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10.勇者

 森の中を駆け抜ける。里の方角を見ると火の手が上がっている。


 くそ、キャロは無事なのか? エリスはもう里に着いてる頃か? メテオ達がいるしウォーエルフの人々も強い。そう簡単にはやられないだろう。


 だがオレの心に焦りが広がっていく。


「案ずるな、戦えない者には最も安全な保護をするのが我らだ」


 そうかよ。けど幻惑の結界とやらを破る程の相手だろ? 敵も強えんじゃねーのか。


「黙って走るが良い」


 あぁ、わかってるよ!!


 その言葉を受け、魔力を練り上げる。速さだ。必要なのは疾き獣。


 旋風を纏って駆ける。疾風が獣の姿を形取る。


 名前をつけろ、より明確なイメージを練り上げろ。


 咆哮と共に竜巻が周囲を包む。


 風牙獣、風斬大神(カザキリオオカミ)


「わん!(乗りやがれ!)」


 長老を突風で巻き上げて担ぎ込む。


 いける、完全復活だ。機械どもには負けねえ!


 相変わらず本体は太ったままだが……。まあそんな二、三日で痩せないよね。



 里でウォーエルフ達の怒声が轟く。


 マシーンの大群が火炎を放つ。人型と獣型、入り乱れてエルフと交戦している。


 だがウォーエルフたちはやはり強い。実力は拮抗、いや、エルフがやや優勢と言ったところか。


 それでもアイツら機械の方が数が多い、多すぎる。多勢に無勢。

 更にアイツらは学習し、強くなる。そうなる前に、全部叩き潰す。


 オレは叫びと共に無数の竜巻を発生させる。


 風の刃を伴った旋風が機械どもを切り刻んでいく。


「勇者が戻ってきたぞ!!」

「長老も一緒だ!」

「皆の者奮起せよ!!」


 ふん、昨日はリンチした癖に調子の良いことを。まあ良い。


 風牙獣の爪が機械どもを一閃の元に斬り倒して行く。


「敵戦力、分析」

「分析完了、アップデート」


 させるかよ!!


 大地に魔力を流し込む。


 行くぞお前ら、言うこと聞きやがれ!


 眷属創造、ガーゴイル!!


 大地から岩が創造され、土を掘り上げる。


 地面から岩で出来た手が伸び、マシーンどもの脚を掴む。


 機械を地中に引きずり込み、ガーゴイルが地上へと姿を現わす……。


 ……岩で出来た人型がマシーンへと群がって行く。


 ……失敗したな、これじゃスケルトンだ。


「何だこいつらは!?」

「いきなり現れたぞ!?」

「敵か!?」


 味方だ……。まあガーゴイル達には機械だけを襲うよう命令しとくから、アドリブで判断してくれ。


 岩スケルトンに足止めさせる間もオレは止まらない。


 纏う風を解き放ち、周囲の敵を薙ぎ払う。


 飛ばした風の刃が剣となる。


 スケルトンども、その剣を使え!


 これで数の利は多少抑えられた。


 それと分析された戦い方を続けるほどバカでは無い。


 機械には水だ。想像しろ。


 魔法の水だ、触れただけで機械をぶっ壊す水。


 それを纏え。今のオレなら水だって自在に扱える、と信じろ!!


 攻撃範囲は広い方が良い。使える手足の多い獣。カッコいい方が強くイメージ出来る。


 パチモンの機械とは格の違うセンスを、見せつけてやれ。


 纏う青が球体の流水となり、周囲へと飛沫を上げて破散する。


 水妖獣、九水狐(クミホ)泡沫(うたかた)……!!


 流れる水の毛並みを震わせる。


 九尾を広げ、駆け抜ける。


 尾の一本一本が機械たちに触れ、通り抜ける。


 マシーンどもはバグり、ショートする。爆発でもしてやがれ!


 その意思の如く、機械で出来た人も獣も爆散していく。


 学習させる暇なんて与えねえ、一瞬で全部破壊する。


「その姿、アリスか……?」


 上空から声が聞こえ、空を見上げる。


 メテオ、無事だったか。また飛べる様になれたんだな。


「あぁ、マッドハートの、お陰でな」


 気まずそうな返事。オレはハピアとの繋がりを断つことに反対した。

 二つ返事で了承したアイツらとしては、力が戻っても両手放しで喜べないか。


 メテオ、気にする、な……?


 何だアイツ……? 炎と雷を纏った姿。人型を取った状態で手足は竜、尻尾も生えている。


 半竜化、か?


