プロローグ
俺ってさイケメンだと思うんだよね。
このサラサラの黒髪、男にしては線の細い顔の輪郭、キレのある目、そしてスラリとしと高い身長。
そんな俺を誰がキモイと言い切れるだろうか?
「き、貴様ぁ〜。覚えてろよ」
「嫌、すぐに忘れる」
そう言って俺に背を見せる少女。年齢はおそらく俺と同じ高校ぐらいだろう。しかし俺の目を引いたのはあどけなさの残るクリクリな目と、何よりも大きく発達した胸だ。
さきほど、一目ぼれした俺は即刻ナンパに出たのだが断られるだけではなく少女はこう言ったのだ。
「キモイから消えて」
許さん。
絶対に許さんぞ。
俺は少女の腕を掴む。抵抗されると思ったが意外にも少女はおとなしくしていた。
ふっ、何だ? 照れていたのか?
そう確信し、少女の瞳を見つめてみる。目が合うと少女は俯きがちに目を逸らした。そのまま制服のポケットに手を入れ何かゴソゴソしている。そして……携帯?
「もしもし、警察ですか?」
「ちょ」
俺は少女から手を離し回れ右をした。
かろうじて逃げることの出来た俺は本来行くべき高校に登校した。将来の夢など五年前にあきらめた俺にとっては何の価値もない勉強をする場所。しかし俺はここにしばらく潜むことにした。
「おっ珍しいな。原田が暗い顔をしてるぜ」
俺を原田とタメ口で呼んでくるこいつの名前は――
「佐藤」
「おう、何だね同志?」
日本にもっとも多い苗字ナンバーワンを持つ男佐藤はニヤリとする。こいつも俺と同じように勉強に関して全てを諦めた仲間である。悪友といった方が正しいか。
「今日さ、可愛い子見つけたんだよね」
「おおっ、僕にも紹介してくれよ」
同じ不良でも俺と佐藤は違った。佐藤は俺のようなチャラ男じゃないし、何よりもイケメンじゃなかった。
招来の夢=エロゲー創作。
そんなことを自己紹介でギャクではなくマジで言い切ったことには本当に感心している。だが、俺とお前はまったく違う人種だ。分ってくれ、と俺は佐藤の肩に手をポンと置く。
「何だよっその気にするなみたいな同情のこもった行動は!?」
しかも佐藤は被害妄想が強くクラスでのノケモノと勝手に思い込んでいる。実際、俺以外の奴とまともに会話をしないのでそれは事実なのだが。
「俺は友達としてお前にいつも同情しているのさ」
「嫌な友情だな……」
佐藤は苦笑いを浮かべた。
「まあ、その可愛い子がこの俺を振ったんだ」
「嘘だろっ、顔に騙されてちょっと付き合ってみたら即効破局ってのがお前のワンパターンだったろ!?」
「破局っていうな! それにこの俺を性格で判断するようじゃ女として終わってるぜ」
「それは顔で人を判断することを肯定するセリフだね……」
「その通りだっ、顔こそが人の全て。性格など無用っ」
故にイケメンたる俺は全てにおいて無敵。
「なあ、原田。お前、僕に喧嘩売っているよね?」
佐藤はニキビ面でタラコ唇の乗った顔を近づけてきた。
「すまない……お前が指折りの不細工ってことを忘れていたよ。気を使ってなくてスマン」
「不細工とか口に出すなよっ、まずそこから気を使えよ!?」
「あ、ホームルームの時間だ」
「無視かよっ」
拗ねた感じで佐藤は自分の席に座り、そのまま何の躊躇いもなく机に突っ伏した。
「ヤレヤレ」
俺も担任が来る前に着席する。
「オッハー、原田」
「おう」
俺に話しかけてくる数少ない友人。これも悪友といった方が正しいか。長い髪は茶髪に染められ、爪はマネキュアでキラキラしている。
「あんたさー振られたんだって?」
「盗み聞きすんなよ」
フルネームは赤塁 里美
隣の席がこいつってのが致命傷だった。睡眠をとろうとしても改造して音の出なくなった携帯のカメラで俺をとろうとするや、財布の中身を勝手にとろうとするや。
おかげで俺は佐藤のように睡眠をとることが出来ずに無駄に真面目に授業を聞いている。
「で、どうなのよ? 私より美人だった?」
「ああ」
皮肉をこめて頷いた。
もちろん里美があの少女に劣るとは思わなかった。というよりまったくタイプが違うといった方が正しいだろう。
「はあ? あんたの目って節穴ねぇ。この私より美人がいるわけがないじゃない」
去年、芸能界の人間にスカウトされた経験も拍車をかけて里美をナルシストにしている。
「だから、私と付き合おうよお」
甘えた口調になる里美。
「人は顔と性格な」
「さっき言っていたことと違うよっ、顔さえ良ければオーケーなんでしょ!?」
「あ、それ男だけな」
「絶対自分擁護しようとしてるよね?」
「そんなことはないさ」
「もういいっ」
ツンとそっぽを向いてしまう里美。その姿が俺の目の保養となっていることは黙っておこう。
最近、積極的に里美が俺に対しアプローチを仕掛けているのが多少気になるが、全部あいつの冗談だと認識しているのでこちらも適当な理由で受け流している。
里美がダウンしどうやって暇を潰すか悩んでいたところで担任が現れた。
「おいおい、みんなグテグテかいな。うっしゃーテンション上がってきたでー」
月曜の朝のみんなのテンションの低さを目の当たりにしてもなぜか勝手にテンションを上げていく関西弁の担任。
「ではでは、今日はお前らのテンションも上げたるわー。今日はな転校生や。しかも……美人や」
担任の声で男子達の目に光が灯る。
佐藤はといえば「美人? メイドさん? 巨乳?」などと意味不明な単語を発していた。
「では入場や〜」
ハイテンションの担任の声とともに教室に入ってきたのは、先ほど俺がナンパに失敗した少女だった。
「照須 沙里香 (てらす さりか)です。よろしくお願いします」
そんななんの変哲のない挨拶にもその容姿が災いしてどよめきが起こる。
「かわいい……」
俺の後ろの席の奴が呟いた。俺がニヤリとしてやると、恥ずかしいことを言ったといわんばかりに頬を染める。
安心しろ。俺はお前よりももっと恥ずかしいことを言ってやるからさ。
「久しぶりだな〜。三年ぶりだな〜。変わってないな〜お前」
俺は立ち上がり沙里香に向かって叫んだ。
さっきはよくもこの俺に対しあのような愚かな行為に走ってくれたな。
「なんや? 運命の再会やな」
「ち、違います。あんな奴忘れました」
必死に弁明しようとする沙里香。
「忘れたって言ってる時点でもうお前は俺のことを知っていると言っているようなもんだ」
「くぅ」
沙里香が言葉を探すように視線を泳がせる。
群集が殺意の視線を俺に放つ。が、俺にとってはそんなもの周りを飛ぶハエのようなものだ。悪いが沙里香は俺がもらっていくぜ。
「あっ、思い出しました。彼は三年前私をストーカーしていた変態です」
「何!?」
そう切り返されるとは思わなかった。
しかも周りもなぜか納得している。そんなところだろうね、とか言ってんじゃねえぞ!?
ニヤリと沙里香が微笑を浮かべる。
「おのれっ」
今回はしてやられたが、お前は俺と同じ高校に入学してしまった。必ずやお前を俺のものにしてやるぞ。
つまらないの一言で済まされる学校生活に光が差したような気がした。
笑える作品を目指して執筆を開始しました。ぜひ、自分のギャグのセンスを知りたいので心優しき方達。どうか感想をお願いします。




