卯が好きな虎
「ねぇ寅。辰はいつになったら私に本気になってくれるのかしら?」
辰と卯が報われる前年の12月31日、卯は虎に問いかけた。
「だからなんでそれを俺に聞くんだよ!!俺はお前のことが好きだって言い続けているだろ!勘弁してくれよ…」
「肉食動物の次に干支を担当するってだけでも恐ろしいのに付き合うわけないでしょ。何度断ったと思っているのよ。早く他の子にいきなさい。」
「俺がお前を食うかよ!いや別の意味で食うかもしれねぇが…」
「ほらやっぱり食べるんじゃない。私はこの先もずっと干支の仕事を続けていくつもりだから死ぬのはごめんなの。」
「そういうつもりじゃ…」
「どういうつもりよ。」
「いや、俺が悪かった。諦めるように…する。ってか辰もお前にゾッコンだと思うけど?敵に塩送るみたいであんま言いたかねぇが。」
辰は12年毎に卯に想いを伝えている。
卯のことをずっと見てきた寅だからこそ、卯は辰の何が不満なのか分からなかった。
「辰の隣に立てる自信がないわ…私は初めて辰を見た時なんて格好良いお姿なの!?と思って辰年を一年追いかけてみたの。そしたら人々の活力を上げ、大きく成長させるよう勢いを付け、世界中を活性化させていたわ。一方私は飛躍の年とか言ってぴょんぴょん跳ねていただけ。こんな私のどこを好きになってもらえると言うのよ。」
卯は感情的になって寅に思いをぶつけた。
「その、一生懸命ぴょんぴょんしているのが可愛いんじゃね?コツコツ努力を積み重ねるのがお前の良さなんじゃん。優しく温厚なうさぎのイメージからお前は少ーしばかり離れているけどな。」
寅は言い終えるとガハハと笑い声をあげた。
「本当一言うるさいわね。ほら、もう1月1日になる。寅、私と交代よ。一年間お疲れ様。ゆっくり休んでね。私がしっかり引き継ぐから。」
「んもー!そういうとこ!そういうとこなんだよー!」
「何が?」
「もういい、卯、この1年頑張れよ。次こそ辰に素直になるんだぞ。」
「…わかったわ。1年かけて考えてみる。」
次の12月31日こっそり卯と辰のやり取りを見ていた寅の心は無事、弾け飛びましたとさ。