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ハピアの家、オレたちがいる場所へとクーが戻ってきた。
「ちゅん、ちゅん(皆ごめん。私が一緒にいたのに……)」
クーが重苦しく口を開く。他の皆も静まり返り、俯いている。
大丈夫だ、クー。お前が悪いんじゃない。皆わかっているさ。
ハピアは恐らく生きてる。少しだが、ハピアと繋がってる感覚がある。
「ちゅん(ごめんなさい……、これ……。ハピアが突然気を失って、黒い煙に包まれて。そこに落ちてたの)」
クーが一枚の紙切れを差し出す。
ハガキ? いや、絵柄しか書いていない。ネジ? 機械部品の様な何かが交差してるマークの様なもの。
何だコレは?
「招待状……、もしくは挑戦状であろうな。コレを渡す為にハピアをその場で殺さず、連れ去ったのだ」
メテオ……、挑戦状? 一体誰が? 何のために? 誰に対して? 何故ハピアを攫う! そんな必要がどこにある!!
メテオがオレを撫で、続ける。
「落ち着け、アリスよ。恐らく、狙いはお主だ。ハピアの持つ剣、虹の光剣という可能性もあるがな」
狙いはオレ? じゃあ何故ハピアを。
「ハピアが拐われればアリス、お主は激怒し挑戦者の元へ向かうだろう。それが私の考えだ」
たしかに……、たしかにメテオの言う通りだ。現にオレは激怒し、冷静さを欠いている。
だが挑戦状、こんな紙切れ一枚でどうしろと言うのか……。
『私の記憶だと、国旗じゃないかねぇ』
お婆ちゃん! わかるのか!?
『ここより遥か北の国、ターミネイト帝国かのぅ』
ターミネイト……、帝国……?
名前だけでヤバそうだけど、そこに来いって事なのか? ……良いぜ、行ってやろうじゃねえか!!
「わん!(メテオ、クー! そこに行くぞ!)」
オレは立ち上がり駆け出す。
だがそれをキャロに抱かれ止められる。
「アリス! 落ち着いて、いきなり飛び出したってダメだよ。冷静になって?」
キャロ……!? けど、どうすれば……。今こうしてる間にもハピアが……!
ハピアの家は没落してしまい、力が減少している。イリシウス元伯爵であるパパさんは一命を取り留めたが、今は王都でリハビリ中だ。
そして王も現在行方不明、というか倒した数日後に家出したらしい。
家出する王って何だよ!!
王の宣告によって剥奪された地位を戻す事は出来ない。仮に王がいても出来ることじゃ無いらしい。
国からの金銭援助が多少あるから生活には困らなかったが……。
くそ! ハピアが拐われたってのに頼れるもんが何も無え!!
ならオレが、オレが助けるしかねえだろうが……!!
「けど今のアリス達は……」
そう、オレたちの力も落ちている。
かつて怪鳥だったクーはカラス程度の大きさに縮んだ。
圧倒的な魔力と体力を誇っていた火竜メテオ。あいつは魔力をオレに渡してしまい、今では人化以外の大した魔法は使えない。
そしてオレはメテオから貰った魔力も使い切ってしまった。勇者の名はあるが、その力はキングパピヨンだった時よりも遥かに落ちている。
その上ハピアもいないんじゃ、融合すら出来ない。
しかも相手はハピアを一瞬の内に拐える相手……! 勝ち目は無いかも知れない、それでも……!
「ちゅん(忘れてるんじゃない?)」
クー? 彼女がオレの体に乗る。
「あぁ、忘れているぞ」
メテオがオレの腹の肉を掴む。
「お前がどうしようも無く堕落して太ったって事を!!」
メテオとクーの叫びがシンクロする。
そうだ……。オレは太ってしまった。認めよう。
かつてのスピードはオレには無い。
だが、それでも。それでもオレたちしか……。ハピアを助けに行けるのは、オレたちだけなんだ……!!
頼む、皆! 力を貸してくれ!
「あぁ、勿論だ。目指すは北の国、ターミネイト帝国だ」
「ちゅん(そこに着くまでに痩せないとね!)」
ありがとう、二人とも。オレは必ずダイエットしてみせる! そして強さを取り戻してハピアを救う!!
「アリス、私も行くよ! ずっと一緒って言ったもんね!」
キャロ。危険だからお前はーー。
「一人で置いてく方が危ないよ?」
そう言ってキャロが悪戯っぽい微笑みを向ける。
あぁ、それもそうだな。これ以上危険を増やさない為にも、キャロについて来て貰おう。
ハピアだって皆と離れてる所を狙われたんだ。キャロがいつ狙われても不思議じゃない。
キャロ、お前はオレが守るからな。
「うん! アリスを信じてるから大丈夫!」
キャロの元気な声が、オレの心に勇気をくれる。必ずハピアを救えると、オレに思わせてくれる。
「移動手段に馬は使えん、金が無いからな」
あぁ、メテオに乗って行こう。
「いや、アリスが聖獣化した方が良いだろう。体を動かした方が痩せるし」
待て、体を動かした方が良いのはお前もだ。魔力が無いからって毎日ダラダラしやがって。
「いやいや、我は必要が無いから敢えて休息を取っていたのだ。アリスは実際太っている」
「ぢゅんぢゅん!!(交代で走りなさい!!)」
クーの叫びと共に放たれる雷撃を受け、オレたちは大人しく言うことを聞いた。
もちろん防御したさ、オレを抱いてるキャロが危ないからな。メテオは焦げていたが。




