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夜暮れに語る怪異奇譚  作者: たんぽぽ3号


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11/19

相性の悪い相手



「うっま!なにこれ最高なんだけど!」


「ふふっ、お口にあったなら良かったです。」



結局諦めた俺は悠に押し負け、家で遊ぶことを許可してしまった。

あまりに2人で住んでる感のある部屋に悠は口元をヒクつかせながらドン引きし、約束通りひとしきりゲームで遊んだあと夕飯の時間になる。


そして夕飯は琴音さんに3人前(さすがにヨルを見せるわけにはいかないのでヨルはあと。)用意してもらい、謎のメンツでの食事となった。


夕飯の美味しさに悠は驚き、あっという間に平らげる。俺はげんなりしながらモソモソとゆっくり食べた。



「いやー、ご馳走様。こんなに美味しいのが食べられるとか最高じゃんね湊。」


「・・・頼むからほっといてくれ。」


「拗ねるなよー。無理やり探った僕も悪かったけど湊が変に隠すから勘ぐりたくなったんだからね?」


「・・・ちなみにお前が俺の状況だったらどうする?」


「全力で隠すね。」



そりゃそうだよね。気持ちは分かってくれててうれしいよ。


夕飯の片付けが終わると悠はもう少し遊ぶと言ってレースゲームをつけた。

俺もよくやるゲームなので並んで二人で対戦していると、俺の横に琴音さんが座る。


そんな琴音さんに悠は「一緒にどう?」と勧めた。


琴音さんは遠慮がちながらもやりたかったみたいでコントローラーを手に取る。実際、琴音さんに教えた牧場ゲームはすでに俺よりも牧場レベルが高くなっていた。ゲーム自体は案外好きなのかもしれない。


それから3人でしばらくゲームを楽しむと、時刻は11時となって琴音さんが軽くあくびを漏らす。


それを契機に悠も伸びをして解散の流れとなった。


俺は送っていこうと外に行く準備をし、先に悠を外に出させて琴音さんにお風呂はいるよう伝えておいた。ついでに寝てしまってもいいと伝えたので帰りが遅くなっても先に寝てくれるだろう。


悠に追いつき俺達は駅前に向かう。



しばらく無言の時間が続き、悠は「さて」と話を切り出した。



「事情はわかったよ。君がどうして隠していたのかもね、別に言いふらしたりはしないからそこは安心してよ。」


「あぁ、そこは信用してる。むしろ悪かったな、隠してて。」


「あはは、あれは僕だって隠すよ。」



気さくに笑ってから悠はどことなく心配げな目になる。



「それで、本心を聞くけど大丈夫なの? ほら、君ってヘラヘラしてるけど抱え込むタイプだからさ。」


「・・・大丈夫じゃないが、何とかする。キツかったら頼らせてくれ。」


「もちろん、そこは任せてよ。」



湊と悠はお互いに笑い合い、軽く拳を合わせた。

そこから強い信頼は窺える。


が、、、



「・・・で? どこまでいったの?」


「ぶっ殺すぞ。」



友人なんてこんなもんだよな。


俺は深いため息をついて、駅に着く前に自販機で立ち止まる。そこで2人分の炭酸を買って一つを悠に投げ渡した。



「なぁ、近頃ここらへんで不気味な事件とか噂ってあったりするか?」



俺が嫌そうにそう聞くと、悠は心底驚いたように口を半開きにした。



「・・・どうしたの?頭打った?」


「ちょっと気になることがあるだけだ。聞きたくない、めちゃくちゃ聞きたくないけど仕方なくだ。」



怖いもの嫌いなはずの俺がそこまで言うなら余程なのかと、悠は腕を組んで頭を悩ませる。


そして一つ思い出したのか指を上げた。



「実は駅の西口の方にあるビル街の裏路地にね、ポツンと寂れた公園があるんだ。本来だったら誰も使ってないような埋もれた公園なんてすぐに取り壊されるものだけどそこだけは何故か残り続けてる。土地の権利関係だって噂が一番有力なんだけど、そこに関わった人達が不審死を遂げているって噂なんだ。」


