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夜暮れに語る怪異奇譚  作者: たんぽぽ3号


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12/19

赤兎



「えー、突然ですが転校生を紹介します。はい自己紹介。」


「初めまして! 久留臥 赤兎って言うっす!よろしくお願いします!」



金曜の朝、HRの時間でまさかの転校生がやってきた。


その人物は赤毛でサングラスをかけていて、チャラそうに制服を着こなし、、、この前襲ってきた槍使いじゃねぇか!!


なんで潜入して来んのがお前なんだよ、普通はハナだろ!



お約束を無視して入ってきた赤兎の席はまさかの真後ろ、俺は顔を覆ってまた日常が一つ壊れたことを嘆く。



・・・てかうちの学校サングラスOKなの?



「えー、赤兎くんは生まれつき目が陽射しに弱いようで特別にサングラスの着用を許可しています。決して他の生徒たちは真似しないように。」



あ、そういう感じだったんだ。でもこの人夜もサングラスかけてたよ?


俺は後ろの席に向かう赤兎とバッチリ目が合う。すると彼は何故かキラキラした目で憧れの人にあったかのように笑った。



「・・・湊、知り合い?」



俺の前に座る悠がその視線に気づいて小さな声で聞いてくる。俺は軽く笑って「知らね」と答えといた。


だって知るわけないじゃん。

なんなら殺されそうになった関係だよ?

思いっきりぶん殴ったし恨まれることはあっても笑顔を向けられる理由はない。


とりあえずHRが終わって少しの空き時間になった。

俺は赤兎に話しかけられる前にすぐに立ち上がってトイレに向かう。


間違っても教室で話しかけられたくないからな!


戻ってくると他の生徒に囲まれていたので俺はホッとし、とりあえず昼休みまではそうやってやり過ごした。




ーー昼休み(屋上)ーー




「兄貴!呼んでいただけて嬉しいっす!!」


「おーう、色々聞きたいことはあるがまずはその兄貴をやめろ。」



昼に赤兎を呼び出して屋上に連れてきた。

あの大人数に囲まれてる状況から引っ張ってくるのはめちゃくちゃ勇気が必要だったけど聞きたいことが多すぎるし頑張ったよ。



「なんでっすか! 自分感動したんですよ、日道連に入ってから、術は基礎しか覚えられないし槍しか取りえがなかったんすけど兄貴のあの圧倒的な暴力、、、自分素手の相手に負けたのなんて初めてだったんすよ!」



いや知らねえよ。

てか何そんなことで感動してんだ、お前の人生野蛮すぎるだろ。


まるで犬のようにテンションの高い赤兎に引きながら、とりあえず昼休みに食べようと思っていたパンを取り出した。

話は聞きたいけど昼も食わないとやってらんないからね。



「あ、兄貴!昼パンなら言ってくださいっすよ!俺が代わりに買ってきたのに!」


「いやパシリかお前は。自分の物くらい自分で買うわ。」



別に介護が必要なわけじゃないし、そのくらい自分でやるわ情けねぇ。

でも差し出されたカフェオレはもらったよ、俺の趣味にあってたからさ、、、うれしぃ。



【主、安いの。】



・・・わぁ、カフェオレ、おいしぃ。



まったりとして何を聞けばいいのか忘れ始めたところで前に座った赤兎が嬉しそうに話し始める。



「この学校に来たのは、実は俺もよくわかんないっすね。急に上から命が出て転校の手続きをやらされたっす。一応日道連の学校からの転校になるっすね。」



・・・裏ありまくりじゃねえか。



てかこいつなんにも聞かされてないの?

こいつの扱い結構酷いな。



「まぁよくわからないっすけど、多分兄貴と協力してこの学校の怪異を祓えってことじゃないっすか!?」


「んなわけねえだろ。」



命を狙った相手に増援を送る意味がわからんわ。

多分何か裏があるんだろう、でもその裏は俺にはわからない、向こうはこちらに赤兎を送ることの利があるはず、、、。



「・・・はぁ、考えても仕方ないか。」



どうせわからないしね。

灰円に聞きたいけどあいつ今日学校来てないらしい。

忙しいとは言ってたから常にいるわけじゃないっぽいけどマジ使えねぇ。


とりあえず明日から休みだししばらくは解放されんだろ。



「お前はこれからどうすんの?」


「特に命も受けてないから普通に学校生活を送るっす。自分こういう普通の学校って初めてなんでワクワクするっす!」



・・・日道連の学校って普通じゃなさそうだもんね。



そう思うと少しこいつに同情してきた。

どういう生活してきたのか知らないけど、もし生まれてからずっと日道連関連で生きてきて、術は得意じゃない。それって結構冷遇されてきたんじゃないか?


