第13話 暗殺者との激闘
30分ごとに1話ずつ、合計6話投稿します
「どこから……!?」
周囲を見渡す暇もなく、次の攻撃が来た。
4人の女性が屋根に現れ、彼に襲い掛かった。
「ナッ!?」
少年は驚くが、冷静に女性の攻撃をいなしいていく。
攻撃をいなされた女性達はそれでも少年に挑む。
「まさか獣人である俺とここまで打ち合えるとはな」
少年は女性の攻撃を、身体を回転させることで、かわしながら回し蹴りを女性の脇に打ち込む。
その女性は屋上から出店のテントに落下した。
「きゃああああああ、何かが落ちてきた!」
下にいた人々が騒ぎ出した。
その騒ぎを聞いていた少年に別の女性が短剣を突き刺そうとする。
少年は躱しながら、女性の腹部に肘を打ち込んだ。
「クッ!」
「吹っ飛べッ!」
女性は屋上を何度もバウンドしながら、屋上の端で落下するギリギリの位置で踏みとどまった。
3人目と4人目の女性が間髪入れずに攻撃をしてくる。
3人目の女性の攻撃を脇をすり抜けるように躱した後、その女性の首を手でつかみ、4人目の女性にぶつける。
たった一瞬で4人の女性を倒した少年は口を動かす。
「天駆ける鳥より速くあれ、『ウィンド・ブーツ』」
少年の足に魔力が集まり、彼はそのまま屋上から跳躍した。
そのまま幅の広いストリートをひとっとびした。
ストリートの上空を飛びながら少年は。
「……これで終わりじゃないな。急いで離れたほうが良いな」
向かいの建物に着地し、さらに屋上から屋上に飛び移っていく。
「ここまで来れば……、それより弓の使い手は……あの搭か」
すると、少年のいた建物の屋上に影が現れた。
「逃がさないニャ!」
褐色肌でネコ耳の少女・クロが両手にダガーを1本ずつ握りながら接近する。
少年は咄嗟に腰から短剣を抜き取り、応戦する。
クロの不意打ちに、反応が遅れた少年はクロから打撃を食らう。
「グハッ! グへッ! カハッ!」
獣人は常人より何段階も速い。
仮に人間が1回殴る間に、獣人なら4発撃ちこむことができる。
そのすさまじい打撃に応戦することができず、少年は屋上を転がる。
「クッ、こんなところでオマエと闘うなんてな」
少年は短剣を構えなおし、クロとの距離をつめていく。
その速さについていけず、クロは押され始める。
しかし、クロは彼の腕を掴み背負い投げをしながら、地面に打ちつける。
「グハッ!」
クロは少年の腕を掴んだまま放り投げた。
「まさか、ここまで強くなってるなんてな」
「……どういうことニャ?」
「こういうことだ!」
少年は短剣を3本ずつ両手に持ち、クロに投げつける。
「ニャッ!?」
クロは上体を後ろに倒すことでかろうじて短剣が顔のすれすれを通り過ぎる。
「それは悪手だ、クロ」
少年はクロの目の前に迫っており、上体を倒しているクロの腹部に拳をめり込ませる。
「クハッ!?」
屋上に打ちつけられ、吐血したクロに少年は短剣を向ける。
「…………逃げてくれ、クロ」
クロが少年を見ると、彼の短剣が握られた手は震えていた。
クロは寝っ転がった状態で床に両手をつき、バク転しながら少年の顔に蹴りこもうとする。
少年は躱し、互いに距離を取った。
「どうしてミャーの名前を知っているニャ?」
「オマエには気付いてもらいたかったんだが、やっぱ無理か……」
少年は短剣を構えなおす。
クロは口から血を流しながらダガーを構える。
「ここからは手加減できないぞ、クロッ!」
少年は屋上を駆けながらクロに近づいていく。
少年はクロの懐に潜り込みながら膝蹴りを打ち込む。
バランスを崩したクロに少年は追撃をしかけようとする。
「クロ! 頭を下げろ!」
即座にクロは膝を曲げる。
クロの頭の上を剣が通り過ぎる。
「クソッ」
少年はその突きを防ぐが、それによって短剣が砕かれる。
少年はすかさず距離を取る。
「……テメエ、何者だ?」
少年の視線の先に、鎧に包まれたカイがクロを抱きかかえながら、剣先を敵に向けた。
「キリアの王子・カイだ。オマエこそ件の暗殺者だな?」
「ああ」
「アッサリ認めたな」
「こんな事件を起こしながら、『違います』なんて言ったって信じないだろ。キリアの王子か……。オマエがサザンの王女を助けたってな」
フードからのぞく少年は微かに笑いながら、
「ここからは第2ラウンドと行こうか。そこの女は邪魔だ。俺はテメエと戦いたい」
「目的は暗殺じゃないのか?」
「……テメエがサザンの王女に相応しい男か確かめる」
少年は質問に答えず、カイに攻撃を仕掛ける。
「クロ、オマエは後ろに下がっていろ」
カイは剣を構え、迎え撃つ。
少年の動きはクロと戦ったときと違い、躊躇がなかった。
「サザンの王女より弱いんじゃないのか!?」
少年の蹴りがカイの背中にめり込み、よろけた所にさらに別の方向から蹴りを打ち込む。
「やっぱり速いな」
終わりの見えない連撃をカイは見極めることができない。
『魔甲』によって衝撃を緩和するが、反撃にふみこめない。
「オラッ、オラッ! どうした!? やっぱキリアの王子と言っても所詮人間。獣人には勝てねえか!」
カイは剣を振り抜く。
少年の脇から血が流れでる。
カイは脇をおさえる少年に向けながら。
「なんでダガーを使わない?」
少年が攻撃をするとき、蹴りと拳だけで、ダガーは使っていなかった。
「……ダガーなんか使って一瞬で終わったらつまらないからな」
「それだけか?」
「……邪推するな」
少年は腰から短剣を取り出しながら、カイの足元に投げつける。
そして片手を前に突き出しながら、
「『クリエイト・ライト』」
少年の手から光輝く粒がカイに向けて放たれる。
カイは両目を閉じようとするが、
(……か、身体が……)
カイの身体が動かなくなる。
少年はダガーを構えながらカイに近づく。
「オマエにはサザンの王女は守れない」
少年がダガーを横に一閃しようとする。
「ナッ!? クソがッ!」
少年が苦痛の声を上げるが、カイには光が強すぎて視界の先がどうなっているか分からない。
魔法による光が収まると、少年は左肩をおさえている。
屋上に矢が刺さっていた。
束縛から解放されたカイ。
「ラミアか!? ……助かった」
「……嘘ニャ……」
少年が矢に穿たれた際にフードも落ち、素顔が明らかになった。
クロが両目を見開く。
「なんで……」
「……クッ。ここまでか」
少年は屋根を走り逃げていく。
カイが少年を追いかけようとしたが、クロが制止させる。
「お、追いかけないでほしいニャ……」
ラミアが暗殺者の追撃を試みたが、その日、カイ達は暗殺者を取り逃したのだった。
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