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妹は変わってしまった。無論兄も。

お兄さん、君の妹は魔王のペットになります。

返答はいかにっ!?

「俺の妹はこんなにポンコツじゃなかった!!!」

「お前だっっ!お前に会ってから妹はっ、変わっちまったんだ!!!」

「責任取って俺らの飼い主になれっ!!!」


 なんでこんな気色悪いことになっているかというと、時間は少しさかのぼる。






「なんでフード外すんだよぉぉぉぉっ!!」


 泣き叫ぶような声で、妹のポンコツさを嘆く兄、ジャガー。ザ・ワイルドみたいなキャラが四つん這いになりながら床を殴っている。


「床が壊れるだろうが、やめろ。」

「あ、はい。」


 すぐに俺の声に従うように元の正座の姿勢に戻った。ナニコレ、面白い。


「ペット欲しくないですか?」


 そして俺に縋りつくように足元に居座る猫っ娘。いずれにせよとんでもない美少女が俺の太もも周りを徘徊するのは大変よろしくないので首根っこを掴んで遠ざける。それを充血した瞳で見つめてくるエリスさん。怖い怖い。


「いや、流石に人をペットにするのは倫理的に、ちょっと。」

「大丈夫です、メイドみたいなものです。」

「俺雇うお金とか持ってないし。」

「無給で働かせてかまいません。」

「ほら周りからの眼とかもあるわけだしね。」

「無論、私が黙らせてきます。」


 強いっ!!

 強いよ圧が。


 何言っても全部無茶苦茶な方法で返されるんだけどっ。


「妹は変わってしまった。」


 そして床を見ながら、小さく呟くように語り始めるジャガー君。


「俺と過ごした間、妹がこんなに喋ることはなかった。」


 うんうん、と頷きながら同調する妹さん。いや、そこ同調しちゃダメな部分。そして喋らなかったって、え?


「あんたが妹を変えてしまったんだ!!!」


 そして冒頭に戻る。






 気色悪いジャガーをキック(弱)で蹴り飛ばして、話を進める。


「しかし、お前さん。その銀髪に輝く金の瞳。もしや銀虎族か?」

「その通り。」

「銀虎族?」


 爺さんの呟いた聞いたことのない名前。というか、このエロゲに種族名なんてあったのかと衝撃の事実に驚く。


「月の下で輝く銀の毛並みに、最も続く古くからの血筋。陸上での二大強者のうちの一つ。まさか彼女が噂に聞く伝説の種族とは。」


 ということは、兄弟であるジャガーも銀虎族というわけか。


「兄と一緒にここまで逃げるように生きてきたから、ご主人に守ってほしい。」

「その割には、四天王の座についてましたけどね。」

「ランドの命令でいやいや、やらされて。」

「楽しそうにしか見えなかったのですが、」

「もう私たちには後がない。」

「ご自分の里に帰ったらどうでしょうか?」


「「あ’’っ?」」


 二人の美女がしてはいけないような顔でメンチ切りあっていらっしゃる。美人が怒ると怖いというが、後ろにオーラのようなものが見える。虎VS鬼のような構図が目の前で繰り広げられていた。


「でも、切羽詰まってるっていうのはあながちでたらめでもない。」


 先ほどのダウンから復活したジャガーが痛そうに腹をさすりながら、なんでもないように話に混ざる。吐きそうな顔で。


 なんか、ごめん。でも気持ち悪かったんだ。


「俺たちがまだこの国にたどり着く前、」


 ジャガーは聞いてもいないのに自分たちの話をし始めた。えっ、これ最後まで聞かないといけない感じ?




Side:ジャガー


 銀虎族。大陸に住む亜人たちの中でも、強大な種族に数えられる俺たちは隠れ里に住む一族だった。特に理由なんてものはない、いつの時代かの祖先がロマンがあるよねという思い付きから生まれたのがこの隠れ里。


 理由はふざけたものであったが、もともと伝説の一族やら数を増やした人間どもが俺たちの体が高値で売れるやらで、しょうもない争いを嫌った俺たちは都合がよかったのでそのまま世間から離れるようになった。まあ先代の意向を尊重した理由もあるがな。


 そんなのどかな日々がずっと続くと思っていたら、あいつが来たんだ。




「あいつ?」


「スライムだ。」


「馬鹿な、スライムごときに何を怯える必要がある。」


 スライム、この世界では最も弱い生物とされるモンスター。液体の体の中にある核を潰せば死ぬ。または核から液体を除いても死んでしまう。


 最近あったものでは、熱い日差しの中で干からびて死んでいたなど、世界の一般常識として教えられるくらいにはスライムは弱い。


「…少し語弊がある。あれは変異種だ。」

「何っ!?本当かっ!?」


 ゾルディスがその目を見開き、事実を確認する。帰ってきた返事は確かな頷き。


 変異種、厳しい自然界の環境の中、主にモンスターがひときわ異質な進化を遂げたもののことを指す。今までの歴史の中でスライムの変異種など聞いたこともない。


「確かだ。俺たち銀虎族は全員そいつにやられた。」


 確かな古代の強力な遺伝子を受け継いでいる種族が倒された。それは大きな衝撃だった。


「俺も妹も無我夢中で走って逃げたよ。家族を置いてな。」


 悲観そうに話すジャガーに同情の気持ちがその場にいるものに宿り始める。


 そのまま逃げ続けて、たどり着いたのが今のランドが支配していた魔王城だったとジャガーは語った。その後兄弟で魔王軍兵士募集の案内を聞いて、予想以上の地位についてしまったという。


「しばらくの間、命令を聞いた後は適当に姿をくらますか、うまく泳がしてスライムとつぶし合うように誘導してもよかったんだがな。予想外の事態があった。」


 そう言いながら、こちらを見つめるジャガー。同じくこちらを見る皆様方。誰もが納得したように首を縦に振る。ひどい評価だ、撤回を要求したい。そう思いながら、ジャガーを睨むとすぐに視線をそらされた。


 しかしそんな事情があったとは。正直俺的にはどうでもいいが、エリスやゾルディスがどう思うのかによるとしか言えない。あと先ほどから頭を擦り付けてくるこの美女猫をどうにかしてほしい。


「それでなんだが、交渉をしたい。」

「交渉だと?」


 ジャガーの提案にゾルディスとエリスが険しい顔を浮かべる。


「一度陛下に負けた分際で、交渉とは大きく出たものですね。」

「陛下には負けたが、あんたらには負けてない。」


 二人の意見に堂々と反論するジャガー。ちなみに陛下ってもしかして俺のこと?まだ俺了承してないけど。そんな俺の葛藤とは関係なく話は続く。


「俺があくまで敗北を認めたのは陛下だ。だからといって、ランドに逆らわず逃げた二人に大きく出られるのは癪に障る。」


 ジャガーの強めの殺気に、臨戦態勢に入るゾルディス、圧されながらも毅然とにらみつけるエリス。


「ステイッ!」

「はい。」


 カイザーの一声に即座に正座するジャガー。






 静かに、しかし堂々と胡坐の状態に戻すジャガー。少しぴくぴくしているのが気になるが。カイザーとの間にしっかり根付いた主従関係が獣の本能ゆえに反応してしまうのだ。

妹に「オス落ちしている」と呟かれる始末。やかましい。


 そんなやりとりのせいで、二割ほど威厳が下がったが誰も口出しすることはなかった。。


特になし、そう思っていた。

いや、何もなかったです。

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― 新着の感想 ―
[一言] …オス落ち…あまり聞きたくなかったパワーワードw そこは屈服とか服従とか臣従とかで良かったんでは? 妹ちゃんよ(苦笑)
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