俺はポケットから飴を取り出して手渡した。



「・・・なんすかこれ?」


「飴、いらない?」


「ありがたくもらうっす!」



なんか素直すぎて泣けてきたな。

裏表なさそうだし仲良くできるかもしれない。


ま、学校に怪異知識のある人がもう一人増えたって思えばいっかー。




ーー




その日の帰り道、琴音さんには夕飯食べて帰ると伝えといて、今日は悠と前から約束していた人気のラーメン屋に来ていた。


金曜限定の特別なラーメンがあるらしく、それなりに長い行列を暇そうに並ぶ。



「・・・そういや悠、この前は駅前の話を聞いたけど学校で変な噂ってないのか?」



ふとそう思って悠に尋ねるとスマホをいじっていた悠が「え?」と驚きながら顔を上げる。



「・・・本当に頭でも打ったの?」


「いいからいいから。」



悠からしたら俺が怖い話を聞くのはあり得ないだろうし驚くのもわかるけど説明はできない。ある程度の疑問はわかるけどそこは気にしないでもらいたい。



「んー、別に僕もそういうの集めてるわけじゃないからなぁ。・・・あ、じゃあこれは? この前実習棟がしばらく使えなくなったの覚えてる?」



そう言われて俺は頭をひねる。

確かに使えなくなっていたような気も、、、?



「はぁ、湊は「じゃあしばらく実習なくて楽じゃん」としか関心持ってなかったし覚えてないか。」


「・・・実習だるいからなぁ。ぶっちゃけ教室でずっと黒板眺めてる方が楽。」


「多分それ少数派だと思うよ。」



そうか? 



「まぁいいや、使えなくなったのは生徒同士の殺傷事件があって現場検証してたからなんだよね。でもよく分からないけどあまり話題にならなかったから知らない人も多いかな? ぶっちゃけ学校では話題に上がらなかったし。」



・・・え?殺傷事件って相当ヤバくない?


それが話題にならないで風の噂程度に収まるって一体どういう事?

悠に聞いてもわからないだろうけどさ。



「ま、保護者と学校が協議した結果、話題にならなかったって話だけどね。」


「なるほど? 保護者が騒ぎにしたくなかったってことか?」


「内々で済ませたかったんじゃない? 実際、怪我させあった2人は小さい頃からの馴染みで相当仲が良かったみたいなんだ。そんなことが起こった理由に皆目見当がつかないくらい。」



じゃあ親同士も昔から交流があっただろうな。

それなら騒ぎにしたくないって理由も納得できるかも。



「そこで怪しい噂ね。夜の実習棟の調理実習室で並んでるコンロの火をえーと南側かな?から順に一つ間隔を開けながらつけると『鬼』が現れるって言う話があるんだ。」


「・・・吐きそう。」


「・・・自分で聞いたんだから最後まで聞きなよ。」



鳥肌が立ってげんなりし始めた俺に悠は呆れた目を向ける。てか何そのめんどくさい手順、誰がそんなのやるんだよ。



「2人が前日に「やってみようぜ!」って盛り上がってる話を聞いた人がいたんだ。事件はその翌日に起きた、、、ね? 関連性ありそうじゃない?」


「・・・何が楽しくて鬼なんて呼びたいって思うんだよぉ。」


「そこは人の好奇心ってやつさ。」



ろくでもないね、、、。


でも俺みたいに巻き込まれたとかそういう話じゃなくて自分から突っ込んだなら自業自得か、なら同情はしなくていいや。



「で、その鬼ってなに?」


「いやそこまではなー。確か皮膚が張り付いたような体で顔の歯の部分が異様にデカいって言ってたような?」


「てかそれ誰情報だよ?」


「知らないよ、噂の発生源なんて僕に分かるわけないだろ。」



そりゃそうか、気づいたら流れて気づいたら消えるのが噂だもんね。



「でもお互いに怪我させあったってのがわからんなぁ、それもう鬼関係ないじゃん。」


「んね、それは僕も思った。」



そこで話は終わり、悠は再びスマホをいじり始める。

その隙に俺は心の中でヨルに向かって話しかけた。



(ヨル、今の特徴に心当たりはある?)


