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翌日も朝は草粥。
そしてちょっと裕福なお嬢様、ぐらいの服装に着替え、ビビによる講釈を受ける。
そういえば昨日は津波だったというが、ここの住民たちは大丈夫だろうか。
「ねえビビ。今回の津波の被害はどのぐらいなの?」
「今回に限って言うのであれば、ほぼ被害はありません。
「そうなの。それは良かった。でも、今回に限り、というのはどうして?」
「それをご説明するには、姫様にこの国の近代史と大陸全体の宗教についてお教えする必要があります。結論から言うとここの一帯はとても貧しく、被害を受けるような場所に住めるほどの人口が居ません。」
ビビの話をまとめるとこういうことだ。
この世界の神話は、女神ロミア様がたわむれにお盆型の世界を創ったところから神話が始まる。
球体の惑星は作り飽きたんだそうな。
ロミア様(あの白い女神様だ)はそこそこ頻繁に神殿や、気が向いたときは全く違う場所にも表れ託宣(という名のたまに雑談)を下すそうだ。
神話はすべて伝説ではなく事実らしい。
それとは別に、100年に一度大神殿に顕現し、そこで「大審判」という特殊なお告げをするらしい。
それは、世界すべての国家の様子を見て、腐敗が進んでいたり傲慢になっていたりという王族や国を亡ぼすために大災害を起こすというのだ。
「民はどうするの?民に罪は無いでしょう?」
思わず私が聞く。
「罪科ある民はその地に残され、そうではない民はロミア様のお力で隣国に転移させられます。その際、幸運の守りとなる小さな宝石が手元に残ると言われています。民が移ってきた国は、その民たちを善良な移民として保護しなければいけないと決まっております。」
「じゃあ、残された人たちはどうなるの?」
「過去の例ですと、大体半分ぐらいの人が残され、半分ぐらいが転移となるようです。命を落とす人も多少いますが、多くの人々は荒れた地の開墾からやり直すこととなります。」
「王族や貴族は、大審判を聞いて他の土地に逃げないの?」
そう。王侯貴族であれば魔法があるこの世界でよその土地に移り住むのなんて簡単なんじゃないだろうか。
「審判から災害までの間、ロミア様によって世界が切り離されます。そのため、国境を超えることはできないのです。また災害後に移動しようとしても、移住を許されなかった悪しきものとしての風評がついて回るので、移住は簡単ではありません。残された人たちは、自分たちの汚名をそそぐためにより良い国づくりのためまい進することとなります。
災害にあった国に対しては周辺国も手を差し伸べて徳を積むようロミア様は推奨されていますし、親族が残されたため転移先から戻って来るという人もいます。」
ふと、いやな予感がした。
「ちなみに、一番最近にその災害があったのは?」
「はい。大陸歴4100年、ファルメディアで、大地震および大津波がありました。ここルーディアは大きな被害にあった土地のひとつです。」