1.幸せな勇者
お久しぶりです更新再開です!
オレは幸せだ。
晴れ渡る静かな湖畔の隣、そこに佇むログハウス。
カーペットの敷かれた室内で寝そべる。
手ずから差し出される焼き菓子。それをただ貪るだけの生活。
動く必要など無い。それに魔法が使えるから大概の事は困らない。
これが……、勇者。
『違いますわ』
ハピア、オレの幸せ気分に水を差さないでくれ。
オレはお菓子を食べるのを止めない。
『家でゴロゴロばかりしていないで、たまには私と狩りに出るのはいかがでしょう』
えぇ〜。ハピアにはクーが付いてるじゃん。それにゴロゴロしてるのはメテオもだし。
「我を呼んだか?」
女の姿になっているメテオが立ち上がり、オレの元へと近付く。とは言え狭い家だ、それ程距離は無いのだがオレは動きたくない。
例え怠けていてもメテオは体型を維持している。モデル並みだ。竜だけど。
「わんわん(家でゴロゴロしてないで働けって、ハピアが)」
手短に伝えると、彼女たちが反応する。
「アリスは沢山頑張ったから休んでるだけだよね!」
『アリスちゃん頑張ったからのぅ。今はゆっくり休むと良いよ』
お婆ちゃんとキャロの言う通りだ。キャロは自作のお菓子を毎日オレに食べさせてくれる。
霊体となったお婆ちゃんとも話せて毎日幸せそうだ。
『貴方がそれで良いなら構いませんが……。その体型はよろしいんですの?』
体型? 何のことだ?
それよりオレの脳内を経由して皆でワイワイするな。電話回線代わりにされて頭がパンクしそうだ。まあ既に慣れきった物なのだが。
「ふむ、ハピアが言うことにも一理ある。アリスよ……。言いにくい事なのだが、お主……」
何だよメテオ。言いたい事があるなら言った方が良いぞ。
『私が言うわよ! アリス! あんた怠けすぎ、すっごい太ってるから! デブ犬よデブ犬!』
クー、随分と辛辣だな。そりゃお前はオレから分離した時に縮んだから、そーゆー風に見えるのかも知れないけどさ。
「いや、我から見てもお主は太っている。確実に……!」
えぇ〜。メテオまでそーゆー事言っちゃうの?
オレは鏡を見る。確かに長い毛のボリュームもあり、オレの外見はややふっくらしているかも知れない。
だが、コレはコレで可愛いじゃないか。
キャロもそう思うだろ?
「うん! アリスはいつだって可愛いよ!」
キャロがそう言って頬擦りしてくる。
ありがとう! キャロも可愛いよ!
麦色の金髪、優しげな緑の瞳。かつて真紅の闇に囚われた目はすっかり消え、元気な姿を取り戻している。
しいて言えば歳の成長具合が少し戻っていないか。ハピアと同年代、中学生くらいに見える。
ハピアの方が背は低いが。
『アリス、何か文句がおありで?』
いや! 無い無い、何にも無いよ! ハピアはいつだって完璧だよ!
『アリスちゃんは一言余計だからねぇ』
お婆ちゃん、そんな事言ったって仕方ないじゃないかぁ。オレの心の声は全部ダダ漏れなんだから。
『あんた気を緩めすぎなのよ! 王様倒したっきり気を抜きすぎなんだから』
たしかにクーの言うことも一理あるけど……。良いじゃん! いっぱい頑張ったんだから! オレは今の幸せを甘んじて受ける!
突如、ハピアの声が、意識が途切れる感覚。
クーがハピアを呼び、叫び続けている。
何だ? 何が起きた!? クー、どうしたんだ!!
『ハピアが! ハピアが……!! ハピアが消えた!!』
は……?
突如告げられた言葉。
この目で見た訳じゃない。
だが返事をしないハピア。今まで繋がり続けたオレとハピアの心が途切れる感覚。
それがオレの心に恐怖を広げていく。
何だ、何が起きた……!?
オレは駆け出し、ログハウスを出る。
しかし重たい体が思うように動かず、転倒してしまう。
ハピア、返事をしてくれ。
ハピア……!
ハピアの名を呼び、咆哮する。
晴れ渡った空には暗雲が立ち込めつつあった。




