は俺が聞いて特に問題なく契約してスマホを購入できた。


持って帰ってから設定してもよかったが簡単な設定だけしておいてとりあえず通話と位置情報を共有できるようにしておく。はぐれないとは限らないしね。



するといい時間になるのでお昼を食べにフードコートへと向かった。



「これだけ種類あると悩みますね。」



まずは席を確保して何を食べるのか選ばせる。

琴音さんは少し悩んだあと「これにします!」と言ってうどんを選んだ。


和食好きだよな、、、てか和食しか食ってるところを見たことない。



「・・・頼み方はわかる?」


「注文して受け取ればよいのですよね? 天麩羅は無料?」


「全然有料だから、まぁ店員さんが会計に入れてくれるからそこら辺は大丈夫か。」



無事にうどんを受け取った琴音さんに席で待っててもらって俺はハンバーグを頼んで控えを受け取る。


戻ると琴音さんは綺麗な姿勢で食べずに待っていた。



「・・・先食べててよかったんだぞ?」


「せっかく一緒に出かけたのですからご一緒しましょうよ。」



ほんと可愛い事言うよねこの人。

何なのかな?俺の好感度上げても何も返せないからね?



画面に番号が表示されてご飯を取りに行き一緒に食べる。てか思ったけど1人にしても琴音さん絡まれたりしないな? まぁ軽く誘って応えてくれるような雰囲気もないし、高嶺の花感が強いからか。



そんでその高嶺の花と一緒にいる地味な俺には妬みの視線が殺到している。



「とりあえずこの後はどうする? もう少し見て回るか?」


「そうですね、あ、私100均というところに行ってみたいです。知ってますか? なんと全部100円なのですよ!」



知ってるなぁ、ちなみに全部ではないよ。

確かにすごいけど店自体は有名だし驚くことはない。


ただ他の安い店はあっても100均が店舗として入ってるのあまり見たことない気がするなー。


とりあえず食器を返して移動を始めると、ふと子供の泣き声が耳に届く。


俺と琴音さんは人混みのなか目を凝らすと小さな男の子がしゃがみ込んで泣いている姿を見つけた。



「・・・迷子か?」


「大変、声をかけてきましょう。」



面倒見の良い琴音さんがすぐに男の子に駆け寄っていく。俺も頭の後ろを掻きながら近づこうとした所ある違和感に気づいた。



・・・他の人、あまりに見向きしなすぎじゃないか?



行き交う人々は泣いてる男の子の声が聞こえてないかのように平然と歩いている。

確かに急いでたり関わりたくなくて無視することはあってもまるでいないかのように無視する必要はない。



【ーー主! すぐに琴音を呼び戻せ!】



地面から飛び出すように出てきたヨルの言葉に俺はすぐに走り出す。

ただ伸ばす手が届く前に琴音さんは男の子に声をかけてしまった。



「あの、大丈ーー?」


【・・・・・・・見つからない、わかんない、ここどこ? 誰か、助けて、助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて、、、。】



ゾワッ!



振り向いた男の子の顔には目がなく、血に濡れた口元は不気味に笑っていた。

そして次の瞬間、辺りは真っ赤に染まって行き交う人々が姿を消す。



・・・これは。



「・・・異界、か?」



俺は中にいるヨルに問いかけるように言葉を口に出す。しかし返事はなく、俺は焦って何度も呼んだが、一切返事は返ってこなかった。



「ヨル?ヨル、ヨル!?」



一気に心の中を焦りと恐怖、強い不安が支配する。

まさかはぐれた!? そう言えば今さっきまで目の前にいたはずの琴音さんもいない。


異界に引き摺り込まれた時に分断されたのか、、、。



【くすっ】



すると耳元から不気味な笑い声が聞こえてきた。



【くすッ、くすッ、クスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクス!】



まるで囲まれてるかのように自分の周囲から笑い声が響く。俺は恐怖に固まって動くことができない。



・・・どうする、どうする? どうすればいい!?