「・・・あ、やっぱ聞くんじゃなかった。」



一応、ヨルにもあの紙に書いてある奴は危険って言われたしもう少し緩そうなやついないかなって思ったんだけど危険な匂いしかしない。


俺は西口には行かないようにしようと考え、駅近くまで悠を送った。



「ちなみにその公園がある場所って正確にはわからないんだって、怖いもの見たさでSNSだよりで向かった人が何も見つけられなかったり、逆に全然違う場所でその公園に出たって話も、、、。」


「よしわかったからもういい、二度と聞かないからさっさと帰れ。」



悠は「えー、君から聞いたのに。」と不満そうな声を漏らしながら歩いて家に帰った。悠の家は駅の反対側だからね。


俺は腕を擦りながら足早にアパートへと向かう。



【・・・興味深いのじゃ。行ってみんのか?】


「絶対行かない。やっぱまずは学校にいるのを何とかしよう。たった一体でも何とかすればマシだろ。」



やっぱり必要最低限の怪異を対処しよう、と思い直して歩いていると、ふと周りの喧騒が聞こえなくなっていることに気づいた。



・・・へ? ここってまだ駅近だぞ?こんな静かなことあるか?



街灯が消えていたり、信号だって付いてる。ただただ人の姿だけが忽然と消えていた。



「・・・そういうこともあるか。」


【あるかたわけ。明らかに人払いされておる。】



サラリと受け入れようとしたのに影から這い出てきたヨルに否定された。俺はガクリと肩を落としながら、辺りを見回すと、何か赤黒い槍を担いだスーツの男が立っていた。


真っ赤な髪に夜なのにサングラス。

顔には不敵な笑みを浮かべ、明らかにこちらを見下していた。



「怪異?」


【ではないな、人、それも灰円が言うておった日道連のものじゃろ。】



ヨルは警戒したように俺の手に刀を出現させた。


まったく、物騒な、まずは対話だろ?



「お前が夜暮姫の眷属か?」


「違う。」



・・・・・。


辺りが静寂に包まれる。



「ん?違くないだろ?」


「違う、てかなにそれ初めて聞いた。」



俺はさらにしらばっくれる。

隣のヨルからマジかこいつ見たいな目で見られてるが人は嘘つく生き物なので、、、。


すると赤い髪の男は懐から1枚の写真を取り出して俺と見比べた。



「やっぱてめぇじゃねえか!!」


「写真持ってるとか卑怯だろ!いつ撮った!盗撮だからな!」



相手は青筋を立てて槍を片手に構えながら突っ込んでくる。

それに対して俺は、全力で踏み込んで肉薄した。



ーーズドンッ!



突然の加速に相手は戸惑い、俺を間合いの内側に入れてしまう。俺はそのまま腹に一撃、スネを蹴り上げ背中にエルボをかました。



「ぐっは!!」


【えぇぇー。】



それだけで男は伸びて、白目をむいて気絶する。

俺はパンパンと両手の埃を払いながら男を見下した。



「けちょんけちょんにしてやったぜ。」


【待て、思い切りが良すぎないか? と言うか鎖搦めの時より動きにキレがある気がするのじゃが、、、。】



え、だってただの人間じゃん。

別に怖くないし殴れば痛がるなら楽じゃね?



【・・・人としてどうなのじゃ。】


「鬼に人間のあり方を諭されてる?」



そんなに人としてダメか? ちなみに昔から喧嘩だけは得意というか慣れてる。

人間相手のステゴロだったら負ける気はあまりないね。



ーーズッ!



すると、まるで押さえつけるかのような圧が道の奥から発せられた。

そこには前に見た白い狩衣に白いベリーショートの髪、何故か目に包帯を巻いた人物が立っていた。



「やっぱ術も練れない出仕じゃ相手にならないか。上の奴らが無理やりくっつけてきたけど役に立たなかったな。」



男は片手にジャラっと数珠を巻きつけてにやりと笑った。俺はそっと、赤髪の上から立ち上がり、ゆっくりと後退さる。



「あぁ、名乗ろうか。初めまして、日道連 正階の羽賀見 戎 だ。」


「あ、そう。佐藤 太郎です、よろしく。」



相手に名前を覚えられたくないので適当に偽名で名乗ると、羽賀見は笑いながら器用に青筋を立てた。



「・・・偽名でももう少し凝った偽名にしろや! 縛位 五条 燐鎖縛!」



空中から赤く赤熱する鎖が複数飛来する。

最近迫ってくる鎖見たなーと思いながら、ギリギリを見極めて躱し、拾った石を投げつけた。



バキャ!



