初めての出会い①
トントントンとまな板で食材を刻む音がする。
いい匂いがし目を覚ました。
「おはよう、よく眠れた?」と聞かれた。
俺は「おはよ、よく眠れたよ」と寝ぼけながら返事をした。
「ハヤト朝ごはんできてるよ」の声で夢から覚めた。
そこは自分の部屋で、ベッドの上にいた。
「何だ、夢か」と呟き、ため息をついた。
すると、母親が大きな声で
「起きなさい!遅刻するよ!」
と起こすために叫んでいた。
時間はまだ6時だ。確かに、俺は朝が弱いのでこの時間に起きないと遅刻するぐらいなのだが、俺はまた寝ることにして布団に潜った。
俺は桐生ハヤト、高校一年生。年齢イコール彼女いない歴だ。見た目はそんな悪くないと思うが、中の上ぐらいだと思う。女友達はいるが進展はなく過ごしている。
新しい出会いを求める年頃の男の子である。
自己紹介は、ここらでやめて、話を戻すとしよう。
セットしていた目覚ましが鳴り、目覚ましを止めようと手を伸ばしたら何か微かに柔らかいものに触れた。
目を開けてみると、幼馴染の、梓がそこにいた。
しかも、胸に手が当たっていたのだ。
梓は顔を真っ赤にしながら、驚いた表情で座っていた。
「おはよう、あず…」
挨拶の瞬間に痛い一撃が入った。
梓は、親同士が仲が良く、家族ぐるみで遊ぶ女の子である。
容姿は、髪の毛は茶色でショートカット、目は少し釣りあがっている。鼻筋は通り、口元は八重歯が少し見えるスレンダーボディーの笑顔が素敵な小柄でヤンチャな感じの可愛い子である。
性格も明るく友達も多い。面倒見も良いので学校では有名人である。
「遅刻したら大変だからって来てあげたのに!」
恥ずかしそうにしながら怒られた。
内心で俺は
「ラッキー!でも、もう少しあればなぁ」
って思いながらごめんなさい、と謝った。
「事故だから今回は許してあげる」
と言った後、そっぽ向かれた。
許すと言った割にはまだ怒ってる感じに俺は感じた。
俺はため息をつきながら、
「着替えるから先に降りててくれないか?」
と言った。
すると梓は少し被せ気味に、
「ここで待つよ」
と目を輝かせながら言ってきた。
「出ていけよ!」
即答で答えた。
凄く寂しそうに何度も振り返りながら部屋から出て行ってくれた。
やっと出て行ってくれたので、制服に着替えることにした。
クローゼットから制服を取り出しパジャマを脱ぐときに、凄まじく熱い視線を背後から感じる。振り向くと、そこには、出て行ったはずの梓が、ドアの隙間から目をギラギラさせながら覗いていた。
俺はドアの方へ、フラフラと揺れながら近づき、ドアに手を掛けて怒りで目をギラギラさせながらにニコニコした。
梓は冷や汗を出しながらニコニコしていたが、怯えながら急いで降りて行った。
油断も隙もない奴だ。そういえば昔から、気が付けばさっきの様に覗いてくる変態だったのだ。
着替えて下に降りると何やら母さんのいるリビングで、落ち込んで椅子に座っていた。
なにやら話してる様子がうかがえた。まさかとは思うがさっきの件で母さんに相談しているのかと思い、何故か少し恥ずかしい気持ちと言い過ぎたかもという罪悪感からどうしたら良いかと変な感情が湧いてきた。
さっきは言い過ぎたと謝ろうと思い、リビングのドアを開けた。
「おはよう、さっきはごめ…ん?」
謝りかけた時、状況が読めた。
ただ単に、母さんが食べて行きなよと気前よく出したものが苦手な物だったのだ。それをみてテンションがかなり落ちており、落ち込んでる様に見えていた様だ。
梓は言い過ぎたことを謝ろうとした俺のことは知らずに、
「ちょっとハヤト、おばさんワザとでしょ?って感じに嫌いなもの出してきたんだけど!」
梓は、目を潤ませながら俺に訴えかけてきた。
そう、梓は野菜が大嫌いなのである。
一応は食わず嫌いと言ってはいるが、梓が野菜を食べた記憶が一度もないのだ。
「朝飯出してもらって文句言うなよ」
少し呆れながら言った。
まぁ代わりに食べる事にした。
母親に頼んでトーストを焼いてもらい梓にあげる事にした。
朝のニュースで占いが流れている。
「今日の星座占い1位は射手座のあなた!最高の運勢です。新たな出会いがあるかも。ラッキーカラーは黄色ラッキーパーソンは花柄のハンカチを持ってる人」
自分の星座が1位だ。新しい出会いは嬉しいが、花柄の
ハンカチもってる人は同い年ではあまり見かけない。
そんなことを考えていると家を出る時間になっていた。
やばいと思い、梓と走って駅まで行く事にした。
いつもなら、駅までは歩いて15分ぐらいなので走れば余裕で間に合う。
この電車に乗れないと少しヤバイのである。
「ヤバイ、ヤバイ遅れる〜」
全力で走りながら呟く。
「あんたがいつものんびりしてるから焦るんでしょ!」
梓が怒りながら一緒に走る。
アナウンスが流れたり、電車の音、多くの人が行き交っている。
駅に着き、改札をくぐりこれなら間に合う。
良かったと思い息切れしながら間に合ったぁと安堵に浸っていると。
「次からはしっかりしてよね!」
と軽く叩かれながら言われた。
「ワリィ〜。でも、朝からいい運動だったろ?笑」
無言で1発しばかれた。
頭をさすりながら歩いていると女の子が駅で迷っていた。
見た目は、髪は銀髪のロングヘアーで、少し髪を巻いている。目が大きく綺麗な赤みがかった色だが、すごく優しそうな目で、鼻筋が通っており、口はお上品に見える感じの小さめの口だ。
出るとこ出ている、ナイスバディーだ。大人びて見える女の子だ。
「すいません。私立桜花高等学校はどう行ったらいいですか?」
と、泣きかけの顔でかなり不安そうだ。
こんな可愛い子を放って置けないと思い
「良かったら一緒に行く?」
と笑顔で聞いた。
「え?いいんですか?良かったらお願いします。」
と泣きそうな顔から笑顔で言った。
ホームに移動しながら他愛もない話をしていた。
なんだろう?この感じと思いながらも楽しく思えていた。