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プロローグ〜ベートルフ・クラインの転校〜

ベートルフクライン。略してベール。


9月1日。太陽がその神々しい光を絶え間なく降り注いで秋にも関わらず問答無用でエアコンをつけろと急かす。薄いカーテンを閉めても充分に教室内を照らし窓際の席の人達は全員とは言わないが眩しそうにしている。俺もその一人だ。とは言っても最後尾と言う何とも嬉しい場所なんだが。

ため息をつく。喜び半分、面倒半分。その原因はこの教室にある。クラスの全員が注目するのは消し跡が残っている黒板の前に立っている美少年。


隠し味程度に茶色が混ざった金髪。

爽やかな甘いマスクに残る可愛さが人懐っこい印象を与える。

何一つ穢れのない綺麗な肌。

星空の様なサファイアブルーの瞳。


「やばい。めっちゃイケメン」

「ちょっと可愛いかも」

「私チョー好み」

「やべぇ、俺負けた」


教室にいる誰もがひと目で彼を美少年だと認めていた。俺も認めている。何故なら


「僕の名前はベートルフ・クラインです。よろしくお願いします」


甘い爽やかな声とともに小さな太陽とでも表せそうな笑顔をクラス全員に向ける。窓際にいる俺を見つけるとさらに嬉しそうな表情が追加される。


「キャーーー!!!!」


「声もイケメン!!」


「耳が妊娠しそう!」


「やべぇ、俺男なのに惚れそう」


「薄い本が一つ……薄い本が二つ……ふふ」


「私の方に向いてくれた?!」


「いや私よ!!」


クラス中が発狂の嵐(特に女子)に包まれた。中には顔を真っ赤にして隠している女子もいる。


誰だ今薄い本言ったの。


「ベートルフ君が格好いいのはわかりますが発狂するのは後にしてくださ「一目惚れしました結婚してください!!」静かにしろイケメンに飢えた狼ども!! 私より先に結婚しようとするんじゃねぇぇぇぇ!!!」


先生の渾身の叫びも虚しく教室内はライブハウスのようだ。小○都知事より、密です。ベートルフが困り顔になってしまうのも無理はない。


「まあまあまあ、皆落ち着いて。ベートルフ君も困ってるじゃないか。ここは一人ずつ軽く自己紹介しようじゃないか」


金髪のチャラチャラした奴がそう言う。名前……なんだっけ? あ、そうだ。金御次郎だ。

次郎の言葉に落ち着きを取り戻した教室は恥から一人ずつ立ち上がって自己紹介をしていく。

ありがとう。クラスの7割ぐらい名前忘れてたんだよね。顔見て名前思い出せたやつもいるけど印象が薄かったやつは思い出せなくてな。


「?!!」


「大丈夫?! 血が出ているけど!」


しかし、自己紹介が最後まで行われる事は無かった。前の席の女子の一人が耳まで赤くなった顔を手で隠しているのは後ろからでも見えていた。あー、うん。大丈夫だよそれ。ただの鼻血だと思うから。興奮しすぎてるだけだから。


「あ、ううん?! 大丈夫!! 大丈夫ただの鼻血だから!! 鼻血だから!」


心配になって教卓を押しのけて近づくベートルフに対し、左手で鼻を抑えながら右手を振って何でもないアピールするも興奮して火照った顔に説得力は無くベートルフの右手は女子の額に触れる。 


「顔も赤いし熱があるじゃないか! 直ぐに体を冷やさないと! とりあえずこのティッシュで鼻を抑えて! 双葉! 何か冷やす物持ってない?!」


「あ、あう、あう」


いきなり俺に振られてもなぁ、どうしよう。恐らくクラス全員が君に興奮したから鼻血を出した事を理解しているが言えない状態になっている。しかも当の本人がそれに気づいておらず全力で心配しているから尚更。とりあえずキンキンニ冷えたペットボトルでいいか。


「ありがとう! 早くこれで首を冷やして!」


「は、はい〜❤」


投げるとベートルフはナイスキャッチし女子に手渡す。しかし、女子はとろけた顔で受け取ろうとしたが為にベートルフの勘違いは加速される。


「意識がはっきりしなくなってる! さっきまでは平気だったのに!」


「も、もしかして熱中症かもね〜」


「熱中症?! なら首を冷やさないと!」


「はう♥」


先生の余計な一言が女子の熱を更に上げた。熱中症で意識が朦朧としていると勘違いしたベートルフは女子の横に周り椅子から落ちないように体を近づけて左腕で支えながら右手で首筋にペットボトルを当てる。


「あわわわわわわわ」


それがトドメとなり女子の全身が赤くなると鼻血の勢いを増してそのままベートルフにもたれかかる。


「ど、どうしよう! 気を失っちゃった! ええっと、き、救急車呼ばなくちゃ!」


「あー待て待て待て!」


「ほ、保健室に運べ保健室!」


流石にこんな事で救急車を呼ぶには余りにも恥ずかしすぎるとクラス全員で止めに入る。


もはや1限目まで影響が出る騒ぎとなった。



















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