真紅の宝石
新たな進化をした事によって変わったオレの種族、称号。
吉凶を運ぶ者。フォーチュンドッグ。
オレの未来には何が待ち受けているのだろう。
お姉さんとトムさん。二人をひとしきり祝福し終わったオレとハピアは街を歩いている。
いや、もう一人。果たして数え方は一人で良いのかわからないがもう一人いる。
お婆ちゃんの幽霊が憑いている。
『おや、幽霊だなんて酷いじゃないか』
オレに語り掛けるこの声、姿はお婆ちゃんだ。幻覚でも幻聴でもない。間違いない。
何故死んだ筈のお婆ちゃんが幽霊になって現れたのか。
『やれやれ、アリスが進化したからだよって言ってるじゃないか』
原因はわかっている。お婆ちゃんに教えてもらったからな。
『アリスってばいつも一人でこんな事ゴチャゴチャ考えてたのかい?』
あーーもーー!!お婆ちゃん黙っててよー!
『おやまぁ、アリスもお年頃だねぇ』
オレは進化して新しい力を手に入れた。
赤く燃える宝石の瞳。
キャロの村で宝物とされていたルビーの様な真紅の宝石。
『子供の頃からずっと身に付けてたから魂が少し残っちまってたんだねぇ。おや、コレはさっき言わなかったかぇ?』
魂が残ってた。だがオレが持っていたのはキャロから貰った物の筈だ。
『そりゃアンタ、アリスとキャロが二人して首に掛けたの取り違えたからじゃないか。全く、二人揃ってウッカリさんだねぇ』
はぁ……。せっかくオレとキャロの絆の証だと思っていたのに……。
『良いではないですか。進化の時に失くしたと思っていたのですから、無くなるよりマシでしょう』
たしかに……。ハピアの言う通りだ。進化と同時に何処かへ行ってしまったペンダント。
それが失ったオレの目の代わりとなっていた様だ。
『アリスを助けてやりたかったからねぇ。それに孫娘が悪いことしちまって謝りたいと思ってたんだよ』
お婆ちゃん……。だと言うのにオレは力に溺れてホイホイ闇堕ちしてお婆ちゃんの声を聞くことが出来なかった。
『良いではありませんの。今こうして話せているんですから』
『そうだよアリス。アンタが進化してくれたおかげで私はまた話せる様になって嬉しいよ』
ハピア……、お婆ちゃん……。
二人してオレの頭の中で喋るとうるさい。
ハピアがお婆ちゃんの声を聞くためにはオレの頭の中を覗き込んでの又聞きだ。
人の頭を中継地点にされると負担が激しい。なんか知恵熱か偏頭痛になりそうだ。
『まぁまぁ、アリスも進化して強くなったんだし少しくらい良いじゃないか』
『そうですわ、せっかくの感動の再会だというのに。酷いではないですか』
たしかにお婆ちゃんと再び会えたことは嬉しい。
だがオレはお婆ちゃんに顔向けできる様な人間じゃない。犬だが。
オレはキャロに嫌われたショックで逃げ出してしまった。危険な魔族から守ることが出来なかった。
オレの不吉を呼んでしまう称号のせいで村に野盗を呼び寄せた。お婆ちゃんを死なせてしまったんだ。
そんなオレがお婆ちゃんと一緒にいるだなんて……。
『アリスや。ウジウジするもんじゃないよ。今もキャロを助けようと、毎日頑張ってくれてるんだろ?私はずっと見てるよ?』
『そうですわ。貴方は辛い修行の毎日に耐え、キャロを救う力を身に付けようと努力した。そして進化した事でお婆様も見えるようになったではないですか』
ハピア……。お婆ちゃん……。
『アリス。一人で悩んじゃダメだよ?悪い考えばっかり浮かんじゃうからねぇ』
『お婆様。御同意致しますわ。アリスったらいつも一人で後悔ばかりして』
『そうみたいだねぇ。生きてる内にもっと優しくしてやれば良かったよ』
『いえいえ、今からでも遅くありませんわ!これからアリスを支えていきましょう』
『そうかい?私に出来ることがあるかわからないけど、手伝わせてもらうよ』
『えぇ、えぇ!共に頑張りましょうお婆様!』
『けどハピアちゃん。アリスってば単純な子だねぇ』
『えぇ、お婆様。まさかとは思いつつも屋敷の者たちにグッドラックと言わせ続けたら不吉の称号が取れましたわ』
『愉快だねぇ』
うるせえええぇぇぇ!!!!
オレは頭の中で大笑いする二人の声を聞き、街の中心で咆哮した。