「ん?」



しかし投げた石は相手に当たる前に中空で砕ける。

相手はにやりと笑うと、鎖は地面から生えてこちらを囲んできた。


でも縛られた訳じゃないし何とか逃げ出そうと、刀に力を込める。瞬間、グラリと視界が揺れて思わず膝をついてしまう。



「・・・?」



目がチカチカして体がやけに熱い。

ふらつく体をなんとか立ち上がらせようと力を込める。



「ヨル、、、ヨル?」



刀に霧をまとわせようとヨルに呼びかけたが返事がない。嫌な予感を感じて、俺は無理やり刀を振りかぶって囲む鎖を破壊しながら包囲から脱出した。



「ーーっち、おかしな強度と切れ味してんな。」



俺は鎖から解放されて体の調子を確かめると感覚が元に戻っていくのを感じる。すると、背中に軽い重みを感じて頭だけ振り返るとヨルが疲れたように背中にくっついていた。



【・・・あの鎖、近づくと感覚が鈍る。悪いが囲まれると力は出せんぞ。】



ただ縛るだけの普通の鎖じゃない、か、、、。

変に術とか言ってるし特殊な能力があるんだろう。


羽賀見は笑って再び手印を構えてきた。



「破位 十三条 爆点・連蛇炉!」



赤い火の玉が蛇のように連なり、不規則な動きで迫ってくる。俺は横に飛びながら蛇を避けるが、避けきれず軽く火に当たるとチッと明滅して爆発する。



「ーーかっは!」



左半身に火傷を負いながら、吹き飛んだ一部から出る血を抑える。まだ消えてない火の蛇が近づいてくるのをヨルが黒霧を展開して抑えた。


しかし、黒霧の中心から徐々に赤く染まっていく。



「ーーっ、ヨル、治せないか?」


【黒霧が拒絶されておる。治りはするが、まだ時間はかかるぞ。】



痛みに視界がチカチカし、乱れる集中力を頬を張って無理矢理正した。


てかこれヤバイな、恐らくだけど俺達との相性が引くほど悪い。


万全のヨルなら問題ないかもしれないが、今は力をだいぶ失っているらしいし相当まずいな。



ーーゴオッ



霧を燃やし尽くして炎の蛇が首をもたげてこちらを睨む。その横に羽賀見は立ってこちらを見下ろした。



「・・・夜暮姫と契約しててもこの程度、これに灰円様が期待した理由がわからないな。」


「あ?」



羽賀見は笑みを消して片手をこっちに向けた。

俺はどこか失望したかのような反応にイラッとする。

期待も何も知らないし、こっちはこんなに痛い思いしてんだぞ。


そもそも急に襲ってきやがって、、、


俺はジクジク痛む体を無視して無理矢理立ち上がる。

そして手に力を込めてヨルをちらりと見た。

するとヨルはコクリと一つ頷く、その瞬間に全身から霧が溢れた。



薄暗かった通りを暗く染めていく。



「・・・なるほどね。まだ溜め込んでいたか。」



羽賀見は手を合わせる。

すると火の蛇が彼の周りでとぐろを巻き、防御の姿勢をとった。

それと同時に星の瞬きのような火花が彼の周りで散っていく。


全力で足に力を込めて飛び込もうと刀を構え、相手の火花の音を合図に飛び込んだ瞬間、、、



ーーパアンッ!!



