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第6話 帝王メルクーリとの謁見

 ラミアとクロの目には、今まで見たことのないような物に驚きをあらわにしている。

 国の大きさは、西の中で一番の大国と言われるカルバの数倍近くある。

 立ち並ぶ店で、客が扉の前に行くだけで勝手に開いたりと、文明の発達度合いが他国をはるかに凌駕りょうがしていた。

 馬車の外を見ていたクロが興奮しながら、



「す、す、すごいニャ!? 見て、ラミア! 勝手にドアが開いているニャ! それにあれは何? 香ばしい香りがここまで届いてくるニャ……」


「ま、まあまあね……(チラッ)」



 ラミアのそでを引いているクロとは対照的にラミアは両目をつぶっていた。 

 ラミアは時折ときおり片目を開いて外を見ては、また目を閉じ、それを繰り返している。

 ミネルバもめずらしく興奮しているようで、カイが話しかけても返事がない。



「ギフテルは技術が発達していますね……。あのガラスの向こうにある服ははなやかで……、ハッ!」



 ミネルバはあわてて、姿勢を正し咳払せきばらいする。



「ところでカイ様、目的地にはあとどのくらいで着きますか?」


「あの角を曲がればすぐだ。ここからでは建物が邪魔で見えないけど」



 カイが指示した角を曲がると、先程まで騒いでいたのが嘘のように彼女達は押し黙ってしまう。

 城門ですら馬車10台近く積み上げてやっと届くくらいの高さであり、日が傾き始めていることもあってか街路一帯を城の影がおおいつくす。



「で、でかいニャ……」



 城門をくぐった後、カイはラミアとクロ、ミネルバを連れて城の中に入っていく。

 通り過ぎる兵達がカイの姿を見ると、礼儀れいぎ正しい挨拶あいさつをする。



「本当にアナタってここの王子なのね。ちょっと兵達がよそよそしいのが疑問だけど」


「俺は偽物だし、ここ最近まともな王子になってきたばかりだから、警戒けいかいしちゃうのも無理はない」


「カイのことを偽物だって知っているのはミャー達だけ?」


「キリアの連中の一部を除けばそうだな。だから、絶対その話はしないでくれ」



 カイ達が歩みを進めると大きな部屋に出た。

 先日と同じように、玉座の上にギフテル王・メルクーリが座っている。

 しかし、以前と違って玉座の周りには多くの人間がいた。

 ギフテル上層部の人間であることに気付いたラミア達は委縮いしゅくしそうになる。



「父上、カルバの王女・ラミア=フォン=カルバとサザンの王女・クロをお連れしました」


「ご苦労。前置きは面倒だ。本題に入らせてもらう」



 ラミア達は緊張しながら、メルクーリの次の言葉に身構える。



「カイからすでに話を聞いておるとは思うが、ギフテルの民を震え上がらせている暗殺者、その確保に協力してほしい」




 メルクーリの発言に震えているクロの肩にラミアは手を置いて落ち着かせると、メルクーリをにらみつける。



「1つ言わせてもらっていいかしら?」



 敵意を向けているラミアに周囲の人間がざわつき始める。それを黙らせるように、メルクーリはハッキリと。



「かまわない」


「どうしてクロを死地に追いやるようなことをするわけ? あわよくば、サザンの王女を殺せれば、なんて考えてないでしょうね?」


「それに関しては安心してもらっていい。我々は一刻いっこくも早くサザンとの関係をきずいていこうと考えている。そのためにもサザンの王女がいてくれなくては困るからな」


「そう」



 あっさり身を引いたラミアの行動にカイは少し疑問を覚えた。



         ※



 話が終わり、大部屋の中にいたはずのキリアの上層部の人間は部屋から出ていった。

 今、その部屋にいるのはカイ達以外に、玉座に腰を掛けたままのメルクーリとその側近そっきんの男だけだった。

 メルクーリは頭を抱えながら。



「誠に申し訳ない」



 突然の謝罪に戸惑うラミア、クロ、そしてミネルバ。



此度こたびの一件は王女を巻き込むつもりはなかった。できれば、秘密裏ひみつりに暗殺者を捕らえてサザンとの交渉に使えればと思っていた。だが……」


「『漆黒の魔女』、ティアラがその暗殺者に負けたんだ」



 カイの一言に耳を疑う一行。



うそ……でしょ? 大陸全土で恐れられているあの魔導士が殺されたの?」