【うむ、十中八九『狂餓鬼』じゃろうな。喚び出す方法は時代や場所によって変わるし知らんが、起こった事件と風貌から予想はできるのぉ。】



へぇ、じゃあ灰円から貰ったリストに入ってる怪異が関わってるのか。

それを祓えって言われてるし自分から関わりに行かないとならないのは億劫だけど仕方ない。


うん、来週から頑張ろう。

とりあえず今は英気を養いますか。



・・・・・。

・・・・。

・・・。



「へいおまち!」


「・・・。」



目の前に置かれた盛りに盛られたラーメンを見つめる。


いや知ってたよ?店名は聞いてたしメニューも調べてた。でも量がそれ以上に盛られてるとは思わないじゃん?



「いやー、年々量が増えていくって噂のラーメン屋だけどこれまたすごいねー。」



悠は嬉しそうに割り箸を割ってラーメンを食べ始める。


こいつ細いくせに食べる量は多いんだよな。



いや食えるよ? 多分俺も食べらるけど油で胃もたれは確定だな。



【影に落としてくれれば儂が食べるのじゃ!】



・・・俺に社会的な死を与える気か?



大盛りラーメンをこっそり床に落とす青年とか、ワンチャンニュースに載るか訴えられるね。


と言うかヨルにはまだご飯あげてないしお腹すいたのかな。なんか影の中で変なテンションになってる。

そっと俺の手元の影に落とすくらいならバレないか、、、いや行儀悪すぎだろ。


後で何か買って帰るから許して。



「そう言えば日曜日に琴音さんと買い物行くんだって? 何買うの?」


「とりあえずはスマホを買い与えようかなと、臨時収入が入ったし余裕あるんだ。」


「あー、確かにないと不便だよね。てか臨時収入ってなに? ボーナスとかあった?」



そこら辺は答えずに麺をすする。

悠は首を傾げたが特に気にしないで食べ続けた。



「まぁいいや、2人で行くの?」


「あー、ホントだったら胡桃先輩にも来てほしかったんだけど、バイトあるみたいでさ。」


「・・・君さ、もう少し人に興味持ちなよ。」



え?どういう事?

今の会話に興味なさそうな要素あった?


理不尽な叱責に困惑しながら味の濃くなっていく麺に飽き始める。とりあえず味変をして何とか食べ進めていると、隣に人が座った。


それなりに並んでたし別に隣に人が座ることは何の問題もない。しかしそれが見知った人なら気になるものだ。



「あれ、練茉さん?」


「ひゃい!?」



普通に声をかけただけなのに彼女は飛び上がるように驚いた。

おかげで他のお客さんの視線が集まる集まる。


隣の悠は無視して麺をすすり、他人のふりを貫いていた。


そして声を上げて驚いてしまった練茉さんは顔を赤くしながら俯いて上目遣いで少しこちらを睨んでくる。



「きゅ、急に話しかけないで、ください。心臓、飛び出るかと思った。」


「普通に話しかけただけじゃん。」


「い、飲食店で、きゅ、急に隣の人に話かけられるとか、恐怖。」



・・・言われてみると俺も嫌かもぉ。



確かにご飯を食べに来て隣が知り合いだとしても何となく気まずい。何話せばいいかも分からないしね。



「悪い、邪魔したな。」


「い、いい、私も、変に驚きすぎた。たまには、ひ、人と会話しないと、こ、言葉忘れる。」



・・・仙人か何かですか?



でも確かに練茉さんが他の生徒と話してる姿見たことない気がする。いつも図書室か教室でスマホいじってるイメージしかない。


まぉ特に話すこともないので無言で食べ進めると、「へいおまち!」と元気な声で練茉さんの前に巨大なラーメンが置かれた。



「DXギガ盛り盛り特製ラーメンです!」



俺と悠が食べているものより野菜や肉がはるかに多く、ニンニクと油の量もエグい。

隣で見てるだけで胃もたれしそうな絵面に口の端をヒクつかせた。


見た目は小柄で細いのに彼女は嬉しそうに割り箸を割って食べ始める。


食えんのかな?


興味深く眺めていると、隣の悠に肘で小突かれた。



「・・・混んできたしもう行くよ。」



言われて見るとまた列ができ始めていたので俺は練茉さんに軽く挨拶だけして外に出る。

何とか食べ終えて胃がやけに重くなってふらつきながら、悠と解散してアパートへと帰った。



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