突然相手の火の蛇が散った。



「ーーは?」



俺は困惑して思わず足を止め、羽賀見は予想外なのか間抜けな声を漏らす。

彼は手を開いたりして調子を確かめた後、グラリと体勢を崩して倒れた。


あとには謎の静寂と、戸惑う俺だけが残る。



「・・・はい?」


「いやー、危なかったですね。今のは破位 二十二条 迎え火鉢。あのまま突っ込んでいたら粉々になってましたよ。」



そう言いながら突然現れた金髪ショートの少女はこちらに近づきながらピッと親指を切って血を流す。

何をしているのか分からず戸惑っていると、赤い血の流れる指を無理矢理俺の口に突っ込んできた。



「むごっ!?」


「美少女様の血ですよ~、泣いて喜んでください。」



自称美少女ってろくなやついねぇな。


口の中に血の味が広がり眉をしかめる。

入れられた指を噛み切るわけにもいかないので我慢していると、ドクンッと心臓が跳ねた。


すると、さっきまで全然治らなかった傷が瞬く間に塞がっていく。それを確認して金髪は指を引き抜いてハンカチで拭いた。



「おー、流石半分とはいえ鬼ですね。たったこの程度の血で回復するとは思わなかった。」



俺は咽ながら謎の金髪を警戒する。

今目の前に立たれるまで、一切こいつの存在を知覚することができなかった。


目的が分からず、注意深く観察していると彼女はニパッと笑う。



「あっはー、そんなに警戒しなくていいよ。私はオッサン、、、灰円様に手を貸すよう頼まれただけですから。」



俺は知ってる名前が出てきて目を見開いた。



「・・・てことはお前も日道連か?」


「所属はそうですねー。まぁ本山の人間ではないので階級も命も受けてはいませんけど、、、。」



少女は腰に手を当てて誰かを思い浮かべながら馬鹿にするような笑みを浮かべている。



「ハナって呼んでください。敵ではないですよ、ほら現に今も助けてあげましたし。」



ハナと名乗った少女はそう言って俺にを手を差し伸べた。俺はその手を取って立ち上り、焼け焦げた上着を脱ぐ。



「わぁお、大胆、いいカラダしてんね。」


「オッサンみたいな事言ってんじゃねぇよ。」



おぉ、すげえ焼け焦げた傷とか完全に完治してる。

服は黒焦げなのに下の皮膚は無傷とかコスプレかな?



「・・・くそ、ボロボロじゃねえか。」


「それはそうですよ。相手は本山の術師、裸でナイフを持ったプロに殴り合うようなものですから。」



・・・え、そんな開きがあったの?


確かに相当やり辛くはあったけどさ、てかデバフをかけられてるみたいな感覚だった。


ハナはどこから説明しようか、と頭を回している。



「んー、術師、特に呪祓いの専門家は怪異特攻なんですよ。例えばさっきの燃えてる鎖とか、もし縛られでもしたら力は抜けて抜け出すのも難しいはずです。」


【・・・術師は昔からおったが、そこまで苦労した記憶はないぞ。】


「それは全盛期の話でしょ? 夜暮姫のような高位の存在に術なんてただの小細工、余程レベルが高くないと意味なさないから。」



あー、なるほどね。

つまり今のヨルはだいぶ力を失ってるから術の影響を受けやすいのか、、、半分は俺の影響だろうけど。


それならヨルが術に対しての警戒や対処が甘いのも理解できる。道理でやりづらかったわけだよ。



「じゃー、そろそろ退散しようか。眠らせただけだし起きると思うから。」


「・・・。」



てか、結構苦戦したのにこんなアッサリ無力化したこいつの方がヤバくないか?

灰円の仲間って言われてもそもそも灰円自体そこまで信用してないし油断できない。


でも反発しても仕方ないしとりあえず言う事聞きますか。


俺はボロボロの上着を着直した。



「・・・その格好目立つね。少し裏から帰ったほうがいいよ。」


「ん? お前はもう帰るのか?」



勝手について来られると思っていた俺は軽く驚くと、彼女は両手で体を抱えた。



「えぇ?家に持ち帰る気なのー?」


「いや、危険物は適切に処理してもらいたいから警察署かな。」


「誰が危険物だ。」



彼女はヤレヤレと笑いながら、道の向こうへと歩いていく。こちらに手を振りながら最後に、、、



「困ったことがあったら呼んでいいよー、ただ仕事だからお金は貰うけど。ちなみに今回は初回サービス。」



え、金取られるの? 有り余ってるから別に構わないけどさ。


彼女はそれだけ告げて、姿を消した。

あとには街の喧騒が再び蘇り、俺は目立たないように裏道から家に帰ったのだった、、、。



・・・ちなみに琴音さんにめちゃくちゃ心配されました。



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