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大切な少女

 暗い。


 暗い絶望の中にオレはいる。


 どうして、こうなってしまったのか。


 オレは彼女と再び会いたかっただけだ。


 それが、こんなにも悪いことだったのだろうか。


 虹の橋を求めていた。


 いや、虹の麓にいるはずの彼女を求めていた。


 だがオレは今、闇の中にいる。


 寒い。とても寒い。


 だがその感覚も薄れ始める。


 もはや感覚の殆どは残されていない。


 何も見えないし、感じない。


 いや、光が見える。


 虹色の光。とても暖かい光。


 あぁ。ようやくオレは満たされる。


 オレはまた、彼女に会えるんだろうか。


 虹色の輝きが強くなる。


 音色が響く。とても綺麗な音。鐘のような音。


 まるで金属同士が弾かれる様な音。


 声が聞こえる。とても懐かしい声。昔から知っている様な声。


 声がオレを呼ぶ。強く、オレの名を叫ぶ。


 お前なのか? お前がオレを呼んでいるのか?


 この声は聞き覚えがある。


 強くオレの名を呼んでいる。


 心が闇から引き上げられ、オレの意識は覚醒する。


「アリス! なぜ貴方は! また諦めているんですの!!」


 オレの目に映る者。


 虹色の煌めき。純白のコート。揺れる黒髪。


 オレを見守り続けた少女がそこにいた。


「アリス! ずっと待ち望んだ彼女との再会で! 何故諦めているのですか!」


 ハピア、どうしてココに……。何故お前がキャロと戦っている。オレを助けに来たのか?


「おやおやぁ! 飼い主との美しい友情ですねぇ〜! 私感動してしまいそうでございます〜!」


 マッドハートが何か言ってるがそんな事はどうでも良い。

 ハピア! 何故オレを助ける! お前にとってオレなんて所詮バケモノな筈だ!


「今はそんな事はどうでも良いでしょう! 前を向きなさい!」


 だが、だがオレは……。


 ハピアの虹色の輝きとキャロの真紅の闇がぶつかり合う。


 オレは……、どうすれば……。立ち上がる事が出来ない。


 ハピア……、オレは。お前を傷付けてしまった。そんなオレがお前に救われる資格なんて無いんだ。


 ハピアは答えない。


 その間も剣戟の応酬は続く。


 嫌だ。二人が戦う姿なんて見たくない。


 やめてくれ……。もういいんだ。


 オレはもう、終わりにするって決めたんだ。


 突如、キャロの闇の輝きが霧散する。


 いや違う。真紅の魔力を四方に展開したんだ。


 ドス黒い紅がハピアを取り囲み、襲い掛かる。


 先ほどまで剣術の差で優勢だったハピアが途端に劣勢に追い込まれる。


 彼女の体が傷付いていく。


 まずい……!


 ダメだ、彼女を死なせちゃダメだ。


 キャロに人を殺させてはいけない。


 気がつくとオレの体は前に飛び出し、ハピアの体を押し飛ばしていた。


 真紅の闇がオレの体を傷付けていく。


 痛み、凄絶な痛み。これはキャロが感じている心の痛みだ。


 オレは地面に叩きつけられる。


「アリス!? 何をなさっているのですか!」


 ハピア、すまない。体が勝手に動いちまった。

 オレは堪え切れない痛みを無視してヨロヨロと立ち上がる。


「何を馬鹿な事を! 良いから貴方は下がってなさい!」


 ハピアはオレを置き前に出る。そしてキャロへと斬りかかる。


 キャロが持つ闇の剣がハピアの斬撃に削られていく。


 やがて闇の剣が砕け散る。


 そしてハピアの刺突がキャロへと迫る。


 ダメだ!! 駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!!


 オレは前へと飛び出す。キャロとハピアに割って入るように。


 ありったけの魔力で結界を展開する。青白い光の障壁がハピアの刃を阻む。


「何をやっているのです! キャロさんは今、敵なのですよ!」


 違う……、違うんだハピア。キャロは今、操られているだけなんだ……。


 だから傷付け合っちゃダメなんだ……。例え殺しはしなくとも、二人が争うところを、オレは……。


「いい加減になさい! そんな事をしても彼女は貴方を襲うのですよ!」


 途端、オレはその言葉を聞きキャロへと向き直す。


 キャロ……。


 だがオレたちの予想は外れた。


 オレが見るキャロの姿。


 頭を抱え、呻き苦しむ彼女。


「あ……、あ……。私を、守る青い光……アリス……?」


 キャロ……?


 初めて発する彼女の言葉。


 オレがわかるのか?


 苦しんでいる……、大丈夫なのか?


 オレはキャロへと近付いていく。


 瞬間、夜の街に絶叫が響き渡る。


 恐怖に慄くキャロの叫び。


「近寄るなぁ! 不吉の象徴!! お前の、お前のせいで私の村と家族はぁ!!」


 キャロ、記憶があるのか? やはり彼女の心はシスターのハートといた時のままだ。


 呻く彼女に闇の輝きが集まっていく。


 キャロが咆哮する。この世の全てを恨むかの様な叫び。


 真紅の闇が飛散し、拡散する。


 オレの体はその衝撃波で吹き飛ばされ街の建物へと叩きつけられる。


 鈍く、強烈な痛み。


 オレはここで折れる訳には……。だが……。


 オレの体は動かない。動かす事が出来ない。


 首だけの動きでキャロを見つめる。


 彼女は恐怖で錯乱するかの様に、苦痛の叫びで剣を振り回す。


「おやおやぁ、どうやらお互いにここまでの様ですねぇ。今日はこの辺にしておきましょう」


 マッドハートの声が聞こえる。

 この辺だと? まだだ、まだオレは……、キャロを……。


 マッドハートがキャロを抱き寄せると、彼女が気を失ったかの様に動きを止める。


 おい待て! キャロは置いていけ! お前がキャロに触れるんじゃねえ!


「ではでは私共はこの辺で失礼させて頂きましょう〜。

 それではお二人様、御機嫌よう。

 私に会いたければいつでもどうぞ、約束の地でお待ちしております故〜」


 ハーフマスクの魔族がそれを告げると音も無く闇の中に消えていった。


 キャロ……。オレは、お前を……。


 そしてオレの意識もまた、深い闇の中へと落ちていった。

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