周りには誰もいない、なのに笑い声だけが頭に響き続ける。頭痛と不快感に吐き気を催しながら何とか壁に手をついて意識を保つ。



「・・・ヨルがいない俺って、ほんと、頼りに、なんねえな。」



思わず口から出た弱音。

ぼやけてきた視界に小さな少年が笑いながら立っているのが見えた。



・・・ったく、なに、笑ってんだよ!!



ズガンッ!



勢いよく踏み出した足は床にめり込み、足の骨が折れる。俺は歯を食いしばりながら右手を握りしめるとそこから黒い霧が漏れ出した。



・・・ヨルか? いや、違う、これは繋がってる影響か。



黒い霧が足を包んで骨折を治す。

俺はそれを見て一度頭を壁に打ち付け血を流し、霧をまとわせて治療した。


すると、先ほどまで頭痛と不快感に苛まれていた頭が驚くほどクリアになる。



「・・・はっ、そりゃそうか、もう人間やめてんだもんな。」



俺は自嘲気味に笑って手を握りしめた。

そっと血を拭い、前を見ると先ほどと違って笑い声は聞こえない。


試しに右手に霧を集めてみたが、刀を形成することはできなかった。あれは霧と言うよりヨル自身と繋がってるのかな? よくわからんけど。



「これからどうするか、、、。」



思考はクリアになって視界も安定したが、未だに2人とはぐれている現状は変わらない。

そもそもどういった怪異かもわからないし当てもなく歩くしかないか、、、。



俺はこんな不気味な空間を歩くことにため息をつくと、カツンと後ろから足音がした。



跳ぶように前に踏み出しながら振り返り、後ろの存在を確認するとそこには、、、



「えー、迷子のお迎えです。宛もなく歩けば永遠と迷い続ける迷宮の案内人はいかがですか?」



そこにはニコッと可愛らしくもどこか強気な笑み浮かべたハナが立っていたのだった。





ーーー





「いやー、まさかただのデートだと思ってたのに怪異に目をつけられるとは思ってませんでしたねー。」


「俺だって目をつけられたくなかったよ。」



いつの間にか現れたハナに先導され、俺は薄暗い赤のモールを歩く。


てか本当にいつ現れたんだ?


色々頭に疑念が湧くが、唯一出会えた知り合いだし、下手に質問攻めもしたくない。



「・・・どうして私が急に現れたのか聞いてこないんですね?」


「教えてくれるなら聞くが?」


「いーえ、乙女の秘密なので内緒です。」



なら最初から匂わせんな。

いいよ別に、今を助けてくれるならそれだけで大助かりだからさ。



「さて、では今どういう怪異に絡まれているのかというと、相手は【迷い子】。道から外れ、行き先を見失った者たちから生まれた怪異です。」


「・・・つまりこのまま歩いても迷い続けるだけってことか?」


「そーです、人生という名のゴールのない迷路に出口はありませんから。あ、死がゴールとか言うバカもいますが死はただ道を踏み外して落ちてるだけでゴールじゃありません。」


「・・・それお前の感想だろ。」



どこか得意そうにルンルンで前を歩くハナについて行っているが、これって今どこに向かってるんだ?


歩いても迷い続けるなら歩く必要はないんじゃ、、、。


そう不安に感じているのが顔に出ていたのか彼女はこちらを見ていたずらっぽく笑った。



「さて問題です、今は何を目的に歩いていますでしょうか?」


「・・・え?出口じゃないの?」


「いーえ、迷子を探してます。迷子の探し方はいろいろありますよね。警察や探偵への依頼に聞き込みやビラ配り、でもそのどれもがこの異界では不可能です。」



え、じゃあどうすんの?


