第6話 カルバに残されたもの
ミーシャの墓参りが終わり、カイたちは再度馬車に乗りカルバに向けて出発した。
ダグラス=レレイの死体がなかった事はクロとカイだけの秘密にした。
ミーシャの故郷以外の村の横を通り過ぎていったが、人っ子一人いないもぬけの殻だった。
ラミアはその悲惨な状況を見て。
「これが……カルバ。私は何も知らなかった」
ラミアは外を眺めて、その光景を目に焼き付けている。
一方でクロは外の景色を見たくないのか、カイやミーシャと積極的に話し込んでいた。
「カルバの城が見えてきたニャ!」
「あ、あれがカルバの城……大きい。あれ、何かな?」
ミーシャの驚きとともに、指をさしながらカイに質問する。
「あれは検問だな」
いくらカルバとキリアの国交が一時的に開かれたといっても、国のくくりでいえば敵同士。
厳しい検問が張られているのは当然の対応だった。
キリアからカルバに行きたい人間は事前にリスト化した名簿を、カルバに送っている。
検問では名前の確認と証明書の提出がもとめられる。
「止まってください」
カイが乗っていた馬車が止められる。カイは馬車から顔を出す。
「名前を言って、証明書を出してください」
「キリアの王、カイだ。カルバ王女ラミア=フォン=カルバとサザン王女クロの護衛としてここに来た。これが証明書だ」
カイはカルバから発行された手紙をさしだす。
兵士は目を丸くしながら、手紙に目を通す。
「あの、そちらの馬車には……ラミア様とクロ様がいらっしゃるのですか?」
「ラミア、クロ、出てきてくれ」
馬車の扉がゆっくり開き、その向こうから日光を浴びながら煌めく金色の髪と特徴的な獣人族の尻尾や耳が、兵士の目を釘付けにする。
検問には20人近くの兵がいたが、ラミアとクロが馬車から姿を現したことに気付くと、検問を放り出してラミアの前で左膝を地面につき、頭をさげる。
「「「お二方とも、ご無事でなによりです!」」」
兵士たちは感動のあまり、涙を浮かべる者もいた。
ラミアは兵の顔を見て、感謝を述べる。
「ありがとう。でも、今のアナタたちの役目は私に挨拶することでないわ。仕事に戻りなさい」
「「「はッ」」」
ラミアの言葉で、自身の仕事に戻っていく兵士。
もともとカイたちの検問を担当していた兵は、背を向け涙をふいてから。
「カイ様御一行の通行を認めます。その馬車の中には他の方も乗っておられるのですか?」
「ああ、護衛としてもう一人連れてきた」
「確認してもよろしいでしょうか?」
兵は馬車の中を見渡し、ミーシャの顔を注視する。
「一応名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
カイはミーシャを見ながら。
「こちらがミーシャ=レレイ。ダグラス=レレイの娘だ」
ここでまたもや、兵は驚きの表情を見せる。
ダグラス=レレイはカルバのトップに位置する騎士だった。
「2年前に失踪なされたダグラス様の娘さんですか……?」
一度も見たことないので、ミーシャだと言われても信用できないらしい。
しかし、ラミアがミーシャの出自を保証する。
「ええ、ミーシャ=レレイはダグラス=レレイの1人娘です。私が確認しました」
「わ、わかりました。では、一通り確認しましたので通過することを認めます」
検問を終え、そのまま王国に馬車が入っていくと、街路に沿って人の長蛇ができていた。
もともと王女たちが戻る日は指定していたので、全国民が集まってきたのだ。
帰ってきた王女達に歓喜と感動の声が贈られる。
「すごい民衆だな」
「こんな国とキリアは戦ったんだね」
カイとミーシャはあらためてキリアがどれだけ不利な戦争をしていたのかに気付かされる。
ラミアは大衆に手を振りながら笑顔を見せるが、クロは慣れていないのか固まっていた。
カイも外を見ながら、カルバ国民の満面の笑みと感動の涙を見た。
カイは、ラミアとクロに笑顔を向けた。
「よかったな、喜んでくれて……」
「ええ」
「はいニャ」
彼女たちも、朗らかな笑みを浮かべるのだった。
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