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丘の屋敷に戻ると、居残り組みんなが出迎えてくれた。
とはいえ、私が気になっているのはズバリ豆腐だ。
あとは牛乳が保管できる環境。
聞いてみると、どうやら魔法を充電して使う簡易冷蔵庫みたいなものがあるようで、牛乳はその中に保管してもらった。
で、さっそく豆腐だ。
これも冷蔵庫に入っていたので取り出してもらうといい感じに…あれ?なんでこんなに黄色いの?そしてちょっとどろどろ?
プルプルを想像してたんだけど…
「姫様、これ、どうなさるんですか?」
料理人が心配そうにのぞき込んでいる。
「ちょっと、お皿に取り分けて。」
「かしこまりました。」
とりあえずは実食だろう。
スプーンで少なめに救って口に入れると、かなり独特な豆の風味と、にがりの苦み、あとは塩分を取り切れなかったのか味付けしなくても食べられる程度の塩味がついている不思議な物体だった。
食べられなくはないが、これは豆腐じゃない。
断じて違う。
どうしてこうなった。
「原料になった豆を見せてもらえるかしら。」
「はい、こちら、ディージーです。」
そこには鮮やかな黄色い色をした大豆に似た豆が現れた!
「…もっとクリームっぽい色をした豆ってないかしら?」
「ええ!姫様、大豆は本当に貧しい人たちがゆでて、ゆで汁の薄~い汁とともに食べるものですよ!こちらのディージーは大豆を改良した高級品でして、この香りが貴族たちに人気の品となっています。」
のぞき込んできたマーサが言う。
そうか、もしかしてお姫様に食べさせるならちょっとでもいいものを…と余計な補正が働いた…?
「マーサ、私が言った通りのものを持ってきてちょうだい。」
それでも私が食べたいのは豆腐なのだ。
「はい、かしこまりました…」
しょぼんとしたマーサはしばらく後、たっぷりの大豆を用意してくれた。
夜ご飯には、拾ったお魚を乾かした煮干しのようなものも近隣からゲット出来たので、しっかりと出汁をとった根菜の汁物、白いご飯、昆布だしを効かせた湯豆腐をいただきましたとさ。
お姫様なのに粗食、と思わなくなってきた…
おいしくいただきました、ごちそうさまでした。
「そういえば、こことアルテ村、馬車で3時間しか離れてないのに何でこんなに植生が違うの?」
馬車での移動は車と比べると遅い。自転車ぐらいだろうか?
となると、3時間走ったとはいえそれほどの距離にはなっていないはず…
たかだか3時間ぐらいの移動でそんなに距離を稼げるのだろうか。
「内陸になったためというのはもちろんですが、おそらくは優れた木魔法の使い手がいるのでしょう。周辺の村々と比べると、土地の状況に対し収穫物の種類も量も多いように感じました。」
さすがビビ。
細かいことまで見ているしよく覚えている。
え?
「木魔法ってそんなに万能なの?」
植物強くして育て放題ってすごいチートじゃん。
「いえ、そういうわけではなく。もし魔法のことについてご興味があるのであれば、ジェスさんをお呼びしましょうか?」
そういえば知識やマナーを優先していて全然魔法について聞けてない!
粗食解決が優先すぎて忘れてた…
食って大事よね。うん。
そろそろ魔法についても学んで、真面目にチート生活目指そう。