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0.王の決意

「おのれ、おのれ……、おのれえええ!!!」


 俺様は絶叫する。


 悔しさで、怒りで、惨めさに。


「あの犬っころがあぁぁ!! そしてあの厭らしい女魔族めがあぁぁ!!」


 俺様は叫び、暴れ、魔法を放ち、王宮の廊下をひた走る。


「陛下! お気を確かに!」

「陛下! 王宮で暴れるのはお辞め下さい!」


 執事やら側近やらが煩く俺様を宥める。


 だが。


「黙れ黙れ黙れえええ!!」


 許さん、許さんぞ……!


 この世界において王は絶対。唯一無二の強者。


 その力は絶大で俺様が本気を出せば国を滅ぼす事も出来る! 魔法で!!


「それをあんな魔物の犬如きにいぃぃ!!」


 俺様は無様にも地面をゴロゴロと転がる。


「おぉ……、陛下。おいたわしい……」


 俺様の力が、全て打ち破られた……!


 それもこれも、あの伯爵令嬢のせいで……!


「許せん! 俺様は自分自身が許せん!! セバスチャン支度をしろ!」


「いえ、私はランスロットで御座います。支度とは一体?」


 無能な執事め。だが良い、教えてやろう。


「俺様は己を鍛えるが為、旅に出る! 戦争の用意だ!! シン・リュミエール王陛下の俺様が! 単独で戦争を仕掛ける!!」


 俺様は立ち上がり、天を指差し華麗に宣言する。


「いえいえ陛下、お戯れを。先日も伯爵家に殴り込みに行ったばかりでは御座いませんか」


 こいつ……! 人が気にしている事を!


「忘れろ! 記憶から抹消するのだ! それと我が愛銃の弾丸……、出来たら用意しておけ」


「いえ、それは……。それに単独でというのは……」


 ぐぬうぅぅぅ!! 人が頼みにくい事を頭を下げてお願いしたと言うのに断るだとおおお!?


 それでも我が家臣なのか!?


「もう決めたのだ! 王様である俺様は、この世界を統治し、あの憎たらしい小型犬に復讐をする!!」


 高らかに宣言する。決まったな。


「陛下……、輝いておられますなぁ」

「うむ、イキイキしておる」

「陛下……、素敵です!」


 家臣どもが声を揃えて俺様を賞賛する。ふふ、それでこそ家臣だ!!


「いえ、このランスロット。それをお許しする事は出来ません」


 ラアァンロットオォォォ!!


 何故だ? この世界では王こそが最上の強者。民の無駄な犠牲を出さぬ為にも、戦争は王同士の一騎打ちと決まっている。なのに何がいけない?


「では……、どうすれば良いと言うのだ」


「誰でも構いません。付き人を一人お願いします。旅では身の回りの世話をする者が必要になりましょう」


「む? そんな事で良いのか?」


 ならばと思い適当に女中を手配させる。


「それともう一つ。王たる者、民草が困っているのを見かけたら手を差し伸べるのです」


 後出しとは汚いな。流石はランスロット、俺様の家臣! だが!


「良いだろう! ふふふ、ランスロットよ。二言は無いぞ! その条件! 確かに聞き入れた!!」


「承知しております陛下。御武運を」


「では支度をせよ! 馬車を、キングエンペラー号を出せ!! 俺様の留守の事は任せたぞ!」


 俺様は高笑いを上げながら優雅に風呂へと向かった。

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