第5話 作戦会議
「全員集まったな、急だとは思うが臨時会議をおこなう。困惑している者もいると思う。だが、今はサイラスと戦うことに協力してほしい」
その場にはカイ、エド、マグナス、ミーシャ、ティアラ、スーの6名が円卓を囲む形で座っていた。
「まず、最初にどうしてサイラスの人達が宣戦布告してきたのかしら? それを聞いても?」
話の核心をついたのは魔女の格好をした艶めかしい女性・ティアラだった。
彼女の紫色の瞳にカイが映る。
「それは……」
カイ、エド、ミーシャ、マグナスはこの事情についてほぼ理解しているが、ティアラとスーは状況をあまり理解していない。
カイは理由を包み隠さず話す。
話を聞き終えたピンク髪の幼女・スーが口を開いた。
「えっと、もしかして団長ちゃんはサイラスとの戦で、その事件の真相をつかみたいのですか?」
「ああ」
「そうですかあ。少し考えなしの行動ですが、サイラスの使者の言葉から戦争はほぼ避けられなかった、と思うです。ならわたしは団長ちゃんに協力しますよ」
「まあ、そうね。あの使者の中に確信犯もいたみたいだったから、どんな言い逃れをしても無意味だったわね」
事情を知らなかったスー、ティアラも認めてくれたのでサイラスとの戦争について話し合うことにした。
ティアラは椅子の上で艶めかしく黒のタイツをはいた両足を組む。
「私達は良いけど他の兵士にはどこまで伝えればいいのかしら?」
「全部伝えてかまわない。疑念を持たれて下手に詮索されるよりはマシだ」
「分かったわ」
「まず、サイラスについてだが、あまり有益な情報はない」
カイの身も蓋もない言葉に、エドは驚きの声を上げた。
「おい、団長。あのお嬢ちゃんからは何か聞けなかったのかよ? 情報がないまま、挑むなんて自殺行為だぜ」
「全くないわけじゃない。ラミ……、カルバの王女から聞いた話だと」
ラミアから聞いた情報を話すと、
「「「兵の総数が20000(ですか)!?」」」
ティアラ以外がその数に驚きをあらわにする。
当然の反応だ。
キリアは兵が最大でも3000。
キリアが勝利を目指すなら、あと最低でも7000は欲しい。
動揺する彼らの中で、余裕の笑みを浮かべていたティアラが口をひらいた。
「ねえ、カイ。本国に応援は頼んだのかしら?」
ティアラはこの大陸で最強の存在と言われるほどの大魔導士がゆえに、どんな状況でも常に冷静に物事を考え、その口調には余裕すら感じられる。
「ああ、不思議なことに俺が招いた問題だが、7000なら集められるかもしれない、との話だった」
「確かに不思議な話だけど、集められたなら良しとしましょう」
そう言ったティアラをカイは申し訳なさそうに見る。
「もしかしたら、最後はティアラの力を頼ってしまうかもしれない」
「かまわないわ、むしろお姉さん1人でも敵を倒せるわよ」
無茶な発言のように思えるが、確かに彼女はそれだけの力を持っている。
実際のところ、カイもパニックになってもおかしくはないがティアラのおかげで落ち着いて物事が考えられる。
カイは地図を円卓に広げて印をつけた場所を指す。
キリアから西に2日ほどかかる平原だった。
「それでだ。サイラス軍は戦争をしかけるなら、必ずこのレノア平原を通るはずだ。ここで勝負に出る」
マグナスは首をかしげながら、地図の一点をさす。
「この平原に来る前にある、丘じゃダメでしょうか? 何本も道が分かれているから奇襲はかけやすいと思いますが?」
「ダメだ。サイラスの王の名はガレス。彼は魔法が使える槍使いらしい」
「『槍使い』であることが、そこまで危険視することなのでしょうか?」
マグナスがカイに尋ねる。
ティアラがその疑問にいち早く答えた。
「団長が危惧しているのは、『槍使い』じゃなくて『魔法が使える』ってところじゃないかしら?」
「『魔法が使える』? 今では、たいして珍しい話ではないと思いますが。現にここにいる方々は魔法が使えるわけですし」
マグナスの言う通り、兵士が魔法を使って戦うことはめずらしくはない。
カイが話している間、頭をかかえて悩んでいたエドが思い出したかのように勢いよく立ち上がった。
「思い出したアアァァッ!? サイラスの王・ガレスはヤバい奴だ!」
エドの話だとギフテルとカルバの最初の戦争のあと、サイラスは一度小高い丘に陣を敷いていたギフテル兵と一戦あったそうだ。
サイラス兵は丘下から攻めていたこともあって苦戦していた。
しかし、ガレスは自らの爆裂魔法でギフテル兵ごとその丘を消しとばしたらしい。
そのあとも単騎で兵の残党を皆殺しにしたという。
最初の戦争のあとキリアの兵士になったエドがサイラスとの戦争のことを知っていてもおかしくない。
彼の話を聞いていたカイが口を開く。
「爆裂魔法は初耳だがカルバの王女もガレスは強力な魔法を使える、と言っていた。この複雑な丘で戦えば自分たちも不利になる可能性がある」
「だったら、なおさら平地はヤバいだろ。集まった兵士なんて爆裂魔法の格好の的だ」
「平地だったら、混戦にもちこめれば、そんな極大魔法を味方もいるなか簡単には使えないと考えている。……それに絶対、俺が使わせない」
カイの発言にエドがため息をつく。
「仕方ねえ。今回は団長に任せるぜ。俺じゃ、相性は悪そうだ」
「かわりにエドには1人でも多く倒してほしい」
「あいよッ」
カイの頼みにエドは頷くのだった。
「面白かった!」
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