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7.エルフの里

 笑い声が響く。意外にも涼やかで爽やかな笑い声。


 だが話す内容は少しも爽やかじゃない、暑苦しい。


「どうした勇者よ! 貴様の実力はその程度か!」

「逃げてばかりでは闘いに勝つ事は出来ぬぞ!」

「この里から生きて出たければ我らを倒して行くが良い!」


 うぜえ……! 言ってる事はメチャクチャ汗臭いのだが、言う当人たちはちっとも汗臭くない。

 強いて言うなら森の香りだ。森林浴してる様な気分、流石腐ってもエルフだな。


「ははは勇者よ! その程度の攻撃では我ら全員どころか一人すら倒せんぞ!」

「何だその姿は? 弛んでおるな、その姿でよく勇者を名乗れたものよ」


 やかましいわ! お前らこそマッチョな雰囲気醸し出してよくエルフ名乗れるもんだな!


 くそ、逃げながら魔法同時起動。多方向からの風、水の刃。大地の槍、蔓による足止め。

 それらを試すが奴らも魔法を駆使して迎撃してくる。


 意外にも体術だけでは無く魔法も使ってくる。いや、エルフ的には意外では無いのか。


「そらそら、あまり目の前に気を取られると危険だぞ!」

「天空から降り注ぐ豪雨! レイニングアロー!!」


 くそったれが! 皆で弓矢使ってるだけだろ! ただの数の暴力じゃねーか!


 突風で吹き飛ばそうとするが矢は一直線にオレを目掛けホーミングしてくる。

 魔法が込められてるのか……!?


 そりゃそうか。ただの矢なんて撃って来ないよな。


 なら接戦だ! 混戦になれば矢なんて撃てねえだろうが!


「ははは、良い考えだな!」

「あぁ素晴らしいぞ勇者よ!」

「相手が愚鈍なる弓兵であったならば有効だっただろうな!」


 瞬間。体に鋭い痛みが走る。


 結界を纏ってるから怪我は無い。だが確かな痛みが襲い掛かってくる。


 正確無比なホーミング矢が剣士エルフどもすり抜けて来たのか!? だが痛みは何だ? わからねえ。


「不思議そうだな!」

「防御壁を貫いてダメージを与える技術などいくらでもあるわ!」

「お前は結界を過信しすぎだ! 精進するが良い!」


 結界を貫く技術……!? そんなもんがあるのかよ!! そうか……、さっきの機械もその技術を……?


「えぇい! ボケっとするでないわぁ!!」


 ダメージを受け、地に倒れ伏すオレへと剣撃のラッシュが襲い掛かる。


 おいやめろ! いてーだろ!! おいっ!! その追撃いらねーだろ! 負けだよ!


「ははは! 脱出してみせるが良い!」

「これが実践なら死んでいるぞ!」

「根性を見せるが良い!」


 くそが……!!


 幾重にも結界を圧縮させる。


 調子乗りやがって、ぶっ飛ばしてやる。


 結界をギリギリまで小さくして、解き放つ。


 聖なる気の衝撃が拡散する。


 これで何人かは吹っ飛んだ。しぶとく踏ん張ってる残りは、噛み付く!!


 おらぁ! 本来の姿でも牙くらいあるんじゃあ!!


「ふんぬぅ!!」


 エルフが叫ぶと同時、オレの腹へと衝撃が走る。


 あいつ……! 剣捨ててぶん殴って来やがった……。


 エルフの高笑いを聞きながら、視界が暗転した。



 オレを呼ぶ声がする。


 ハピアの声? 待ってろ、今行く!!


 姿を見つけ走り出す。だが姿は黒く染まり、砂状に霧散する。


 ハピア……?


「アリス、アリス」


 そっちか、すまない! 今行くからな!


 走り出す、と同時に体が衝撃と共に吹き飛ばされる。


 蹴り? 何処から……?


 ハピアが笑う。そして女の笑い声が響く。


 ハピアに寄り添う人影。憎いあの女。


 豊満な体をくねらせてハピアを抱き寄せる魔族。


「あらあらぁ〜、しつこいワンちゃんですねぇ〜」


 金髪を揺らし、青い瞳がオレを嘲る様に歪む。


 てめえ! 聖獣化してぶっ殺してやる!


 奴へと襲い掛かるが、一閃。


 一刀の下に弾かれ、地へと叩きつけられる。


 ハピア……? どうしてだ?


「弱くて怠けてばかりの貴方では、私を助けられませんわ。私はこの方、ハート様に助けて頂きました」


 ハピアの瞳がドス黒い紅に染まっていく。


 な……!? そんな訳あるか! 認めねえ! ハピア、そいつから離れろ!!


 動け、動けよオレの体!! ハートを、あの女を八つ裂きにしろ!!


 瞬間、黒い影が飛び出す。


 聖獣では無い。漆黒の闇を纏った禍々しい獣。


 オレなのか……?


 凶黒獣がハートを八つ裂きにする。


 そうだ、もっとだ。もっと奴を苦しめろ!!


 何度殺してもアイツは殺し足りねえ!


 闇の獣が咆哮する。ハートの体が腐蝕したかの様にドロドロと溶けていく。


 ハピア、もう大丈夫だ。


 オレは彼女の元へと駆け寄る。


 ハピア、大丈夫か……?


 瞬間、ハピアの体が崩れ落ちる。四肢を、体をバラバラにして崩れる。

 腐蝕したハートと同じ様に崩れていく。


 おい止めろ凶獣! もう良いんだ!! やめてくれ!


 だが黒き獣は吠え続ける。


 やがて、オレの体が腐蝕していく。


 なんでだ……、なんで、こうなっちまうんだ……?


 ハートを殺す力が。


 ハピアを救う力が。


 オレに足りなかったのか……? 力を欲するのが過ちだったのか……?

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