第18話 アサシンの過去2
いつもクロ、セナ、マルクは毎日ゲームを考えては、勝負をしていたが決着はつかなかった。
「なかなか決着がつかないな。というか、いつもクロはカクレンボばかりだけど、今日は違うの考えてきたんだろうな?」
マルクがクロに問いつめる。
「仕方ないニャ。ミャーにとって有利になれるのがこれしかないニャ。でも、今日はちゃんと考えてきたよ」
「……不安だけど、試しに言ってみろ」
「魔物討伐数を競うニャ!!」
セナもマルクも開いた口が閉じなかった。
「それは無理よ、クロ。私とマルクは魔物と戦ったことが無いんだ」
「そ、そう……だよね……」
クロのネコ耳がペタンと垂れ、沈んだ顔になる。
「オマエ、そのあざとい表情、わざとやってないか?」
クロは首をかしげる。
「あざとい? どういう意味ニャ?」
「何でもない。オマエがそんな難しい単語知っているわけがないよな」
「ば、バカにするニャ!」
マルクに怒り出すクロをなだめるように、セナが提案した。
「まあまあ。いいじゃん、マルク。カクレンボやろうよ」
「姉さん! どこに隠れたって、コイツ、匂いで見つけちゃうじゃん。俺達が鬼しても木に登るわ、湖の深いところに隠れたり、見つけられない場所に隠れるんだぜ」
「はあ、男が弱音をはくなんて……。クロの前で自ら好感度を下げていくとは。いや、むしろ、好きだからこそ突っかかりたくなっちゃうのかな?」
セナがマルクの肩に肘をのっけながらからかう。
「ちょ、ちょっと姉さん、黙ろうか? わ、わあったよ、やりゃ良いんだろ、やりゃ」
マルクは渋々、カクレンボに参加するのだった。
※
「また、クロが鬼か。見つからない場所は……」
マルクはひたすら走り、森の奥のほうに入っていく。
木々が生い茂っていくる。
マルクは自分の場所が分からなくなった。
「ど、どこだ、ここ? 森の奥のほうに来すぎたか……」
周囲を眺めながら、マルクは恐怖を覚え始めた。
「お、おーい! クロ、セナ! 近くにいたら返事してくれ! 道に迷ったッ!」
情けないと感じながらも声を張り上げるマルク。
しかし、それが失敗だった。
1匹の魔物が森の奥のほうから現れた。
全身ケムクジャラで異様に尻尾が長い化け物が姿を現す。
「ゥ、ウアアアアアアァアアアアアアアアアアァァァッ!」
マルクは叫びながら走り始めた。
『グァアアああアアアアアアアアアアアアァァァアアッッッッ!!!!』
化け物は尻尾でマルクの脇を強打した。
鈍い音とともにマルクは巨木に打ちつけられる。
「ぐ、グハァッ! ウォエッ!」
マルクは嘔吐し、両手であとずさる。
ガサッ、ガサッ、と落ち葉を踏みつけながら化け物が近づいてくる。
「ウッ、ウッ……。来るな、来るなよ……」
マルクは声にならない小さな声を発する。
『グルルルルっルルルルルルルルル…………』
化け物の牙からよだれが垂れる。
あとずさっていたマルクの背中が木に当たった。
「「マルクッ!」」
声のしたほうから、ダガーが迫る。
しかし、化け物には当たらず、地面に突き刺さった。
化け物は気にせずマルクに近づこうとするが。
1歩も動けなくなっていた。
「『影縫い』」
クロがマルクの前に立った。さらにクロを追いかけるようにセナも姿を見せる。
「く、クロ……、どうして……」
「マルクの匂いを追ってきたニャ! 逃げられるかニャ!?」
マルクは頷き、化け物から離れていく。それを確認したクロは腰に下げたダガーを取り出す。
『グァアアああアアアアアアアアアアアアァァァアアッッッッ!!!!』
化け物の尻尾がクロを襲った。
尻尾の下をくぐりながら、クロはダガーで細かく切り刻んでいく。
『ギシャアアアアアアアアァアアアァァァアアアアアッッッッ…………』
化け物は絶叫を上げるも、クロに突っ込む。
「影にまぎれて標的を襲う、『影移動』」
クロの足元には木の影があり、そこに靄が生じる。
その中にクロは沈んでいく。
化け物はそのまま木の幹に突っ込んだ。
「今ニャッ!」
化け物の影に靄が生じ、そこからクロが飛び出した。
そして、化け物の頭上からダガーを首に刺した。
「これで終わりニャ!」
クロは、暴れまわる化け物の首にダガーをねじこませた。
