救う為に
駆け抜ける。
立ち塞がる障害を斬り裂き、燃やし、叩きつけ、吹き飛ばし、駆け抜ける。
斬撃が、風刃が、雷槍が現れる敵を跳ね飛ばしていく。
ダンジョンという迷宮を、奥へ奥へと駆け抜ける。
その先で待つ仮面の魔族を目指して。
悪魔に支配されるキャロを救う為に。
「ちゅん!(アリス!急ぐのは良いけどアンタ飛ばし過ぎじゃない?)」
キャロを救う為だ。どんなに急いでも飛ばし過ぎなんて事は無い。
「心配ありませんわ。例え魔力が尽きようと回復薬を用意してますもの」
そうだ、そして。
このダンジョンに蔓延る程度の魔物如き、今のオレ達の敵ではない!
オレ達は進み、下へ下へとダンジョンの奥を目指す。
やがて通路は広がって行き、とても大きな部屋に出る。
奥に巨大な扉。その両端には二対の石像。
以前のオレが苦い敗北を覚えた魔物。
獅子と悪魔のガーゴイル。
久しぶりじゃねぇか。
だが以前の様にはいかない。オレは修業を積み、更なる進化を遂げた。何より今のオレには……。
仲間がいる!!
オレは咆哮する。それに呼応する様、オレの全身を青白い炎の様な輝きが包み込む。
炎が弾け飛び、聖獣化したオレの姿が顕現する。
「クー! 結晶化です!」
「ちゅん!(任せなさい!)」
ハピアがそう叫ぶとクーの身体が縮小し、稲妻色の結晶へと姿を変える。
そして結晶がハピアが持つ虹の宝剣へと装填され、彼女が剣に備えられたトリガーを引く。
刀身が稲妻色に明滅し、雷を帯びる。
アルカンシエルの柄に備えられた機構。魔力の込められた結晶体を装填する事で、その魔力を解放する。
ハピアの持つテイマースキルによって結晶の姿となったクーが宝剣に更なる力を与える。
お互いに準備万端の様だ。
オレとハピアは同時に駆け出し、ガーゴイルへと襲い掛かる。
聖なる輝きと雷が迸る。
オレの一撃が悪魔を、ハピアの一撃が獅子を粉砕する。
「リベンジは果たしましたわね」
あぁ。かつては死を覚悟した相手だったが、今なら一瞬で倒せる。
オレはガーゴイルが守護していた扉へと目をやる。
「行きますわよ」
ハピアがオレを見つめながら扉に手をかける。
この先には、今までの敵とは桁違いに強大なボスが待ち構えていると言う。
だがオレたちに、恐怖は無い。