春の推理2024『未来からのメッセージ』
エル博士は立派な学者だ。研究所で恐ろしい生物兵器の研究をかれこれ2年は行っている。この生物兵器もエル博士が生み出したもので、円柱の巨大なガラスの容器に緑の液体が満たされていて、その中に収納されている
「ククク、成功まであと少しだ!」
そう言いながらエル博士はその生物兵器を見る。緑の体に鋭い牙と頭には奇妙な触覚が二本生えている。そのエイリアンのような悍ましい見た目にエル博士は満足そうだった。
これはエル博士が様々な試行錯誤で生み出した最高傑作になるのだ。
「ん?」
その時研究室のパソコンに何やらメールが届いた。椅子に座りマウスを使ってそのメールを見る。なんだか怪しげな感じのメールで件名のない、ビデオメッセージだ。
「なんだ?こんなメッセージを...誰からだ..?」
そう思いながらエル博士が開くと画面にはボロボロの建物とエル博士に似た男が画面に映し出された。その建物はボロボロで壁も壊れて床にさまざまなものが散乱しているが、よく見るとこの研究所なのがわかる。
『私は未来のお前だ。信じられないと思うが、これは未来からのメッセージなのだ』
「未来からだと?バカバカしい」
『テレビをつけてくれ。きっと宝石強盗が逮捕されているはずだ』
「そんなバカな...」
そう言ってテレビをつける。そこには大きなテロップで「宝石強盗犯人逮捕」とい書かれている。
この強盗犯たちはかなり巧妙でなかなか尻尾を出さず今の今までなかなか逮捕されないままかなりの時間が経っていた。
『そして数分後にチャイムが鳴る。中はこの前注文していた装置の部品だろう』
その言葉から数分後、確かにチャイムがなった。出て見るとそれは届け物で、中身は確かにこの前のに注文していた機械のぶひんだった。
『これで信じてくれるかな?』
「にわかには信じられん..!」
『このメッセージを送ったのは他でもない。これから起こる大惨事を回避する未来を作って欲しいからだ』
「大惨事?」
『お前さんの生物兵器が暴走してめちゃくちゃになってしまう』
「はあ」
にわかには信じがたい言葉だった。あの生物兵器が暴走する?バカバカしい、そんなわけがない...と思いながらも円柱の巨大な容器に入った最高傑作の姿を見る。
「暴走...それが本当なら中止するところだが...」
エル博士はこの実験に人生を注ぎ込んだと言ってもいい。だからこそ、今更中止するわけにはいかないのだ。
『お前...ジジジ...てくれ...ジジジ..』
突然ジジジというような雑音が流れて途中途中で何を言っているのかがわからなくなってしまった。
「おい!雑音で聞こえないぞ!」
『ジジジ...別に2号機を作り出して...ジジジ...お願いだ!2号機を作...ジジジ...未来を...ジジジ...変えて...』
そう言い終わると画面の未来の博士はプツンという音を立てて消えていった。途中完全に雑音のせいで聞こえなかった。
「2号機...」
未来では暴走してしまうので2号機を作り出してそれを止めろということなのだろうか。
なぜ2号機なのかはわからないが、とりあえず未来の自分を信じてエル博士は作業にとりかかった。
「完成だ!」
そう言いながらエル博士は嬉しそうな顔をする。目の前には円柱に入った完成した生物兵器だ。そしてその横には未来の自分の言う通り暴走した時のために2号機を作り出した。
2号機も同じようなデザインだが爪や歯など色々なところを発達させた。
「2号機は全てを喰らい大きくなって行くように作った。これならば暴走を止める役は十分だろう」
「さあ、動かすぞ...」
緊張しながらエル博士はボタンのスイッチを押す。ガラスの容器が動き出し、中に入っていた液体がこぼれ出る。ガラスの囲いがなくなり生物兵器は目を開けて動きだした。
「おお!完璧じゃないか!そうだな...とまれ!」
その言葉にその生物兵器は動きを止める。ちゃんと動くしちゃんと指示にも従ってくれる。今のところは暴走するようなことはない。
「なんだ大丈夫じゃないか。そうだ名前をつけてあげないとな...R228と名付けよう!
「さて、暴走する気配もないが、このまま閉じ込めておくのも可哀想だ。2号機にも出てきてもらおう」
2号機はR228の暴走のために作られたため出す必要は無いのだが、可哀想だと2号機のボタンも押した。
「グルアアアアアアアアアアアアアア!!」
「おい!」
2号機は出てくるや否や暴走を始めた。鋭い爪や歯で壁を壊し機材を破壊し始めた。
「やめろ!!R228b!止めてくれ!」
その命令にR228は従うが、簡単に返り討ちにあってしまう。もともとR228が暴走した時のために生み出したものなので戦闘能力も桁違いだ。
「お、おい!」
「グルアアアアアアアアアアアアアア!!!」
そう言いながら天井を突き破り、どこかに行ってしまった。それから数時間も経たないうちに近くの街などを破壊し尽くして人類を滅ぼす勢いになった。
レンガや木などを食して大きくなる。その大きさは2倍、3倍、4倍と大きくなって行きあっという間に高層ビルと同じぐらいの大きさになってしまった。
「大変です!謎の生命体が人や街を襲って行きます!!できるだけ避難をしてください!!」
そのニュースを聞いて力が抜けて椅子にもたれかかる。どんなものも受け付けないボディに何でも引き裂けるほどの爪と全てを噛み砕く鋭い歯。あれが暴走してしまった以上、もう止める方法はない。もう破滅を待つしか無いのだ。
「そうか、あれは2号機を生み出すなと言うわけでだったのか。ははは、なんて愚かな...もう今は終わり...っ!」
何かを思いついたのかエル博士は「そうだ!いまがダメなら!!」と言って唯一破壊されずに生き残ったパソコンを開き何やらカタカタとキーボードを打つ。そしてパソコンに向かってエル博士はこう言った。
『お前は今作っているモノとは別に2号機を作り出してしまうだろう。お願いだ!2号機を作ってはいけない!そいつが暴走して未来を破滅に導くのだ!だからすぐに2号機の作成を中止して未来を変えて...』
過去の自分に未来を託しながら。