 そして空を飛ぶ為か、稲妻色の翼を羽撃かせている。


「そう驚くな、クーと合体しただけだ」

『キャロは若いエルフ達と一緒に避難してるから安心しなさい!』


 クーの声が響き、キャロの無事を聞いて安心する。


 ハピアがいないのに合体出来たのか?


「あぁ、昨日二人で練習した甲斐があったな」

『私らの力も完全には戻らなかったからね、こうでもしないと戦力にならないでしょ?』


 二人ともサボってた訳じゃ無かったのか。いや、当然か。ハピアを救うための力を欲したんだ。努力だってするだろう。


「わんわん!(せっかくオレが覚醒したのに、もっとカッコ良いことしてんじゃねーよ!)」


 そう言いながら駆け抜ける。


 九尾狐の水獣化、ガーゴイル(スケルトン)、風の剣。


 これ以上の魔法の制御は厳しいか。


 だが戦力は十分だ! このまま押し切る!


 強者であるウォーエルフの民、新たな力を手にしたメテオとクー。


 負ける気がしねえ!!


「やれやれ。大人しくやられれば楽なのに」


 声と共に無数の銃声が鳴り響く。


 連射? いや、誰だ……!?


 背後でドサリと、地面で音が鳴る。


 音の方向へと振り返る。


「すまぬ……、油断した様だ……」


 メテオが血塗れで大地へと倒れ伏し、呻きを上げている。


「わん!(メテオ!!)」


 駆け寄り、治癒魔法を施す。だが魔法が発動しない。


 ダメだ。制御し切れねえ、意識が保たねえ。


 水獣化を解除して回復魔法に意識を回す。


 スケルトンを解除したらマシーンに押し込まれるかも知れねえ、今は全体を優先だ。


「アリス、回復は良い。今は敵を見ろ」

『戦うのよ、私たち死ぬほどの怪我じゃないから!』


 メテオ達は止めるが、オレは治癒を続ける。


「回復とかやめてくれよ、どーせ勝てないのに無駄だなぁ」


 気怠そうな声がする。メテオを撃った奴か?


 そこに立つのは若い男。だがその腕には銃が、ガトリング砲を構えている。


 いや、違う。コイツ……! 右腕がガトリングだ……。


「お主、何者だ……!」


「よくぞ聞いてくれた! 俺はターミネイト帝国に召喚されし勇者、機嶋(きじま)正義(マサヨシ)! お前らを抹殺する為に参上!」


 ポーズを取る勇者マサヨシ。何だこいつは……? いや勇者なのはわかってる。召喚だと? そーゆーのもいるのか。異世界転移者か? 名前ばりばり日本人だもんな。


「喰らえ! 俺の必殺チート! サーチ&デストロイ!!」


 ガトリングが轟音を鳴らし、銃弾を放つ。


 くそが、結界だ! マサヨシを覆う様に結界を張る、これなら何処を狙おうと防げる。更にあいつの移動阻害ができる。


 だが結界を張った直後、メテオが苦痛の叫びをあげる。


 振り返ると治癒をした筈のメテオが、再び血塗れで倒れている。


「いやー、また俺何かやっちゃったかなー」


 ふざけんじゃねえ!!


 奴へと駆け出す。白虎の姿を形取り、聖獣化を果たす。


「狐になったり虎になったり、忙しい犬だなー」


 再び銃声。そして全身を激痛が襲い、転倒。オレの身体が地を這いずる。


 くそ! 何だ!? 何をしやがったこいつ!


「不思議そうだなー、やっぱ俺のチートスキル索敵と必中能力を持つ『サーチ&デストロイ』強すぎかー?」


 痛みに耐えかね、オレの魔法が解ける。同時起動してた魔法が一気に消え、全身に疲労感が込み上げる。


 索敵、必中……? こいつのせいで幻惑結界が探知され、必中能力で防御も意味無しってか!?

 クソが、チートスキルだと? ふざけやがって、そんなもんオレは貰ってねーぞ!!


「おいおい銃撃つだけで勝てちゃうとか、弱すぎですか? 何もしてないのに勝手にやられてるよー」


 こいつ、舐めやがって……!


 マサヨシを睨みつける、だがそれは意味をなさない。オレの言葉すらわかんねえのか。


 こんな訳のわからん奴にオレは負けるのかよ……!


「やれやれ。これじゃ俺のSランクへの糧にもならないな」


 そう言ってマサヨシが、銃を掲げた。

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