『キシャァァァァ………………』
すると、化け物は力なく倒れ、クロは地面を転がった。
セナがクロにかけよる。
「「く、クロ!?」」
マルクとセナがクロに近寄る。
「み、ミャーは大丈夫ニャ……。マルク、ケガしてないかニャ?」
「あ、ああ。へ、平気だ。クロ、すまない」
「気にしないでほしいニャ。ミャーがカクレンボしたいなんて言ったからだし」
マルクはゆっくりと立ち上がったが、クロとセナは気まずそうにマルクから視線を外した。
「ま、まあ、怖かったよね。私だって同じ立場だったらそうなるかも」
「ミャーがもっと早くかけつけてれば、そうならなかったニャ。ご、ごめん……」
「な、何を言って………………………………………………」
マルクは自らの視線を下に落とした。
恐怖のあまりやらかしていたようだ。
それからマルクはしばらくの間、自室から出てこれなくなったのだ。
※
クロとの交流が1年以上続き、セナとマルクはどちらも彼女に好意を抱いていた。
2年が経とうとしていたある日、事件が起きた。
「クロエ様が亡くなった……」
第3王女、クロエが亡くなった。
突然の訃報だった。
クロエの葬儀に国民全員が参列し、その中にクロの姿を姉弟は見つけた。
「おい、声かけようぜ。きっと落ち込んでるだろうし」
「ダメよ……。クロのあの顔見て、分からないの? 今、話しかけて慰めようとしても裏目に出るかもしれない」
「珍しく引け腰だな。姉さんらしくない」
「私だって話しかけるタイミングくらい心得てるわよ。私達が同情したところで、クロに無理をさせるだけ……」
「わかった。もう少し落ち着いてからにするか……」
ここでクロに話しかけなかったことに彼らは後悔した。
その日からクロは引きこもってしまい、2人の前に姿を現さなくなった。
※
姉弟はいい加減クロのことが心配になって、城の前まで行った。
「おい、ここを通れるのは王族と兵だけだ」
がたいの良い男の兵が立っていた。
「いいじゃないか! 俺は第7王女・クロの友人だ! 通してくれよ」
「ダメだ。王族と兵以外通してはいけないことになっている」
マルクは食い下がろうとするが、それをセナは止め、引きずりながら城門から離れていく。
「行きましょ。ここにいても仕方がないわ」
「何言ってるんだよ!? これ以外に方法ないだろ!?」
「いいえ。時間はかかるかもしれないけど、あのオジサン、《《兵》》になれれば、あそこを通れると言っていたわ」
「本気で言っているのか、姉さん?」
マルクの言葉に、セナは厳しい顔で。
「もし今回、城でクロに会えたとしても、これからいつも会えるとは限らない。だったら兵になったほうが会える機会が増えるわ。それに……」
セナは先日のことを思い出しながら。
「クロはマルクを助けてくれた。今度は私達がクロを助けられるように強くなるべきだと思う」
「……わかった」
セナの言葉にマルクも頷くのだった。
※
それから姉弟は魔物を討伐してどんどん強くなった。
そんなある日。
サザンとカルバが協定を結んだ。
しばらくして、2人は15歳にして、サザンの軍に入ることが認められた。
「やったな! やっと俺達、軍に入れたぞ、姉さん!!」
「ええ、これでクロにも会えるわね!」
2人とも、そのことに本気で喜んだ。
しかし、彼らはこのとき待ち受ける苦難に気付けなかった。
※
ある日、セナとマルクはとある部隊に配置された。
「君達がセナとマルクか? ようこそ、暗殺部隊へ。私は隊長のゲルダだ」
ゲルダは今の王族の親戚にあたる人間だった。
小太りで怪しい笑みを浮かべていた。
マルクがその男に尋ねる。
「この部隊は何の部隊だ?」
「暗殺部隊と言っただろう。君達の得意分野だろ」
セナのほうがゲルダに怒りを露わにする。
「私達は暗殺するために修行してきたわけじゃないわ!」
「そう言われてもな……。君達の実力を王族が認めたからこの部隊に入れたんだがな」
「王族が……」
セナはクロの姿を思い浮かべる。
「姉さん……」
「ここは抑えるべきね。私達の目的を忘れる所だった」
※
そして、ここから本当の不幸が始まった。
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