「勝手に人を殺さないでくれるかしら?」



 そこに現れたのは話題にあがっていたティアラだった。

 右腕と左足に包帯を巻いている姿は、やはり彼女の実力を知っているカイからしても異常な事であった。



「大丈夫なのか、動いて?」


「このくらいなんてことないわ。だけど、ここ最近負け続きで落ち込んじゃいそう……。団長、私をなぐさめてくれないかしら?」


「その分なら、大丈夫そうだな。まあ、ティアラは対集団の相手に絶大な力を発揮はっきするタイプだから、気にする必要はないと思う」


「慰めになっていないわよ。私としては負けたことが問題なのよ」



 カイとティアラの会話を聞きながら、彼女が負けたのは事実らしい。

 クロは恐る恐る尋ねてみた。



「相手の暗殺者は……獣人なのかニャ?」


「あの身体能力の高さからして、普通の人間とは思えないわ。屋根から屋根に飛び移るものだから、魔法が当たらなかったのよ」



 メルクーリは申し訳なさそうに。



「今回サザンの王女に協力をあおいだのは、あくまで敵がサザンの手の者だった場合、相手の行動を抑制よくせいさせるためだった。その方法を取ろうとしたのは申し訳ない」

 


 ラミアがメルクーリに聞いた。



「関係ない話で悪いのだけど、ギフテルの帝王。アナタは私の父をご存じかしら?」



 本当に関係のない質問をされてメルクーリは呆然としていたがすぐに返答した。



「私は面識がない。だが、私の兄がラミア王女の父と面識があるはずだ」


「それはどなたか教えていただけませんか?」



 メルクーリは一度カイを見てから首を振る。



「すまないが、名前を出すのは控えさせてくれ。別に大したことでもない」



 ラミアは話題を変えて質問した。



「今回の暗殺者は穏健派ばかりを狙っているのは本当かしら?」



 カイを恨めしそうに見ながらメルクーリは答えた。



「このバカ息子はとんでもない情報を垂れ流したな」


「仕方なかったんですよ。ラミア達に協力してもらうためには、こちらも情報を開示しないといけませんし……」


「開示しすぎだッ!? 私とお前しか知らない機密情報をもらして! 改心したと思ったら、この様じゃ……」



 先程の穏健派が狙われているという話はカイとメルクーリだけが知っているはずの情報だった。これは他の人間を動揺させないための措置だった。



「私のほうこそごめんなさい。そんな機密情報とは知らず、口に出してしまったわ」



 律義に謝るラミアに対して、メルクーリは慌てて首を振りながら。



「今回のことはワシ……、コホンッ、私に落ち度があった。気にしないでくれ」



 メルクーリは話題を変えた。



「それで、この事件だが、さっきも言った通りだ。あくまで協力してもらいながら、相手の動きを牽制けんせいできればいい。まだ、サザンの手の者だと断言できない状況だ。捕縛できなくてもいいから、せめて暗殺者の容姿が掴めればこちらにも対処しようがある」



 メルクーリは深々と頭を下げながら。



「お願いできないだろうか?」



 ラミアとクロは返答に困ってしまう。



「ミネルバはどう思う?」



 先程からずっと黙っていたミネルバに話をふるラミア。



「そうですね……。この一件は『漆黒の魔女』ですら手を焼いてしまうような事件ですから、かえって私達は邪魔になるかもしれません」



 ですが、と続ける。



「相手が獣人なら身体能力で劣る人間では太刀打ちができないでしょう。このまま問題が広がる前に手を打つなら、身体能力にひいでた私達が参戦したほうが良いと考えています」



 そんな煮え切らない返答にラミアはムッとしてしまう。だけど、的を射た発言に何も言い返せない。

 その光景を見ながら、ミネルバは口を開く。



「この案件に協力するかは、私やラミア様ではなく、クロ様が決めるべきだと思います」



 全員の視線が集まる中、クロは最初から決めていたかのように即答する。



「ミャーは今、サザンがどうなっているのか知らないニャ。暗殺者を捕まえられれば何か分かるかもしれない。だから、協力したいニャ」

今日の投稿は以上です

明日は10時から12時、17時ごろに投稿するつもりです

また


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