てか俺は十数年生きてきたけど迷子に会ったことがない。探し方とか何も分からないけど、、、。


ドラマとか何かで聞きかじった良い方法がないかと考えると一つ出来そうなのがあった。



「・・・放送、か?」


「おー、確かにこのモール内は異界化してるとはいえ電子機器は動いてます。放送は効果的ですね。・・・ただ問題としてはぐれた2人、ここのマップに詳しいと思いますか?」


「・・・思わねぇ。」



琴音さんはここに来るのは初めてだろうし複雑なビルとかに慣れてない。ヨルに至っては知識すら危ういだろう。その2人に俺たちの居場所を教えたって見つけられるとは思えない。



「じゃあどうすんだよ?」


「見つけてもらうんですよ。」


「・・・叫ぶ?」


「間違いじゃないですけど広いモールですしぶっ壊しますか。」



あまりに過激なことを平然と言う彼女に引きながら、俺達は吹き抜けのエスカレーターがある場所にたどり着いた。



「・・・壊せんの?」


「さぁ?そればかりはわかりません。と言うか迷い子って怪異の対処法って縄張りと状況によって大きく変わるんですよね。ただ一番してはいけないことは宛もないのに歩き続けることです。」



・・・なるほど、確かに迷子の怪異だな。


たとえ迷子でも誘導してもらったり、居る場所の検討がつけば合流はできる。

ただ適当に動けば永遠に会えないってことか、、、。



「それじゃこれどうぞ。」


「・・・まて、何だこれ?」



渡されたのは手のひらサイズの黒い物体。

表面にタイマーが0:00と表示されていて嫌な予感がする。



「爆発物ですけど?」


「なんでそんな物を持ち歩いてて平然と手渡してくるんだ!? いつからこの国は爆発物の所持を許可されたの!?」


「いやだなー、無許可に決まってるじゃないですか。」


「超犯罪!」



あまりに非常識なハナに俺は頭を抱えて蹲る。

と言うか何をやらせようとしてるのかも見えてきた、これで吹き抜けから爆弾落として轟音を立てようって腹か。



「乙女は常に武装してるのですよ。」


「それって実物の武器じゃなくね!?本当に武装してるの初めて見たわ!!」


「ほらほらー、いいから急ぎますよ。夜暮姫はまだしも白蝶のお嬢様は危ういですから。」



軽く流されて俺は仕方ないと押し黙りながら立ち上がる。それで渡された爆弾を見たあと吹き抜けを見下ろした。



「・・・建物は壊しても影響ないのか?」


「ありませんよ。異界と現界は近いようで果てしなく遠いですから。」


「2人が吹き抜け近くにいたらどうする?」


「2人も湊さんと合流を目指していると思いますけど、2人は宛がありません。なので私たちがここにいればここにたどり着くことはないはずです。」



その筈っていうのは不安だけどもはや賭けに出るしかない。


このままここで手をこまねいていれば二度と出られないらしいし琴音さんは怪異に対して恐怖心を強く持っててもおかしくない。



・・・怪異は恐怖されれば力を増す。



それはヨルから言われたことだ。

なら急がなければならない、、、



「うん? 爆弾なら落とすだけでいいだろ?なんで俺に渡したんだ?」


「・・・え? 何言ってるんですか、音がしたところに誰もいなかったら意味ないじゃん。」



・・・は?



それって何?爆弾とともに落ちろと?



「黒霧の性質は灰円さんに聞きました。頑張って全身に霧をまとわせればこの程度の爆発耐えられるはずですよ。」


「待て待て待て、耐えられるのと恐怖は別だよ?」


「いいから行ってこーい。」



ゲシッと背中を蹴られると、いつの間にヒビを入れていたのか寄りかかったガラスの手すりが割れて吹き抜けに落っこちる。


走馬灯が見える中、上で手を振るハナに俺は叫んだ。



「てめぇ! 後で絶対泣かすからなーーーー!!!」


「わぁ怖い、頑張ってくださいねー。」



俺は覚悟を決めて爆弾スイッチを押して、振り被りながら霧を纏うのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